トヨタ・クラウンマジェスタ Aタイプ(FR/6AT)【試乗速報(前編)】
レクサスとは違う高級車の方向性(前編) 2006.08.01 試乗記 トヨタ・クラウンマジェスタ Aタイプ(FR/6AT) ……635万2500円 レクサスブランドの誕生により「トップオブトヨタ」を冠することになった「クラウンマジェスタ」が、2006年7月にマイナーチェンジ。若干の内外装変更程度にとどめた、保守的な内容だった。従来より引き継ぐ、変わらない魅力を探る。
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LSを買わない人までも
「マジェスタ」とは何なのか。このクルマを語るときには、根元的な疑問から出発しなければならない。
簡単にいえば、「クラウン」シリーズ中でも法人より個人ユーザーを対象にした高級V8モデルとなる。ちょっと前なら「アリスト」という、同じような個人ユーザー向けがあったが、これは「レクサスGS」へと切り替わった。よりスポーティで若いユーザー向け、そして何よりもレクサスマークをつけることによって、従来のトヨタとは違った世界をめざしたわけだ。
マジェスタのほうはより保守的というか、従来のクラウンの個人ユーザー層の嗜好を重視した豪華快適仕様のクルマである。場合によっては、これまでの「セルシオ」のユーザーも引き受けることになったから、モデルによってはリアシート優先に改められた。
ともかく、トヨタ高級車のマーケティング戦略は、アレクサンダー大王の歩兵布陣のごとく緻密かつ強力である。現在のセルシオオーナーが、新しい「レクサスLS」(かなり価格が高くなるといわれる)まで要らないとなったら、その人たちの受け皿にまでなるように計画されているという。
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守りに入ろうとする60代へ
なんだかクラウンシリーズからいつの間にか暖簾分けしてもらって独立したかのようなこのマジェスタ、今ではクラウンと呼ばれるクルマ全体の約1/4に達するし、狙い通り個人ユーザーは約半分だという。つまりトヨタ戦略の中では、自分の人生、まあ80点ぐらいでうまく来たなと満足して、そろそろ守りに入ろうとする60代ぐらいのお父さんが標的なのだろう。
同じ60代で人生、多少は先が見えてきたような感じがあっても、仕事の種類ゆえか本来の性格のためか、どうしても守りには入れないリポーターにとって、このマジェスタは頭では理解ができても、決して親近感を抱いてきたようなモデルではなかった。
でも今回、マイナーチェンジを機会に久しぶりに接したら、好き嫌いはともかくとして、「まあ、本当にようできとるワ」と感心せざるを得なかった。
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強化された日本的テイスト
周知のように「レクサスGS430」とマジェスタは、実質上姉妹車である。ホイールベース、前後のトレッドは(タイヤの幅をのぞけば)全く同じ、つまり共通のプラットフォームを持つ。エンジンも共通の3UZ-FEなる4.3リッターのV8、出力/トルクはむろん、6段ATのプログラムも変わらない。
変わっているのはマジェスタのほうがやや長く、一方でやや幅が狭いということだが、実はここにこの2車の性格の違いが象徴されている。GSより145mmく、25mmだけ狭く、40mm高いという数字だけ見るなら、大した違いではない。でもこれに意味がある。つまり端的に言えばマジェスタは徹底的にドメスティック・デザイン、GSはインターナショナル・テイストということで、それが性格の根本的相違を表している。
GSユーザーはマジェスタの日本的高級車然とした佇まいは遠慮するだろうし、マジェスタを選ぶ人はGSのソリッドなデザイン表現は冷たくてなじめないというのだろう。(後編へつづく)
(文=大川悠/写真=高橋信宏/2006年8月)
・トヨタ・クラウンマジェスタ Aタイプ(FR/6AT)(後編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018446.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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