「スターターボタンで始動するクルマが増えたのはなぜ?」
2008.04.26 クルマ生活Q&A エンジン「スターターボタンで始動するクルマが増えたのはなぜ?」
最近、スターターボタンで始動するクルマが増えていますね。これは、どんなメリットがあるんでしょうか?
お答えします。ここ2、3年でずいぶん増えましたね。普通のファミリーカーにも、ボタンで始動するモデルが多くなってきました。最初は高級車やスポーツカーだけに設定されていました。日本では、ホンダのS2000あたりが早かったように記憶しています。
出始めのころはシステム自体は高価だったので、価格の高いクルマにしか装着されませんでした。大衆車にも設定されるようになってきた背景には、価格の低下があります。量産効果で、以前に比べるとはるかに安く調達することができるようになったのです。
これからはスターターボタンの方式のほうが安くなると考えられます。メカニカルなキーは切削などの手間がかかってどうしてもコストがかさんでしまいます。それに比べ、電子的なスイッチならばデータを書き換えるだけですから、システムを作ってしまえばコストダウンが可能なのです。
コストだけではなく、性能的にもスターターボタンにはメリットがあります。
キーを回して操作するということは接点を断続することになり、どうしても電気的な損失が生じます。もちろん、キー自体も微少ですが劣化していきます。さらに信号をやり取りするだけですから配線を細くすることにもつながり、軽量化にも役立ちます。
また、すべてコンピューター制御でエンジンを始動するわけですから、人間のミスが入り込む余地がありません。二度がけとかもなくなりますし、トラブル回避にもなるのです。
ボタン方式が多くなると、将来は一部の高級車にだけ高価なアナログキーが用意される……なんてことになるかもしれませんね。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。