トヨタ・オーリス180G(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・オーリス180G(FF/CVT) 2007.01.26 試乗記 ……247万9050円総合評価……★★★
「カローラ・ランクス/アレックス」の後継モデルとなる5ドアハッチバックモデル「オーリス」に試乗。先代同様、世界戦略車となる新型の走りとは。ライバル車に引けを取らないオーリスらしさはあるのか。
ライバル車のレベルは高い
ヨーロッパのCセグメントで本格的な戦いに挑むべく、「カローラ」との関係性を断ち切って新たに生み出された「オーリス」。スタイリングは存在感があるし、室内空間の広さなどパッケージングもクラスのベンチマークである「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に負けていない。走りの第一印象も悪くなく、結構期待したのだが、ある程度の時間を共に過ごして冷静に評価すると、残念ながらまだゴルフのレベルではないと言わざるを得ない。
引っ掛かるのは、まずはインテリア。デザインはともかく上質感や使い勝手はこれまでの日本車レベル……というかカローラのほうが上という印象である。今時このクラスで全面カチカチのハードパッドのインストゥルメントパネルなんて、“庶民のゲタ”である「フォード」や「オペル」でも使っていない。
そして、やはり走りだ。日常域ではすべてに軽快で印象は悪くないどころか積極的に良いのだが、限界に近づくにつれて覚束なさを伝えてくるフットワークや、実用的ではあるがそれ以上ではないエンジンのフィーリングは、条件が厳しくなるほど頼りがいを感じさせるゴルフとは、やはり較べ物にならないという結論に達してしまう。
冷酷に評価すれば、ライバルは「ルノー・メガーヌ」や「マツダ・アクセラ」といったあたりになるだろう。そう考えれば光るところも数多くあり、実際に乗っていても結構悪くないなと思ったのは事実である。要するにゴルフがなければ、もっと良い評価になるだろうという話なのだが、残念ながらゴルフは確固として存在しているのだ。それを抜きにこのクラスを評価するわけにはいかない。
それにしても、あちらは既にモデルライフも後半なのだが…。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2006年10月23日に発売された「オーリス」。「カローラ」の5ドアハッチとして2001年1月にデビューした「カローラ・ランクス/アレックス」後継となる5ドアハッチバックモデル。先代同様、日欧で販売される世界戦略車という位置付けで、彼の地でも07年春にリリース予定。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=4220×1760×1515-1530mmとひとまわり拡大。ホイールベース=2600mmは変わらない。
エンジンは、お馴染みの1.5リッターに加え、新型「カローラ」にも搭載される1.8リッター「2ZR-FE型」を採用。トランスミッションは全車CVT、FFと4WDが用意される。
(グレード概要)
「150X」と「180G」の2グレードに、装備が充実した“Mパッケージ”(1.5リッターモデルのみ)とスポーティ仕様の“Sパッケージ“が用意される。
テスト車の1.8リッターモデルには、マルチインフォメーションディスプレイやオプティトロンメーター、アッパーベント、さらにシフターを前後してマニュアル感覚で操れる「7速スポーツシーケンシャルシフトマチック」が標準装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
「フライングバットレス」と呼ばれる特徴的なセンターコンソール形状は確かに斬新だし成形クオリティも高いのだが、全面ハードパッドのインストゥルメントパネルとシルバー加飾の組み合わせは決して高級には見せてくれない。機能の面から見ても、CVTのセレクターレバーはステアリングホイールに近づき扱いやすいが、逆にパーキングブレーキレバーはボタンが押しにくかったり、あるいは小物入れの数が足りなかったりと、トータルで見ると奇をてらい過ぎという印象。デザインはオーソドックスでよいから、もっと上質感のあるものではいけないのだろうか。
装備には大きな不満はないが、オプションのナビシステムは操作ボタンがもう少し大きいとより扱いやすいだろう。また空調パネルの温度調整ボタンがなぜか助手席側にあるのは解せないところ。おそらく左ハンドル車と兼用なのだろうが、オーリスは一体どこの国のクルマだったっけ?
(前席)……★★★★
シートは座面クッションにたっぷりとした厚みがあり座り心地は良好。肩まわりまですっぽりと包み込んでくれるサポート感の良さも好印象に繋がっている。着座位置はかなり高めだが、それでも丸められたノーズの先端は見えない。一方、斜め前方の視界には三角窓の存在が効いており、それらをトータルで見れば周囲の見切り感はまずまず良好と言って良さそうだ。
(後席)……★★★
前席を身長177cmの筆者に合わせた状態で後席に移っても、膝の前に握り拳が優にふたつは入るだけの余裕ある空間が残るなど広さは十分以上。2600mmのロングホイールベースと薄型の前席シートバックが効いている。センタートンネル部分の盛り上がりがほとんどなく、フロアがほぼ真っ平らなのも嬉しい。それにしても残念なのは中央席のヘッドレストが省かれ、シートベルトも2点式だということ。衝突安全ボディだ何だといくら説かれても、これを見ただけで安全意識の底が知れる。
(荷室)……★★★★
低いところから開くリアゲートの向こうに広がるラゲッジスペースは、後席の居住性を重視したせいでそれほど奥行きはないものの、それでもこのクラスとして不満のない容量を確保。旅行用トランクを飲み込むなどワケないことだ。後席は左右4:6分割されており、背もたれを前に倒すと連動して座面が下がってフラットに近いスペースを生み出すことができる。リアゲートが低いところから開くため、積み込みの勝手も悪くない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
新開発の1.8リッターエンジンは全域トルク型の設定。回せばそれなりに音が高まるものの、それもあくまで平均レベルであり、また低中速域では十分に滑らかなフィーリングを実現しているため、心地よく走ることができる。
その走りっぷりに大きく貢献しているのが7段シーケンシャルシフトマチックのCVT。基本的にDレンジに入れたままでも、常にエンジンの美味しいところを引き出して、非常に小気味よく走ることができる。過去のCVTに付きものだったエンジン回転だけ先走るような感覚がないというだけでなく、アクセルオフ時に必要とあらば適度にエンジンブレーキを効かせることができるといった具合で、ドライバビリティは凡百のATをはるかに上回ると言っていい。
シーケンシャルモードは奥がアップ、手前がダウンという配列こそ残念だが、CVTならではのシームレスな変速感と小刻みなステップ比のおかげで、十分使う気にさせるものだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
まず印象的なのがステアリングフィールの良さ。「クラウン」でも「ヴィッツ」でもそうだが、トヨタの電動パワーステアリングは手応え感が非常に良く、電動特有のネガをほとんど感じさせない。
フットワークは日常域ではなかなか小気味よい。ステア操作に対するノーズの反応はきわめて素直。おそらくはパワーステアリングの設定で直進時には手応えは中立位置でかなり締まった印象なのだが、それでいてそこからレーンチェンジなどで指一本分だけ切り込んだ時なども、非常に正確なレスポンスで応えてくれるから走っていて素直に楽しい。乗り心地は全体に硬めで路面の凹凸も拾いがちだが、トーションビーム式のリアサスペンションでこれだけの操縦性を持たせようとしたら、まあ仕方ないだろう。ボディの剛性感が高いため、決して不快ではない。ただしロードノイズはやはり要改善。またホイールハウス内の遮音が甘いのか、小石が跳ねた時や雨天走行時などに下回りから入る騒音のボリュームも大きめである
ワインディングロードでの振る舞いは、一般道での走りから期待したほどではなかった。ロールが大きく接地感も乱れがちで安心して踏み込めないのである。大きく破綻してしまうわけではなく、そこから粘りはするのだが、どっしり安定した印象とまでは言えないのだ。
初期制動が弱く、奥で急に効きが強まるブレーキフィールも気になった。もう少し初期からリニアに効いてくれた方がステアリングやスロットルのダイレクト感と釣り合いが取れるだろう。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2006年12月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:2171km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ
オプション装備:205/55R16タイヤ&6.5Jアルミホイール=8万6100円/VSC&TRC+前席SRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ=12万6000円/HDDナビゲーションシステム+音声ガイダンス機能付きカラーバックモニター+本革巻き3本スポークステアリングホイール&シフトノブ+ステアリングスイッチ=33万6000円/ETCユニット=1万4700円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:490.1km
使用燃料:41.2リッター
参考燃費:11.89km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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