シトロエンC5 3.0i V6(FF/6AT)/2.0i 16V(FF/4AT)【海外試乗記】
なかなかの戦闘力 2008.03.31 試乗記 シトロエンC5 3.0i V6(FF/6AT)/2.0i 16V(FF/4AT)最新のダブルシェブロン、新型「C5」にポルトガルで試乗。注目のニューモデルの仕上がりは……。
ビーエム入ってる?
昨今デビューのシトロエン車は、なかなか“うまいところ”を突いてくる。「シトロエンらしい」と、きっと多くの人がそう感じるであろう独創性を内外装のルックスでしっかりとアピールしつつ、一方でその操作系などは「使い辛さを招くほどの身勝手さ」を巧みに回避する。そんなサジ加減がなかなかうまい。
「C4」「C6」と、そんな印象を感じさせるモデルのデビューが続いただけに、新しい「C5」の仕上がり具合にも大いなる期待が寄せられる。そして今、新型C5が目の前にある。ここはヨーロッパの……というよりユーラシア大陸の最西端にある、ポルトガルはリスボンの街なかにあるホテル前。新しいC5の国際試乗会は、そんなロケーションからスタートを切った。
ネーミングこそ継承をしたものの、従来型のC5とはまったく趣を変えた新型のスタイリング。例によって“ダブルシェブロン”から発展したワイドなグリルがシトロエン各車との共通性をアピールする。けれども、新しいC5のスタイリングには、C4やC6の場合とはちょっと異なった賛否両論が生まれるかもしれない。それは主にリアビューに起因する。
個人的にも今度のC5のリアビューは、トランクリッドの形状やテールランプのデザインに「ちょっとアウディとBMWが入っている」と、感じた。
室内は……?
インテリアのデザインにはドイツ勢とは明確に異なる独自性が感じられる。
オーディオや空調操作系をまとめたセンターパネルを、ダッシュボードとは視覚的に分離してレイアウトさせるのはこのところのシトロエンが好んで用いる手法。“光もの”による加飾や立体感の強いドアトリムの造形がセンス良く決まっている。一部パーツの合わせ目の均一性などがやや難アリだったのは、テスト車がまだ本格量産前の段階だったからか。
惜しかったのはダッシュセンターにビルトインされたナビゲーションシステムの操作性。前述センターパネル内にある小さなスイッチによるコントロール性はすこぶる悪い。ディスプレイ位置はドライバーズシートから難なく手の届く範囲なので、ユニット全体を日本仕様に置き換えるという日本向け車両については、最新のタッチパネル式をビルトインして貰うというのが最善の策であるように思う。
キャビン空間――特に後席は、全長4778mm、全幅1860mmというボディのサイズからすると「思ったほど広大ではなかった」というのが正直な印象。そうは言っても、大人2人が長時間を過ごすのにも全く苦にならない広さだし、シート自体の作りもフロントに比して遜色がない。ちなみに、このカテゴリーで上限サイズを狙ったという全幅は、兄貴分であるC6と同じ。それでも、全長が10cm以上短いこちらの方が「パーソナルなファミリー・サルーンとしては現実的」と考える人は少なくないはずだ。
やや特殊
テストドライブを行ったのは、日本導入予定とされる3リッターの6気筒エンジンを搭載する「3.0i V6」と2リッターの4気筒エンジンを搭載する「2.0i 16V」の2種。
実は4気筒エンジン車には“メカ・サス”も設定するのが欧州での新型だが、日本に向けては「全車“ハイドラクティブ”仕様でいく」。マーケティング上の戦略から言っても正解だろう。
4気筒モデルでも実用に十分な加速力は確保されるものの、ATとの組み合わせで乗るからにはやはり3リッター級の余裕が欲しくなる。6気筒モデルには6段ATが組み合わされる。4気筒モデルのATは4段だ。これがまた、緩加速であっても70km/hに達しないと4速ギアまでアップせず、一方で55km/hまで落ちると3速にダウンし、35km/hになると2速まで落ち……と、常に低いギアを選びがちな“ユーロセッティング”。日本の市街地では気になりそうだ。
また、マフラーが近い後席に乗ると、アクセル踏み込みのたびに4気筒モデルはこもり音が気になるレベルだった。これが、先に「6気筒で乗りたい」と語った主な理由になる。
高速走行時の乗り味は、油空圧式サス“ハイドラクティブ”の威力がまざまざと感じられるものだった。ボディコントロール能力は抜群に高く、フラット感は信じられないほど。速度が落ちてくると“神通力”はやや薄くはなるものの、それでも「通常のサスペンションではできないことをやっている」という実感は、誰もが明確に感じるはずだ。
ハンドリングの感覚はやや特殊。ハイドラクティブの効果というよりは、40km/h付近を境に操舵力と操舵感が大きく変わるパワーステアリングの特性によるところが大きそう。空気抵抗係数=Cd値は0.29となかなか優秀だが、しかるべきところで最高速にトライをしてみると180km/h近辺からリアにリフト感を覚えるので、アウトバーンでの安定感はやはりドイツ勢には敵いそうにない。
新しいC5の次なる興味は、日本での販売価格がいったいいくらになるのか、ということ。これまでの4気筒モデルが364万円、6気筒モデルがそのおよそ100万円プラスという価格が大きく変わらないとしたら……これは特にアウディやボルボなどは、うかうかとはしていられない。なかなかの戦闘力の持ち主となりそうだ。
(文=河村康彦/写真=プジョー・シトロエン・ジャポン)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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