第24回:あのジウジアーロやピニンファリーナも訪問できるゾ!
トリノで「週替わり社会科見学ツアー」発進!
2008.01.19
マッキナ あらモーダ!
第24回:あのジウジアーロやピニンファリーナも訪問できるゾ。トリノで「週替わり社会科見学ツアー」発進!
プロモーション上手なドイツ人と下手なイタリア人
2006年に開館した新しい「メルセデス・ベンツ・ミュージアム」に対抗するように、2007年秋にBMWのブランド体験センター「BMWヴェルト」が本拠地ミュンヘンにオープンした。ドイツ系メーカーのプロモーション戦略には思わず「すげーなー」と声を上げてしまう。
それに対してアルプスのこちら側・イタリアの企業は、なんとも商売下手である。たとえば、あるファッションブランドの博物館は、日本では高校生でも知っているくらい有名だというのに原則予約でしか見せてくれない。
フィアットの工場見学も、いまだ一般の人が円滑に見学できるシステムは確立されていない。
フェラーリ工場に至っては、正規ディーラーで新車を購入したオーナー限定なのは有名である。
まあ、フェラーリの場合そうすることがプレミアム性の演出として納得できるが、フィアットなんかは「見せてナンボだろう!」と思ってしまう。
あのメルセデスだって、午前中にミュージアムの受付でリストに名前を記入するだけで、隣接のウンタートュルクハイム工場を見学できるのだから。
拡大
|
厳しさに「しびれ」ます
そんな中、ようやくイタリア人もプロモーションの大切さに気がついたと思われる企画が、2007年暮れからトリノでスタートした。トリノ県観光局が主催する、県内企業を週替わりで1年間かけて見学するツアーだ。タイトルは「Made in Torino」という。
工場が夏休みモードに入る7月8月を除き、毎週金曜日にカステッロ広場前の観光案内所から出発する。料金はひとり10ユーロで、所要時間は約3時間から4時間だ。
すべてのツアーはインターネットなどによる予約制。参加資格は16歳以上で、パスポートなど身分証明書の番号を申告しなくてはならない。一部の工場施設は「靴はゴム底。ハイヒール禁止」と指定が細かい。企画の性格上、大部分の訪問エリアは撮影禁止であろう。
さらに2月の航空機会社に代表される人気コースは、早くも満員になって締め切られている。修行と同じで、条件が厳しいほど“燃えて”くるのはボクだけか……。
解説は原則としてイタリア語だが、一部の施設では英語やフランス語のガイドも行なわれる。
拡大
|
乗り物関係も盛りだくさん
プログラムに盛り込まれている企業は、トリノ名物のチョコレート工場や近年日本でも有名な「ラバッツァ」コーヒーをはじめ、パン・菓子工場、家具工場、筆記具メーカーと、産業都市トリノを反映して幅広い。
乗り物好きが喜ぶコースも盛りだくさんだ。
前述の航空機会社は、戦闘機ユーロファイターを手掛けるアレニア・アエロナウィカ社と、同じく防衛関連を得意とするガリレオ・アヴィオニカ社およびターレス・アレニア・スペース社が盛り込まれている。
もちろんフィアット系もある。
4月と10月には、ミラフィオーリ工場の一角に2006年オーブンした巨大ショールーム「モーターヴィレッジ」を訪問する。同時にカーデザイナー養成機関として知られるIEDも同じ日に巡るようだ。
商用車イヴェコも2月と5月に組まれている。また建機ファンには、日本のコベルコとの合弁による「ニューホーランド・コベルコ」訪問が2月と6月にある。
だがカーエンスージアストが泣いて喜ぶお宝企画は、トリノを代表するカロッツェリアであろう。イタルデザイン−ジウジアーロ、ピニンファリーナ、ベルトーネを訪問する日が盛り込まれているのだ。それもイタルとベルトーネは2日も設定されている。
いずれも「工場見学無し」というただし書き付きだが、たとえ展示ホールの歴代作品コレクションだけでも、普段は関係者以外立入禁止エリアゆえ貴重なチャンスである。
ちなみに以前イタルデザインに聞いた話によると、冬季五輪に合わせて同社のコレクションホールをウェブカム放映するプランが浮上したそうだ。しかし、「企業秘密の取引先が画面を横切っちゃったりすると、まずい」ということで、提案者側には断ったという。そのくらい普段は「奥の間」エリアということだ。
ちょっと心配な、あの名門も
なお、ツアーのカレンダーとオンライン予約は、トリノ県観光局のホームページを参照のこと。
上記の日程や内容は、変更の可能性があることを付け加えておく。
ちょっと心配なのは前回お伝えしたように、ベルトーネが現在混迷の渦中にあることだ。参考までに記しておくと、その後同社は1月14日トリノの裁判所によって、ついに破産手続きが開始された。ただし個人的には、もし選考委員になれるのなら五輪候補地やカー・オブ・ザ・イヤーよりも、菓子品評会「モンドセレクション」を担当したいと思っている。したがってボク自身は、カロッツェリアが急遽チョコレート工場に変更になってもまったく問題ない。
そう書いていたら、子供の頃「モンドセレクション受賞」を売りにしていたバターココナツが懐かしくなり原稿が手に付かなくなってきたので、今回はこのへんで。
(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ、Lavazza、Bertone)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
最終回:人それぞれに「最後のアルファ・ロメオ」 2026.8.27 イタリア・シエナで開催された「アルファ・ロメオ・スパイダー/GTV」のささやかなオーナーミーティングを、地元在住の大矢アキオが取材。あなたにとって最後で最高のアルファ・ロメオは、いつの世代のどのモデルですか?
-
第975回:ホンダ&スバルのTシャツがイタリアを席巻中 2026.8.20 イタリアで、ホンダやスバルをモチーフにした“日本車Tシャツ”が人気に。自動車をモチーフにしたアパレルの世界で、日本車や日本のブランドがもてはやされる理由とは? 素直に喜べないその背景を、現地在住の大矢アキオが考察する。
-
第974回:「民生用」と「軍用」をまたぐクルマたち――ルノーの最新戦術車両に思う 2026.8.13 ルノーのクロスオーバーSUV「ラファール」がまさかの軍用車に? ルノーと軍需との第1次大戦にまでさかのぼるつながりと、彼らが今ふたたび防衛産業と距離を詰め始めた理由、世界的に見られる軍用と民生用の垣根を超えたクルマの歴史を、大矢アキオが解説する。
-
第973回:静かになりすぎたクルマと「聴かせて、聴かせて隊」に思うこと 2026.8.6 最近イタリアでよく見かけるという、道行くスポーツカーやスーパーカーのドライバーに、豪快なエキゾーストサウンドをせがむ若者の姿。彼らの存在は静かになりすぎた四輪車に対するアンチテーゼか? 現地在住の大矢アキオが考察する。
-
第972回:黒船来襲も! イタリア自動車販売店は戦国時代 2026.7.30 イタリアで急速に進む、自動車販売店の統廃合と巨大グループの伸長。その背景にはどんな理由があり、私たちにどんな変化をもたらすのか? 現地在住の大矢アキオが、変わりゆく自動車販売のあり方を考察するとともに、消えゆく街かど自動車文化に思いをはせた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。