日産スカイライン250GT Type V(FR/5AT)【ブリーフテスト】
日産スカイライン250GT Type V(FR/5AT)【ブリーフテスト】 2007.04.26 試乗記 ……360万5450円総合評価……★★★★
発売から3ヶ月が経過した2007年2月までに、早くも予想を大幅に上回る1万台が売れた新型スカイライン。
そのクルマの素性がわかる、ベーシックグレードの実力を試す。
さわやかさ
300万円というのは、昔も今も、クルマを買うときのボーダーラインのひとつだと思う。新型「日産スカイライン」の2.5リッター、つまり250GTシリーズは、そのボーダーライン上にある。
今年50周年を迎えたスカイラインという偉大なる看板を、ちょっとばかり脇に置いといて、300万円で買えるクルマとして見ると、かなりイイ線いっているじゃない?という感じがする。
なによりも走りが気持ちいい。ハンドリングは安定しているだけでなく、素直でもある。乗り心地はしっとりしたストローク感が心地よい。さらに従来の日産車が苦手としてきた内装のクオリティも改善された。あらゆる部分の質感が高まっているのだ。
新型のウリのひとつに4WAS(4輪アクティブステア)があるが、それがなくエンジンが小さな250GTでも手抜きはない。むしろハイテクがなく力が控えめである分、素性のよさを堪能できる。そのデキは、同じ値段で買えるSUVやミニバンとは段違いであり、100万円ほど高い同クラスのプレミアムブランドに並ぶレベルにあると思う。
かつてのスカイラインは、典型的な体育会系スポーツセダンだった。新型も350GTの4WASつきあたりは、最新スポーツ医学を導入したアスリートを思わせる。でも250GTからは、そういう汗の匂いがしない。休日に公園で気軽にスポーツを楽しむような、さわやかさがある。スカイラインという名前にこだわらない人にこそすすめたい、いまっぽいスポーツセダンだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2006年11月20日に発売された12代目となる「スカイライン」。セダンが先行で発売され、クーペは秋に発表される予定になっている。エンジンラインナップはハイレスポンスを謳うV6ユニット、「VQ35HR/VQ25HR」の2種が用意され、組み合わせられるトランスミッションはいずれも5段AT。サスペンション形式は従来の4輪マルチリンク式から改められ、前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンクを採用したのも今モデルの特徴である。
(グレード概要)
テスト車は、2.5リッターモデルの「250GT Type V」。ベースモデル「250GT」に比べ、スカイラインホログラフィックサウンドシステムIや後席エアコン吹出し口、VDCが標準装備される。また、上級モデルの「Type P」に備わる電動チルトメーター&チルト・テレスコピックステアリングや、電動運転席ランバーサポートは手動になり、シートも本革からソフトジャカートとなる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
新型スカイラインで大きな進化のひとつが、内装の質感向上。和紙の風合いを表現したというアルミパネルをはじめ、仕立ては300万円という価格を考えればいい。
メーター内のブルーの照明は過剰に思えるが、指針やインジケーターの赤を含めて色調が抑えてあるので、派手ではない。日産車ではおなじみの、大きなダイヤルを中央に据えたカーナビのスイッチは、タッチパネル方式よりブラインドタッチがしやすく、にわかドライバーの自分も安全に操作できた。
(前席)……★★★★
サイズはたっぷりしており、タイトすぎずルーズすぎずのホールド感はスポーツセダンとして理想に近い。ヒップポイントはセダンとしては低め。ステアリングに合わせてメーターがチルトする機構は先代譲りで、運転環境に気を配った設計であることを感じる。
さらに同じ250GTのタイプPでは、ステアリングのチルトとテレスコピック調節が電動になる。300万円レベルのクルマでは異例の装備だ。
(後席)……★★★★
2850mmというロングホイールベースのためもあり、この車格の後輪駆動車としてはレッグスペースは広い。形状は立体的で、2名乗車ならサポート性能も満足できる。
他の多くの日本車と同じように背もたれの角度が寝すぎなのは気になるが、タイプPならリクライニング機構がつくので、背もたれをもっとも立てることでヨーロッパ製セダンに近い、背筋を伸ばした姿勢がとれる。
中央席にも3点式シートベルトが付くのはいいが、ヘッドレストがないのは残念。
(荷室)……★★★
開口部は低いが、それ以上に床の深さが目立つ。横方向はマルチリンク式リアサスペンションの張り出しが気になるが、その手前は広い。奥行きはこのクラス平均という印象。
トランクスルーがセンターアームレスト部分だけというのは、ハッチバックやミニバンに慣れたユーザーには不満に感じられるかもしれない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ハイレボリューション&ハイレスポンスを示すHRの文字が与えられた改良型2.5リッターV6エンジンは、グォーンという重々しいエンジン音こそ日産そのもので、ここだけは体育会系だが、高回転でも衰えない吹け上がりのなめらかさ、レスポンスの鋭さは、量産V6ではハイレベルにある。3.5リッターでは気になった発進の唐突感は、絶対的なトルクが小さいのであまり気にならない。でも踏み込めば1.5トンを越えるボディを軽快に加速させる。これでじゅうぶん。
ただATが5段というのは、このエンジンを前にすると不満。変速時の回転ラグが大きく、小気味よさに欠ける。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地はそんなに硬くはない。硬さを実感するのは強固なボディだけであり、サスペンションはしっとりストロークして、路面からのショックをじんわり吸収してくれる。荒れた路面ではもうすこしなやかさが欲しいと思うこともあるが、おおむね快適だ。
ステアリングはかなり重めで、直進安定性はすぐれているが、コーナーの進入では曲がりたがらない印象を持ってしまう。
しかし一度ノーズが向きを変えてしまえば、操り手が思い描いたとおりのラインを抜けてくれる。4WASの異次元のグリップ力はないが、ステアリングフィールやコーナリングマナーの自然さ、素直さではこちらが断然上。グリップレベルは高く、2.5リッターのパワーとトルクに対しては完全に勝っているので、安心してペースを上げられる。
(写真=菊池貴之)
テストデータ
報告者:森口将之
テスト日:2007年1月26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:6161km
タイヤ:(前)225/55R17(後)同じ(いずれもトーヨー PROXES R34)
オプション装備:アクティブAFS(3万1500円)/ETC(3万1500円)/カーウイングス対応ナビゲーションシステム(HDD)+バックビュー・サイドブラインドモニター(29万8200円)/BOSEサウンドシステム(12万5750円)/カーテン&サイドエアバッグ(8万4000円)/クリムゾンレッド(特別塗装色)(3万1500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:421.8km
使用燃料:62.08リッター
参考燃費:6.79km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。 -
第970回:クルマの背中に浮かぶ文字たち――空いた字間が語るもの
2026.7.16マッキナ あらモーダ!アナタは自動車のボディー背面に施されたメーカー/ブランドのロゴについて考えたことがあるだろうか? 字間を詰めたり、広げたり、時代によって変わるそのトレンドと、その背景にあるメーカーの思惑を、自動車史にも精通する大矢アキオが語る。


































