メルセデス・ベンツE63 AMGステーションワゴン(FR/7AT)【試乗記】
万能マシン 2008.02.07 試乗記 メルセデス・ベンツE63 AMGステーションワゴン(FR/7AT)……1520万3000円
スーパーチャージャー付き5.5リッターV型8気筒SOHCエンジン搭載の「E55AMG」と入れ替わる形で登場した「E63AMG」。500psを超えるハイパワーの自然吸気エンジンを搭載したハイパフォーマンスカーは、ただスポーティなだけではなかった。
入魂の自然吸気V8エンジン
ひとりのマイスターがまるまる1基のエンジンを組み上げ、できあがったエンジンにマイスターの名を記したプレートを残すのがAMGのやり方。それだけでも彼らのエンジンに対するこだわりが伝わってくるが、そんなAMGが精魂こめて独自に新開発したハイパフォーマンスエンジンが、自然吸気の6.2リッターV8DOHCユニットだ。
「Sクラス」をはじめ、「CL」「M」「CLK」「E」さらには最新の「Cクラス」と、搭載モデルは拡大の一途をたどり、今回試乗した「E63 AMGステーションワゴン」もその中の一台。最高出力514ps/6800rpm、最大トルク64.2kgm/5200rpmは、ステーションワゴンとしてはトップクラスの性能で、このパワーを受け止めるために、7段ATの“7Gトロニック”はパドルシフト付きのAMGスピードシフトに格上げされ、セミアクティブサスペンションの“エアマチックDC”も専用チューンのAMGスポーツサスペンションへと進化。さらに足元にはAMGの5スポークのアルミホイールと、前245/40R18、後265/35R18のワイドタイヤが奢られる。
ほかにも、E63 AMG専用のエアロキットやスポーツシート、スポーツエグゾーストシステムなど専用装備が満載。1500万円弱の価格を含め、ステーションワゴンの頂点に君臨するにはふさわしい内容である。
スポーティなだけじゃない!
E63 AMGステーションワゴンのスペックや装備を眺めていると、スポーティさばかりが浮き彫りになってくる。確かにエンジンは凄い。サウンドに、以前のスーパーチャージャー付き5.5リッターV8ほどの凄みはないが、低回転から溢れんばかりのトルクを湧き出し、ほんのわずかな右足の動きに即座に反応するのは大排気量自然吸気エンジンならではの持ち味だ。しかし本当の凄さは4000rpmを超えてからで、アクセルペダルを床まで踏み込むと、2速はもちろん、3速でも、一気にレブリミットの7200rpmまで吹け切るほどの力強さと切れ味を持つ。パドルシフトを使って積極的なシフト操作を試みると、シフトショックは大きめながら、そのぶん素早く変速を終えるAMGスピードシフトも小気味好い。
一方、専用チューンのAMGスポーツサスペンションは拍子抜けするほど快適な乗り心地だ。「コンフォート」「スポーツ1」「スポーツ2」のうち、快適性重視のコンフォートモードを選ぶと、18インチを履くのがにわかに信じられないくらいマイルドで、メルセデスらしい重厚でフラットな乗り心地を示すし、スポーツ1やスポーツ2を選んだところで不快さとは無縁。ワインディングロードではもう一段締め上げてもいいくらいなのだが、それにしても街中から高速、そして、ワインディングロードまで、辛い思いをせずにスポーティなドライビングが楽しめるのはお見事である。
ラクシュリーサルーンもいいが、あえてステーションワゴンを選ぶアクティブなライフスタイルの持ち主には最良の一台だろう。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。
































