「ATにもオーバーヒートがある?」

2008.01.26 クルマ生活Q&A 松本 英雄 トランスミッション

「ATにもオーバーヒートがある?」

高速道路を運転していたら、突然ATがニュートラルに入った状態のようになり、動力が伝わらなくなりました。点検してもらうと、ATのオーバーヒートだといわれましたが、これはよくあるのでしょうか?

お答えします。エンジンが回転を上げてもトラクションが伝わらなくなるような状態でしたら、ATのオーバーヒートである可能性があります。

上り坂が長く続いたり、急加速を繰り返したりした時、トランスミッションには高い負荷がかかっています。エンジン側からはトルクの入力があるのにそれが動力とならない状態が長く続くと、トルクコンバーターの中で流体が強くかき混ぜられるような事態になります。そうすると、内部で熱が発生するのです。

冷やすためにオイルクーラーが装備されていますが、冷却能力が追いつかなくなるとオーバーヒートしてしまうのです。

ATフルードが高温になると、流体の中に泡が発生するキャビテーションという現象が起こり、フルードの粘度が著しく低下してしまいます。そうなるとトルクの伝動が悪くなり、さらに高温になるという悪循環に陥ります。放っておくとAT自体を傷めてしまい、さらにはエンジンもオーバーヒートさせることにもなりかねません。

こういう状態になったら、速やかに停車してATが冷えるのを待ってください。冷えればとりあえずATが滑る現象は治まるはずです。ただ、一度オーバーヒートさせるとATフルードが劣化してしまうので、必ずディーラーなどでフルードの交換を行ってください。

松本 英雄

松本 英雄

自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。