クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4881×1847×1353mm/ホイールベース=2942mm/車重=1880kg/駆動方式=FR/4.2リッターV8DOHC32バルブ(405ps/7100rpm、47.0kgm/4750rpm)(欧州仕様車)

マセラティ・グラントゥリズモ(FR/6AT)【海外試乗記(前編)】

進化がとまらない(前編) 2007.09.24 試乗記 加藤 哲也 マセラティ・グラントゥリズモ(FR/6AT)

2007年3月のジュネーブショーで発表された、マセラティの4シータースポーツカー「マセラティ・グラントゥリズモ」。405psのニューモデルにイタリアで試乗した。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

寒いドロミテ、熱いコクピット

ドロミテ連峰。イタリア−オーストリア国境にほど近いPasso Sella(セラ峠)は7月とは思えないほど凍えていた。さっきまで厚い雲に遮られてきた太陽は今しがたやっと姿を見せ始めたものの、気温たったの2度。道を一歩外れた斜面はまだ雪に覆われ、その白さに反射する光の乱舞が目に痛い。それもそのはず、ここは標高2200mを優に超える高地。吐く息が白いのはむしろ当然のことなのだ。

しかしコクピットの中の僕はむしろ上気していた。快適なフルオートエアコンのせいばかりじゃない。ペアを組んだ『ルボラン』誌小野泰治副編集長からステアリングを譲ってもらったばかりだというのに、カメラマンの求めに応じて撮影のため同じコーナーを何度か往復するうち、「グラントゥリズモ」のたしかな実力と魅力にすっかり心奪われてしまったからだ。

ヨーロッパはすでにバカンスシーズンの幕が上がっている。セラ峠はイタリア国内はもとより、隣接するオーストリアやドイツを中心に、ヨーロッパ中から観光客が押し寄せる人気スポット。厳しい断崖の岩肌が迫る圧倒的に美しい風景の中に身を置くと、さもありなんと思う。だから必然的に交通量は多い。しかも朝方まで降り続いていた雨のせいで、路面はまだ濡れている。405psを誇る4.2リッターV8の持てる実力を存分に発揮できる場面では決してない。他のクルマが絡まないタイミングを見計らって行うタイトベンドでのコーナリング撮影も、単なる瞬間芸といえるだろう。

しかしそれでもグラントゥリズモは、たしかな足取りと十二分なパワーのバランス、そして情感に訴えかけるキレの良さを覗かせ、アッという間に僕を魅了してみせたのだった。

単なる2+2ではなくフル4シーターであることが理解できるだろう。身長170cmのドライバーがポジションを合わせ、そのまま後席に座ると膝前に拳とひとつ分の余裕がある。頭はギリギリ。
単なる2+2ではなくフル4シーターであることが理解できるだろう。身長170cmのドライバーがポジションを合わせ、そのまま後席に座ると膝前に拳とひとつ分の余裕がある。頭はギリギリ。 拡大

マセラティ・グラントゥリズモ(FR/6AT)【海外試乗記(前編)】の画像 拡大
マセラティ グラントゥーリズモ の中古車webCG中古車検索

マセラティの主張

オーバーオールサイズは4881×1847×1353mm。長さはライバルと目される「メルセデス・ベンツCL」と「BMW6シリーズ」の中間、幅は3車種の中で最も狭く、高さだって低い。だがドライバーズシートに着いて運転という行為に積極的にコミットしはじめると、そんな現実の数字以上に一体感を覚えるから不思議だ。

トレッドが広く(前:1586mm/後:1590mm)重心高が低いせいもあるのだろう、絶対的なマスの大きさを感じさせないまま、タイトコーナーの連続に身を翻すように飛び込んでいく。ステアリングワークに対してクイックかつ正確な反応を示し、オプションのザックス製スカイフックシステムを装備した前後ダブルウィッシュボーン・サスペンションは、4輪からのインフォーメーションを豊富に伝えてくれる。むろん低いギアでフルパワーを与えれば、ウェット路面でリアタイヤのグリップを失わせるなど簡単至極。

ノーマル/スポーツ/MSPオフ/アイスという4種類のドライブモードが用意されるうちスポーツを選んでおけば、可変ダンパーが締め上げられてハンドリングがクイックになると同時に、MSP(Maserati Stability Program)の介入が遅れ、一瞬のテールアウトを許す。とはいっても最新のフェラーリほど派手な挙動変化を招くわけではなく、かといってお節介に過ぎない程度で姿勢を矯正してくれるため、よりリスクが少ないスポーツドライビングが楽しめるのだ。

実用性と安楽さも意識したエレガントかつアグレッシブな高性能GT。前夜行われたプレスカンファレンスでマセラティが主張したこのグラントゥリズモのコンセプトが高次元で実現されていることは、この短い時間でも手に取るようにわかった。(後編へつづく)

(文=NAVI加藤哲也/写真=Roberto Carrer/『NAVI』2007年9月号)

マニュアル操作はATセレクターはもちろんパドルでも行える。セレクターの場合は押してダウン/引いてアップのレーシングカー式であるところがいかにもマセラティっぽい。
マニュアル操作はATセレクターはもちろんパドルでも行える。セレクターの場合は押してダウン/引いてアップのレーシングカー式であるところがいかにもマセラティっぽい。 拡大
絶対的サイズを意識させない一体感を感じながら、Passo Sellaのタイトベンドを1速でクリアするグラントゥリズモ。本文では書き洩らしたが、アクティブ・ヘッドライトを装備するのも特徴のひとつ。
絶対的サイズを意識させない一体感を感じながら、Passo Sellaのタイトベンドを1速でクリアするグラントゥリズモ。本文では書き洩らしたが、アクティブ・ヘッドライトを装備するのも特徴のひとつ。 拡大
試乗記の新着記事
  • 日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
  • アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
  • ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
  • アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
  • ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
試乗記の記事をもっとみる
マセラティ グラントゥーリズモ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。