クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4660×1815×1415mm/ホイールベース=2730mm/車重=1690kg/駆動方式=FR/5リッターV8DOHC32バルブ(423ps/6600rpm、51.5kgm/5200rpm)価格=766万円(テスト車=838万5550円)

レクサスIS F(FR/8AT)【試乗速報】

「F」独自の価値 2008.02.13 試乗記 島下 泰久 レクサスIS F(FR/8AT)
……838万5550円

レクサスから5リッターV8エンジンを搭載するニューモデルが登場。「F」という称号を得た「ISシリーズ」のプレミアムスポーツはどんな走りをみせるのか。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

レクサスならでは

実際にステアリングを握る前、その姿を視界のうちに捉えた段階から、気分が昂揚してくる。「IS F」は今どき珍しい、そんなクルマの1台だ。より低く、よりワイドになったそのエクステリアは迫力十分。開口部が増やされたフロントまわりや、ディフューザー形状とされたリアバンパー、4本出しのマフラーなどディテールも凄みを感じさせる。けれど、ワイルド過ぎると思わせないのは、ボディパネルの合わせ精度や塗装の艶めきなど、レクサスならではのクオリティの高さのおかげだろう。

室内を見渡しても、その印象は変わらない。ステアリングのグリップ部分にはディンプル加工されたレザーを用い、シートにはサイドサポートを張り出させた専用品を用いる。これによってホールド性が向上したことはもちろん、ベースの「IS」で気になった着座位置の高さが10mm下げられ、ほぼ納得のいくものとなっているのが嬉しい。
こうした走りの演出の一方で、そのシートは滑らかさ抜群のセミアニリン仕上げの本革張りとされ、さらに試乗車にはトリムパネルにグラスファイバーにアルミを蒸着させたというシルバリースターリングファイバーなる素材が奢られて、上質感を一層高めていた。標準のままでも悪くないが、これはオプションで選ぶ価値が十分にある。

 
レクサスIS F(FR/8AT)【試乗速報】の画像 拡大
メーカーオプションのシルバリースターリングファイバーパネル。
メーカーオプションのシルバリースターリングファイバーパネル。 拡大
レクサス IS F の中古車webCG中古車検索

8段ATあってこそ

スタートボタンを押してエンジンを始動すると、メーターの針が振れて、インフォメーションディスプレイに「F」の文字が浮かび上がる。そして同時に、後方から野太い排気音が響き、レクサス独自のあの起動音が室内に流れた。なるほど「F」の称号は、これまでのレクサスとまったく異なる価値を構築するものではなく、あくまでその世界観を継承しながら、更にスポーツの要素を付加しているということか。

走らせれば、そんなふたつの側面がくっきりと見てとれる。まず大人しく流している限り、走りはジェントルそのもの。エンジンは低回転域からトルクに余裕があり、それこそ1000rpmからでもキックダウンさせる必要もなくスーッと加速できる。スポーツダイレクトシフトと称される8段ATもそれを活かして、2000rpm前後でどんどん上のギアに入る。もちろん、その際にショックなどは皆無である。

しかしアクセルをさらに踏み込むと様相は一変する。3000rpm台後半に差し掛かるや前方からの吸気音が一気に高まり、あふれんばかりのトルクが涌き上がる。そしてトップエンドに向けて、いかにも高い精度で組まれたエンジンらしい緻密な音と振動とともに一気に昇り詰めるのだ。

このドラマチックな吹け上がりを楽しむには、Dレンジならばアクセルを踏み込むだけで、8段ATは一気にキックダウンして回転計の針を快感ポイントに導く。ステアリングのパドルを操作してもいいが、セレクターレバーをMレンジに倒してからパドルを引けば、自動シフトアップしない本当のマニュアルモードに。
最初はあまりの回転上昇の速さにパドル操作が間に合わないほどだが、慣れればレッドゾーンぎりぎりでの瞬時のシフトが可能だ。多少のショックには敢えて目を瞑っても、トルクコンバーターを使わず電光石火の変速を実現したこの8段ATがあってこそ、大排気量NAエンジンならではのキレ味とパワーを存分に楽しむことができるのは間違いない。

走りは安定しているが……

不安だったのは423ps、51.5mkgという大出力を得ていながら、タイヤ幅がISのバージョンSと同じに留められたシャシーだが、実際その走りやトラクションには不満を感じさせなかった。むしろ余計な動きを排した姿勢の安定ぶりに感心させられたほどである。ただし、乗り心地は硬め。ショックの角はうまく丸められていて、スポーツセダンとして納得できる快適性を確保していると個人的には思うが、やはり助手席や後席に乗る人には、時にクルマに代わって言い訳をしなければならなくなりそうだ。

しかし総合的に見ればこのIS F、とても強い、それもポジティブな印象を残すクルマだったことは間違いない。筆者自身は未経験だがサーキットでの走りも相当のものと聞く。その上で、我々が日常接するうちの大半を占める一般道でも、やや演出し過ぎの感もあるとは言え、これだけ刺激に満ちた走りの楽しさを、レクサスならではのクオリティに上乗せするかたちで満喫できるのだから、その存在意義は大きい。「AMG」でも「M」でも「S」でもない「F」の独自の価値を味わうため、またステアリングを握りたい。乗る前に感じたワクワク感が、乗った後にはさらに強いものとなっていたのである。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏) 

 
レクサスIS F(FR/8AT)【試乗速報】の画像 拡大
【テスト車のオプション装備】
室内パネル・シルバリースターリングファイバー=3万9900円/BBS製フロント・リア19インチ鍛造アルミイール=8万7150円/プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール=27万3000円/クリアランスソナー=4万2000円/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム=28万3500円
【テスト車のオプション装備】
	室内パネル・シルバリースターリングファイバー=3万9900円/BBS製フロント・リア19インチ鍛造アルミイール=8万7150円/プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール=27万3000円/クリアランスソナー=4万2000円/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム=28万3500円 拡大
島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

試乗記の新着記事
  • 日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
  • アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
  • ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
  • ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
  • アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
試乗記の記事をもっとみる
レクサス IS F の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。