メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)
マイバッハ流のドライバーズカー 2025.10.29 試乗記 メルセデス・ベンツが擁するラグジュアリーブランド、メルセデス・マイバッハのラインナップに、オープン2シーターの「SLモノグラムシリーズ」が登場。ラグジュアリーブランドのドライバーズカーならではの走りと特別感を、イタリアよりリポートする。オーナーに驚きと感動、興奮を
マイバッハブランドがメルセデスのサブブランド、メルセデス・マイバッハとして復活したのが2014年。その10周年を迎えた2024年のモントレー・カーウイークでデビューしたのが、メルセデス・マイバッハSLモノグラムシリーズだ。
「Sクラス」「GLS」「EQS SUV」に続くメルセデス・マイバッハとして4つ目のモデルだが、発表からおよそ1年を経てようやく欧州で販売が始まったこともあり、イタリアで試乗する機会が供された。
ベースとなるのは「メルセデスAMG SL63 4MATIC+」で、マイバッハとしては初の2シーターであり、もちろんショーファーではなくドライバーズカーである。
「私たちはお客さまに驚き、感動、そして興奮を提供したいと思っています。メルセデス・マイバッハSLモノグラムシリーズは、私たちがこれまでに手がけたなかで最もスポーティーで、最もぜいたくな真のマイバッハです」とメルセデス・ベンツ・グループAG メルセデス・マイバッハCEOのダニエル・レスコウ氏が言うように、塗装をはじめディテールに徹底的にこだわっている。
エクステリアではマイバッハ独自のクローム仕上げのラジエーターグリルを採用。垂直の細いルーバーを用いており、輪郭はマイバッハのロゴとともに光り輝く仕掛けとなっている。グリル下部のエアインテーク、そしてAピラーもクローム仕上げとなっており、ヘッドライト内部にはローズゴールドのアクセントが、ボンネットには直立したスリーポインテッドスターのマスコットとセンターに真っすぐに伸びたクロームメッキが配されている。リアでは、テールライトにマイバッハのロゴをあしらう。リアバンパーにはクロームトリムと専用デザインのディフューザーを採用し、水平バーを備えた専用のテールパイプトリムが、エレガントさを強調する。
先進技術とクラフトマンシップの共作
最も特徴的なのは、黒いボンネット上に無数に配されたマイバッハのエンブレム。車名にある“モノグラム”とは、2つ以上の文字を組み合わせてつくられた記号のことで、一般的にはそれをあしらった古典的なデザイン手法を意味する。ルイ・ヴィトンなどのそれが有名だが、Mの文字を2つ重ねた「ダブルM」と呼ばれるマイバッハのエンブレムもまさにモノグラムである。ちなみにダブルMは本来、マイバッハ・モトーレンバウ社の頭文字だが、いまならメルセデス・マイバッハとしてもつじつまが合うところがにくい。
このモノグラムをあしらったボンネットはオプションで、ジンデルフィンゲン工場で実装された新たな塗装技術「PixelPaint(ピクセルペイント)」を初採用したもの。これはインクジェットプリンターから着想を得た技術で、任意のデザインをマスキングなど使用することなく、直接車体に、一度で塗布することができる。極めて精密な塗装が可能で、重ね塗りなどは不要。スプレーミストも発生せず、また手間のかかるマスキング工程もいらないため廃棄物やCO2排出量の削減につながるという。
マイバッハでは、このハイテク技術と職人の手磨きを組み合わせてこのボンネットを完成させている。その工程はボンネットにベースコートと最初のクリアコートを塗布し、次に手作業で研磨。PixelPaintを使用してマイバッハパターンをペイントした後に、クリアコートを2回塗布し、さらに手作業で研磨して最終的なクリアコート仕上げを施す。計4回のクリアコートと3回の研磨を経て、深みのある効果が生み出されている。塗りと乾燥、研磨を繰り返す工程は、どこか漆塗りを思わせるものだ。
ボディーカラーは「レッド・アンビエンス」と「ホワイト・アンビエンス」の2色の設定で、どちらもボンネットはブラックのツートン。ライトブラックカラーのソフトトップとトノカバーも、先のボンネット同様にモノグラム仕様になっている。またこの2色以外にもビスポークプログラムである「MANUFAKTUR」を利用すれば、メルセデス・ベンツとマイバッハの歴史的なカラーをはじめ、貴石、鉱物、自然現象の色調、そしてファッション、建築など、最新のトレンドからインスピレーションを得た50以上のカラーから、好みの色を選ぶことも可能だ。
マイバッハならではの調律とドライブフィール
試乗車はホワイト・アンビエンス仕様だった。車内に乗り込むと、ドアパネル、センターコンソール、シートに植物由来のなめし加工を施した真っ白なナッパレザーが張り巡らされている。シートの背後のスペースにも同じホワイトレザーが使われており、シート表皮と同じく凝ったフローラルデザインの模様が施されている。ダッシュパネルの上部やステアリングホイールの一部にはブラックレザーが用いられており、エクステリアと同様のツートン仕様に。アッパードアトリムにはオープン時にソフトトップやトノカバーと一連のものに見えるようモノグラムが配されている。12.3インチの縦長のタッチ式ディスプレイやMBUXインフォテインメントシステムなどは、ベースのAMG SL63と同様のものだ。
パワートレインは、AMG SL63譲りの4リッターV8ツインターボエンジンに湿式多板クラッチ式の9段ATを組み合わせたもの。585PSの最高出力と800N・mの最大トルクに変更はない。駆動方式も同様に「4MATIC+」(4WD)だ。
とはいうもののAMGではなくマイバッハである。徹底的にラグジュアリーかつコンフォートにチューニングされている。ドライブモードは「コンフォート」「スポーツ」「インディビジュアル」に加えて専用の「マイバッハ」モードがある。コンフォートとマイバッハでは、アクセルレスポンスやステアリング特性が他のモードよりマイルドになる。
足まわりは、従来の機械式アンチロールバーに替えてセミアクティブ油圧式のロールスタビライザーを備え、またダンパーとスプリングもよりソフトなものに変更されている。試乗コースの一部は路面の荒れたタイトな山岳区間が含まれていたが、これらによりロールは補正され、路面の凹凸もやさしくいなされていた。タイヤは21インチの大径・低偏平な「ピレリPゼロ」を装着していたが、ノイズもハーシュネスもまったく気にならなかった。
ラグジュアリーなドライバーズカーの在り方
ソフトトップを閉めてしまえば本当に静かだ。ボディー骨格部に吸音材を多用するなど、徹底した遮音対策によりロードノイズを低減。マフラー内部にもリサイクル可能なグラスファイバー製インレイを採用することで、静粛性を向上させている。こうした対策もあって、車両重量はAMG SL63 4MATIC+比で100kgほど増加しているが、そんなことはまったく気にならない。
くしくも先日、トヨタの「センチュリー」が独立したブランドとなり、クーペを出すという報道があった。ロールス・ロイスしかりベントレーしかり、セダン、SUV、クーペ(&オープン)の3本柱となっている。考えてみれば、高級なドライバーズカーというと、とかくスーパーカーやハイパフォーマンスカーになりがちだ。ラグジュアリーでコンフォートなドライバーズカーだってもっとあってもいいと考えれば、このマイバッハSLの登場には合点がいく。
実は今回、SLだけでなく、GLS、EQS SUV、そしてSクラスベースの、すべてのマイバッハに試乗することができた。そのなかで最も感銘を受けたのは、V12エンジンを積んだ「S680」だった。静かさでいえばBEVのEQSだってひけをとらないが、圧倒的になめらかな回転感でもって、トルクがじわじわと湧き出し、滑るように走る。アクセルを踏んで思わず、うわーっと声が出た。これがSLに載せられたなら……。そう思わずにはいられなかった。
このメルセデス・マイバッハSLは、「ジャパンモビリティショー2025」(会期:2025年10月29日~11月9日)にも出展。日本では2025年第4四半期の納車開始が予定されている。興味のある人は、ぜひ会場にて、自身の目で確認してほしい。
(文=藤野太一/写真=メルセデス・ベンツ/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4697×1915×1358mm
ホイールベース:2700mm
車重:2050kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:585PS(430kW)/5500-6500rpm
最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y XL/(後)305/30ZR21 104Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:13.6リッター/100km(約7.4km/リッター、WLTPモード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2025年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆【ニュース】メルセデス・マイバッハの2シーターオープンモデル「SLモノグラムシリーズ」が上陸
◆【画像・写真】メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(70枚)

藤野 太一
-
シトロエンë-C3マックス(FWD)【試乗記】 2026.7.28 シトロエンのコンパクトハッチバック「C3」に電気自動車版の「ë-C3」が登場。さすがはシトロエンらしく、操作系やスペック、装備の設定、さらには乗り心地にいたるまで、普通のBEVとはひと味違う。誰にでも勧められるクルマではないが、そもそもシトロエンとはそういうポジションだ。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/4AT)/ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.7.27 “ジムニー史上初”となる、5ドアのロングボディーで人気を博す「スズキ・ジムニー ノマド」。快適な後席と広い荷室空間が自慢のファミリーの新顔に、はたして死角はないのか? このクルマの本領であるオフロードも走行し、その実力をつまびらかにした。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】 2026.7.25 高速道路から山道へとステージを変えながら、「シビック」の追加モデル「e:HEV RS」に試乗。そのキーテクノロジーは、疑似有段ギア制御システム「ホンダS+シフト」だ。ベースとなったハイブリッド車や、同じS+シフトを搭載する「プレリュード」との違いを確かめた。
-
カワサキZ900RSブラックボールエディション(6MT)/Z900RS SE(6MT)【レビュー】 2026.7.24 カワサキが誇る人気のレトロスポーツ「Z900RS」が大幅に進化。このマシンならではの“凄(すご)み”はそのままに、エンジンの改良と高度な電子制御の採用により、スポーツバイクとしての魅力にいっそう磨きをかけてきた。卓越したその走りを報告しよう。
-
ランボルギーニ・ウルスSEペルフォルマンテ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.23 2017年のデビュー以来、超ド級の走行性能を持つ“スーパーSUV”として、SUVブームの中を駆け抜けてきた「ランボルギーニ・ウルス」。その進化型である「ウルスSEペルフォルマンテ」の仕上がりを、イタリア南部のテストコースからリポートする。
-
NEW
BYDシーライオン6(前編)
2026.7.30あの多田哲哉の自動車放談日本市場において、日に日に存在感を強めているBYD。そのクルマづくりについて、元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんは何を思う? プラグインハイブリッド車「シーライオン6」に試乗したうえで、語ってもらった。 -
NEW
1990年代の名車「プリメーラ」が復活? 日産のグローバル戦略の一翼を担うBEVの正体を探る
2026.7.30デイリーコラム日産が新型ピックアップトラック「ナバラ プロ プラグインハイブリッド」と新型BEV「プリメーラ」をフィリピンで発表した。いずれも中国を生産・輸出のハブとするグローバル戦略の一翼を担うモデルだ。果たして日本導入の可能性は? -
NEW
第972回:黒船来襲も! イタリア自動車販売店は戦国時代
2026.7.30マッキナ あらモーダ!イタリアで急速に進む、自動車販売店の統廃合と巨大グループの伸長。その背景にはどんな理由があり、私たちにどんな変化をもたらすのか? 現地在住の大矢アキオが、変わりゆく自動車販売のあり方を考察するとともに、消えゆく街かど自動車文化に思いをはせた。 -
NEW
写真で解説する「メルセデス・ベンツCLA with EQテクノロジー」
2026.7.29画像・写真メルセデス・ベンツの新型電気自動車「CLA with EQテクノロジー」が上陸。2026年7月29日、東京都内で発表会が開催された。次世代技術満載のニューモデルの見どころはどこか、写真とともにお伝えする。 -
NEW
ぶしつけ御免! 人気連載「カーデザイン曼荼羅」公開収録を開催
2026.7.29From Our Staff歯に衣着せぬ物言いでカーデザインを深掘りする人気連載「カーデザイン曼荼羅」。その公開収録&懇親交流会を開催します! テーマはずばり「日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの」。自動車の造形に興味のある方、ぜひふるってご参加ください。 -
2つの工場が持つ性質の違いは何のため? ダイハツが誇る九州の製造拠点を見学
2026.7.29デイリーコラムダイハツといえば大阪……というイメージが強いが、実は全体の50%、軽自動車では77%を生産しているのは九州の大分(中津)工場だ。この一大拠点における最新の取り組みや、ダイハツが推し進める「メイドイン九州」プロジェクトについて紹介する。

















































