フィアット復活物語 第8章「秋は繁殖シーズン!? パリに集まるいろいろなパンダたち」(大矢アキオ)
2006.09.30 FIAT復活物語第8章:「秋は繁殖シーズン!? パリに集まるいろいろなパンダたち」
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■3つの燃料が使える「パンダ・ムルティエコ」
9月30日から一般公開されるパリサロン。フィアット・グループのスターは、間違いなくアルファ・ロメオ8Cコンペティツィオーネ生産型であろう。
いっぽうフィアット・ブランドそのものは、パンダのバリエーションで来場者の関心をひく作戦だ。
まずはコンセプトカー「ムルティエコ」である。厚化粧したパンダにあらず。このクルマのミソは中身にある。3つの燃料が使えるのである。
フィアットは従来からムルティプラと(継続販売されている)旧プントに、メタン/ガソリン両方で走れる仕様を揃えている。通常は経済的なメタンを燃料として走り、近くにスタンドがない時など必要に応じてガソリンに切り替えられるものだ。ちなみにイタリアは、欧州屈指のメタン車普及国である。
ムルティエコはそれに加えて、サトウキビなどを原料にしたバイオエタノールも使えるようにしたものである。バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどに含まれる糖質を使用したもの。燃料高騰を機会に、欧州各国で導入が検討されている。
二酸化炭素や窒素酸化物の排出量も従来のガソリンに比べて格段に少ない。フランスは来年から国内500のスタンドで、1リッター0.8ユーロ(120円)で発売することを決めた。
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■メタンでも走れる「パンダパンダ」
ムルティエコが使用するのはE85といわれる、エタノール85%にガソリン15%を混合したバイオエタノールである。
実は、フィアットのバイオエタノール車の実績は、昨日今日に始まったものではない。というのは、フィアットは1973年にブラジルに工場進出を果たし、早くから同国の国家政策にしたがってバイオエタノール車をラインナップに加えてきたからだ。
このムルティエコは現在のところコンセプトカーに留まるが、いっぽうで近日市販するメタン/ガソリン併用仕様「パンダパンダ」も用意した。
強固な4×4仕様のフロアパンを拝借して、メタン用タンク2本を搭載したものだ。メタンだけで、300km以上の航続距離を可能にしている。
イタリアでは、ときおりメタンやLPG車の購入奨励金が国や市によって出る。パンダパンダは、「メタン車は欲しいけど、ムルティプラは大きすぎるし、従来型パンダはちょっとカッコが」という向きにウケるに違いない。
■「良い子、悪い子、普通の子」完成
なにやらエコな話が続いたが、「イタ車は、小さいボディにブン回せるモトーレよゥ」という、今どきラスト・サムライのような?エンスーもフィアットは見放さない。
そのために用意されたのが、「パンダ100HP」である。グランデプントなどに搭載されている1.4リッター16バルブエンジンを搭載、チューンしたものだ。トランスミッションは、パンダシリーズでは唯一の手動6段が与えられる。
最大トルクは13.4kgm/4250rpmで、最高速185km/h、0−100km/h加速9.5秒を謳う。それでいてリッター15.3km(市街地・高速複合)という好燃費も自慢だ。
外装では新デザインの15インチアルミホイールが装着されるほか、専用バンパー&スポイラー、クロームマフラーなども奢られる。インテリアも、クロームでアクセントを加えたブラックで統一されている。
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かくもこの秋、パンダは繁殖を遂げた。80年代の萩本欽一による人気番組ではないが、良い子(エコ系)、悪い子(100HP)、普通の子(既存モデル)が揃ったことになる。
惜しいのはネーミングである。馬力数をベタに名前にしてしまうのはまだいいが、ふたつ燃料が使えるからパンダ×2で「パンダパンダ」ときたもんだ。
まあ、「マセラーティ・クアトロポルテ」だって、イタリア人にとっては単なる「マセラーティ4ドア」、テストコース名にちなんだ「フェラーリ599GTBフィオラーノ」だって、トヨタに「東富士」という車種があるようなものである。
大事なのは、やはり名前よりもクルマそのものなのですよ。
(文=大矢アキオ-Akio Lorenzo OYA/写真=FIAT/2006年9月)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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