メルセデス・ベンツSL350(FR/7AT)/SL63AMG(FR/7AT)【海外試乗記】
高価なのには理由がある 2008.04.18 試乗記 メルセデス・ベンツSL350(FR/7AT)/SL63AMG(FR/7AT)メルセデス・ベンツの最上級ロードスター「SL」。マイナーチェンジで顔つきが変わり、エンジンもパワーアップした3.5リッターモデルと、初導入となる6.2リッターのAMGモデルに試乗した。
新鮮さをアピール
現行=5代目「メルセデス・ベンツSL」のデビューは2001年。7年目となった昨今は、「そろそろフルモデルチェンジ」という声が聞こえてもおかしくない。けれども、1954年に初代モデルが誕生したSLは、それ以降の歴代モデルが“長寿”を誇ってきた。それゆえ、今回の大規模マイナーチェンジも、現行SLがようやくそのモデルライフの折り返し地点を過ぎた、ひとつの証と受け取れそうだ。
シャープなノーズエンドに丸型4灯式をモチーフとしたヘッドライトを配し、スポーツカーらしさを表現してきたのが従来型。それに比べると、新型の顔つきはマイナーチェンジと呼ぶには随分な変わりようだ。
なるほど、「Cクラス」や「CLクラス」などとの共通性を強く演じた新型のマスクは、見る人に「最新メルセデスファミリーの一員」というポイントを一瞬にして認識させる。が、スポーツカーらしいシャープな表情、という点では、従来型のマスクに軍配を上げる人も少なくないだろう。
一方、リアビューに関してはこれまで同様のイメージを強くとどめている。すなわち、エクステリアデザインでは「まずフロントマスクで新鮮さをアピール」というのが、新装なったSLの戦略なのだ。
インテリアは従来型に準じる
幅広のセンターコンソールによって左右席を完全にセパレート化し、独立2眼式風のメーターなどによってスポーツカーらしさをアピールするインテリア。こちらも従来型に準じた雰囲気。首筋に温風を集中的にあてることで寒冷時のオープンエアモータリングへの敷居をグンと下げてくれるのが、SLには新採用の“エアスカーフ”だ。
ハイエンドモデルらしくそもそも装備面ではほとんど不満のなかったSL。新型でもそれを徹底している。ただしコンソールのレイアウト上の都合か、すでに他モデルには導入の進むダイヤル式の“COMANDシステム”が今回も採用されなかったのは残念だ。
もちろん、ナビゲーションシステムを筆頭にその多機能ぶりには何の不満もないのだが、操作系が従来同様のプッシュ方式に限られるのが惜しい。
力強い加速力
日本導入が予想される新しいSLシリーズのハイライトは、「SL350」と「SL63AMG」の2タイプに集約される。前者は3.5リッターの6気筒エンジンが大幅にパワーアップされ、後者はこのタイミングで新導入されたモデルだ。
272psから316psへと、各部のリファインによって同排気量ながら40ps以上もの最高出力アップを実現したSL350。データ上は「0→100km/h加速タイムが従来型よりも0.4秒短縮の6.2秒」と報告される。このモデルの動力性能向上は、アクセルペダルのひと踏みで実感できるものだった。実際の加速が力強さを増した。フィーリング面で効いているのは、いかにもスポーツカーらしいサウンド。アクセルワークによってメリハリ良く変化するその音色は、スポーツ派ドライバーなら誰もが歓迎するものに違いない。
ところが、そんな「速くなったSL350」からSL63AMGへと乗り換えると、怒涛の加速力にさらなるインパクトを受けた。SL63AMGの0→100km/h加速タイムはわずか4.6秒。それでも、ツインターボ付き5.5リッターエンジンを積む「SL600」比でコンマ1秒のビハインドとされている点に、“SLヒエラルキー”づくりの悩みを感じさせられる。が、そんな絶対加速力はまた別としてSL63AMGならではの売りとなるのはシャープな高回転域でのレスポンス。7段ATに組み合わせるクラッチ機構を、従来のトルクコンバーターから湿式多板クラッチへと変更した“スピードシフトMCT”へとスイッチしたのも、「スポーツカーに相応しい、よりシャープなアクセルレスポンスを得る」ことが主目的であったという。
ところで、いずれのパワーユニットを搭載したモデルも、ボディサイズがひとまわり小さく思える「クルマを着る感じのハンドリング感覚」は健在。ルーフを開けば多少“緩く”はなるものの、それでもメルセデスというブランドに相応しいボディの剛性感に「期待通りの走り」という印象を抱く人は多いはずだ。
かくして、見ても乗ってもフラッグシップオープンらしい振る舞いを示す新型SLシリーズ。これもまた、「高価なのには理由がある」と納得のできるメルセデスである。
(文=河村康彦/写真=メルセデス・ベンツ日本)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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