第65回:カーナビ実用テスト(その2):「スマートループ」とは何ぞや?
2008.04.08 エディターから一言第65回:カーナビ実用テスト(その2):「スマートループ」とは何ぞや?
今回はカロッツェリア・サイバーナビ最大の特徴である「スマートループ」について書こうと思う。実はこのテストを始めたのも、それがどういうものなのかを検証したかったからだ。
しかしそのスマートループ、なかなか仕組みが複雑でムズカシイ。カタログの説明の中に基礎知識として出てくる「プローブ情報」などという言葉すらよくわからない。「実際に走行している自動車から、速度や位置などのデータを無線ネットワークを通じてリアルタイムに収集、それを渋滞情報などに活用する」というものらしいが、ネットの専門用語に当惑しているご同輩のためにもまず、このプローブ情報を利用したスマートループがどういうものなのか説明していこう。
渋滞回避に威力発揮となるか
最新のカーナビはかなり行き着くところまで行っている。細かい部分での不満はまだあるが、主な機能やカーナビ本体の中に収容する情報はほぼやり尽くした感がある。ただしこれはこれまでのカーナビ、つまりクローズドメディアとしての話であって、これからは最新情報をいかにうまく取り込んでいくかがカギになっていくはずだ。
それを市販でいち早く実現したのがスマートループ。携帯電話を通信手段とし、カーナビに最新情報を反映させるのだ。なお、スマートループの利用には、パケット通信料が発生することを最初に断わっておこう。
では、通信料を払ってまでどんな有益な情報が取り込めるのかというと、それは緻密で、より正確な渋滞情報である。
VICS情報があれば十分じゃない? という声もあるだろう。しかしVICSがカバーしている道路は全国で約7万km程度にすぎない。渋滞にはまってカーナビを見ると空いてそうな道路があるから回ってみたがやっぱり混んでいた、という経験はないだろうか。それはその道路がVICSの対象道路となっていないことが多い。実際に混んでいても情報を取っていないからカーナビにも渋滞表示がされないのである。
では何を信じればいいのか? その道を走ったクルマがここは何km/hで走れるよ、という情報を発信してくれればいいわけである。そう、あるクルマの走行データを他のクルマが利用する、その代わりに自分も情報を提供するというギブ・アンド・テイクの情報活用がスマートループのキモなのである。
このスタイルの渋滞情報提供は、トヨタの「G-BOOK mX」やホンダの「インターナビ・プレミアムクラブ」などで実施済み。しかしこれらは、利用できるのがそれぞれのユーザー間に限られているという弱点がある。囲い込みをしたのでは有益な情報になりえない。情報のサンプル数が少なければ「リアルタイムプローブ」は成り立たないからだ。
その点、パイオニアのスマートループは、市販のメリットを存分に活かしたシステムといえる。トヨタやホンダに限らずどんなクルマでも(もちろん輸入車でも)装着できる。仲間が多ければそれだけ情報量は多くなり正確さも増す。パイオニアでは昨秋、サイバーナビに加えて楽ナビにもその機能を持たせたので、スマートループの仲間は一段と多くなり、その効果アップが一段と期待できるのだ。
スマートループで取る渋滞情報は以下のメリットがある。まずカバーする道路はVICSの約5倍にあたる約33万km。VICS対象外の道路をスマートループユーザーが走ってサーバーに上げた渋滞情報は即座に受け取れるだけでなく、そのあとも蓄積して渋滞予測データの更新に役立てる。その結果ユーザーはルート探索すると、VICSデータだけでなく、リアルタイム情報、VICS圏外の情報を加えた渋滞予測データを駆使した、質の高い渋滞回避ルートを手にすることができるというわけだ。
初めて行く大型施設にも迷わず誘導
ユーザーがサーバーに上げる情報は渋滞情報だけではない。目的地となる地点情報のさらにクオリティアップしたものを受け取ることもできる。
たとえばある郊外型大型施設に行きたいとき、検索をかけるとたいてい建物の真ん中にポインティングされる。そのままルート探索すると「付近」で案内を終了することが多く、その施設内の駐車場探しは自分でしなければならない。
クルマの案内はやはり駐車場がゴールとなるべきだろう。
このとき、あらかじめ駐車場データがHDDに入っていればいいが、そこまでデータが完備されたカーナビは皆無であるし、既存データでは新しくできた施設には対応しきれない。
そこでスマートループでは、Aという施設を目的地設定したクルマが現地に着くと、道路から外れた地点を駐車場と判断し(エンジンを切った時点で確定と判断)、その地点データをA施設の新たな位置情報としてサーバーに送るのである。以後A施設を検索する他のユーザーは、サーバーに上がった情報をいただいて最初から駐車場の入り口を目指すことができる。こうすれば初めて行く施設でも、以前から知っていたかのように迷うことなく駐車場に向かえるわけだ。ただし099サイバーナビの場合、他のユーザーからのオートパーキングメモリー・データは携帯電話では受けられず、リビングキットという同梱の機器を使って自宅などで情報をダウンロードしなければならないので念のため。
携帯はワイヤレスで接続
スマートループ機能の説明にたくさんのスペースを使ってしまったが、さっそくクルマに乗り込んでみる。まず必要なのは携帯電話とカーナビをつなげることだ。その接続には従来からのハンズフリー通話と同じくケーブル(別売)を使う方法でもよいが、099サイバーナビではスマートにワイヤレス接続することもできる。これをするにはBluetoothユニット「ND-BT1」(1万5750円)を別途購入しなければならないが、携帯電話をカバンやポケットに入れたままでも接続OKなのだから、価値ある出費といえるだろう。
ただし最初の設定はとまどった。Bluetooth接続の設定項目がどのメニューに入っているのかわからないのである。それに携帯電話側のBluetooth設定も必要だ。もちろん携帯電話がBluetooth対応の機種でなければ、このワイヤレス接続が不可能なのは言うまでもない。なんだかんだで30分近く格闘、そのあげく無事つながった時の喜びは格別だったが、筆者のように無精するからこんなに時間がかかるわけで、最初から取説(携帯電話のもお忘れなく)を持ち込んで設定すればもっと短時間で済むはずである。一度つながれば、二度目以降はクルマに持ち込むだけで自動的につながるので、使い勝手もいい。
さあいよいよ効果だめしにスタート、といきたいが、走行インプレッションは次回。(続く)
(文=尾沢英彦(『カーナビの達人』編集長))
「カーナビの達人 2008 WINTER」http://www.webcg.net/WEBCG/special/2007/carnavi08win/index.html

尾澤 英彦
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