ダッジ・アベンジャーSXT(FF/4AT)【試乗記】
不可はない 2007.11.05 試乗記 ダッジ・アベンジャーSXT(FF/4AT)……413万7000円
クライスラーから第3のブランドとして日本に上陸した「ダッジ」。アメ車らしいアグレッシブなエクステリアが特徴のミドサイズサルーン「ダッジ・アベンジャー」に試乗した。
カタチが命
2007年、ついに日本上陸を果たし、1年目にしてSUV、クロスオーバー、セダンの4モデルをラインナップするにいたったクライスラーの「ダッジ」。どのモデルを見ても、ひとめでダッジとわかる“クロスヘア”デザインのフロントグリルや存在感たっぷりのフォルムが特徴で、もの珍しさも手伝い、すれ違いざまについ振り返ってしまうのは私だけではないはずだ。
そんなダッジ・ファミリーのなかにあっては、むしろおとなしく見えるのが、ミドサイズサルーンの「アベンジャー」である。爽やかなフェイスがそう思わせるのかもしれないが、一方、サイドからリアにかけてのクーペを思わせるデザインは、兄貴分の「チャージャー」の特徴を受け継いでいて、セダンでありながら、“タダモノではないゾ”のオーラを発しているのが、このクルマ一番の価値といえるだろう。
アベンジャーのつくり自体はチャージャーとは大きく異なり、フロントがマクファーソン・ストラット、リアがマルチリンクのサスペンションや、エンジンを横置きするFFのレイアウトなどはむしろエントリーモデルの「キャリバー」に近い。販売されるモデルは2.7リッターのV6を積む「SXT」ひとつで、組み合わされるオートマチックが4段とやや古臭いが、413万7000円の価格はなかなか魅力的だ。
派手さの裏では
そんなアベンジャーを、伊豆で開かれた試乗会で味見することができた。会場では、イメージカラーの“インフェルノレッド”や鮮やかな“マラソンブルー”など、派手なボディカラーのアベンジャーを見ることができたが、それが不思議と似合ってしまうのがこのクルマの持ち味でもある。
それとは対照的に、常識的にまとめられているのが室内。ツートーンのレザーシートや白地のメーターがスポーティな雰囲気づくりに一役買っているが、センタークラスターの感じなどは、他のダッジやクライスラーのモデル同様、実にシンプルなものだ。キャビンはボディサイズが大きいだけに、運転席はもちろんのこと、後席のスペースにも十分に余裕があり、クーペ風のフォルムとは裏腹にセダンとしての機能を満たしている。荷室も広いうえに、ダブルヒンジのトランクリッドや分割可倒式のリアシートを採用するなど、基本をしっかり押さえているのもうれしい点だ。
面白いと思ったのが、センターコンソールに設けられるヒーター&クーラー付きカップホルダー。エアコンからの風でドリンクを温めたり冷やしたりというのはよくあるが、セラミック素子を使って上は60度、下は1.6度にドリンクホルダーの温度を保つというのは、運転中のドリンクにこだわるアメリカ人らしい発想だ。
感動はないけれど
残念ながら冷えたミネラルウォーターを飲みながらドライブを楽しむ時間的な余裕はない。さっそく走り出すとするが、車両重量1560kgに3名乗車ということもあって、最高出力186ps、最大トルク26.1kgmを誇る2.7リッターV6は数字のわりに出足はマイルドだ。もちろん不満なほどではなく、エンジン自体もスムーズなのだが、力強さを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。回せば3000rpm台中盤からトルクは盛り上がるものの、さほど余裕は感じられなかった。
乗り心地はやや硬めで、ワインディングロードをとばしたところで、だらしなくロールすることはない。そのわりにゆるいピッチングを許すが、気にしなければ受け流せるレベルだ。ハンドリングも、ボディが大きなFFということを意識せずにすむ自然な感じに仕上がっていた。ただ、装着されていたタイヤが路面からのショックをうまく遮断できず、終始ゴツゴツした印象だったのが不満である。
それを除けば、感動はないけれど、セダンとしての必要条件は満たしているといえるアベンジャー。デザインや雰囲気が自分の波長にあうという人には格好の選択肢になると思うが、それ以上の決め手が見あたらないだけに、日本でのセールスは心配である。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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