マツダ・アテンザスポーツワゴン 25S(FF/5AT)【ブリーフテスト】
マツダ・アテンザスポーツワゴン 25S(FF/5AT) 2008.04.08 試乗記 ……286万7400円総合評価……★★★
スポーティな外観を纏いつつ、ひとまわり大きくなった「マツダ・アテンザ」シリーズ。新開発の2.5リッターユニットを抱くワゴンモデルで、その実力を試した。
まさに「スポーツワゴン」
日本の自動車市場はミニバン全盛。そんななか、普通のワゴンは地味な存在。ハッチバックの仲間に入れられてしまいそうだ。
が、これは本来ドイツなど欧州向けの車種である。そう考えるならば、輸入車との比較の上で日本車を選ぶ、という納得のしかたもある。かさばる荷物ではなく、小さくとも比較的重い物や貴重品などを運ぶ職業の人にもウケそう。ストンと腰を落として座る、目線の低いスポーツカーポジションを好む人にとっては、スポーツワゴンのよさが理解されるだろう。
クーペと対極にある、すーっと長く延びたルーフラインからは居住空間のゆとりを感じるし、ノッチバックセダンでは得られない解放感もある。運転感覚は、重心が高めなミニバンと違い、低さゆえの安心感がある。ハンドリングはここ数年来、マツダ車は目ざましい向上をみせている。スタイリングにもうひと工夫あれば、さらに魅力を増すに違いない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
マツダのミドルクラス「カペラ」に代わるモデルとして、2002年5月に発表されたのが「アテンザ」。4ドアの「セダン」、5ドアの「スポーツ」、ステーションワゴンの「スポーツワゴン」と、3種の車型で世界展開するグローバルカーである。
2008年1月、フルモデルチェンジして2代目に。ホイールベースが50mmも延長されるなど、ボディサイズはひとまわり拡大された。
エンジンは、オールアルミ製直4のMZRユニットで、2リッターと、従来の2.3リッターに代わる2.5リッターの2種類。トランスミッションはグレード別に、5段AT、6段AT、6段MTが組み合わされる。
(グレード概要)
試乗車はワゴンタイプの「スポーツワゴン」。2.5リッターユニットを搭載し、各種オプションを標準装備した「25S」は、同エンジンの4グレード中、下から2番目にあたるもの。最もベーシックな「25C」との相違点は、空力に寄与する「アンダーカバー」類、横滑りを防止する「DSC」、「オートクルーズコントロール」、「フォグランプ」、さらに革巻きステアリングなどのインテリアパーツである。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
メーター部分は立体的な造形で迫力あり。数字、目盛り、針などのグラフィクスもスッキリしていて読みやすい。ブルーのリングや赤文字など演出は結構派手ではあるが、さほど厭味にならない範囲。ナビ画面の位置もメーター類からちょっと下がって視野の邪魔をしないイイ位置にある。グローブボックスを下側にもってきて棚をなだらかにしたので広々と感じる。
(前席)……★★★★
シートはサイズ、形状、ホールド性など良好。座面はやや凹面形状ではあるが、前半の布配置デザインでお尻が前へずれるのを防いでくれる。サイドブレーキはレバー式で安心。足元は広々としていて、フットレストも有効だ。左足ブレーキ派にも余裕。着座位置が低めで、ペダルを上から踏み下ろすのではなく前に押すタイプなのでスポーツカー的なポジションを取れる。
(後席)……★★★
折り畳めるタイプのシートゆえかサイズ的にはやや小振りでクッションストロークは少なめ。背面は平板。乗り心地は硬めで上下変位もあるので長時間は敬遠したい。スペース的には十分広く、フロアは低く足元にも余裕があるし、天井も高い。4WD仕様もあるためか、センタートンネルは比較的高い。サイドシルはさほど幅をとっておらず、大きく開いドアとあいまって乗降性は悪くない。
(荷室)……★★★
フロアはほぼバンパー高さで下に深くはない。タイヤハウスの出っ張りは少なめでフロア面積は広い。床下にはテンパータイヤがあるきりで、小物入れなどの仕切りはなし。
ネットのブラインドはゲートの作動に連動して持ち上がるタイプで、ハッチバックに備わる通常の棚より高く、外からはブラックガラスとともに内容を見せないし、荷物が多少凸凹しても覆い隠せるので便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
多少ノイジーで、4気筒ゆえの振動もあるが、元気な証拠と受け取れる。トルク、レスポンスともに良好。活発に走らせることができる。ATはDレンジに入れっぱなしで自動変速に任せても、変速ショックは少ない。しかし、これは手動で積極的にシフトした方が、“走らせている実感”が得られる。
早めにシフトアップして低速トルクを活かしつつトロトロ走るより、回したほうが、よりエンジンの活気を感じられるからかもしれない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ちょっと硬いのが難点。コンプライアンスを極力詰めて、無駄な動きを排除する姿勢には賛成する。だが、SUVモデルの「CX7」のようなソリッド感はいまひとつで、やや重々しさが残る。
ルーフが伸びた分、やや上方後部に重心位置が移った。ロールセンターは同じと思われ、その差が開いた分、足まわりのバネ系を硬める必要があったのか……リアシートの乗り心地は空車では硬い。なお、ハンドリングに関しては、マツダ車はここ数年来目ざましく向上しているといえる。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2008年3月19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:2219km
タイヤ:(前)215/50R17(後)同じ(いずれも、ポテンザRE050A)
オプション装備:クリアビューパッケージ+タウンパッケージ+LEDドアミラーウィンカー+リアルーフスポイラー+HDDナビゲーションシステム+4スピーカー+プッシュボタンスタートシステム+アドバンストキーレスエントリーシステム(40万7400円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:296.6km
使用燃料:36.0リッター
参考燃費:8.24km/リッター

笹目 二朗
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