トヨタ・クラウンマジェスタAタイプ “Lパッケージ”(FR/8AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・クラウンマジェスタAタイプ “Lパッケージ”(FR/8AT) 2009.06.26 試乗記 ……726万4750円総合評価……★★★★
5代目に進化して高級車としてさらに成長をとげた「クラウンマジェスタ」。パワートレイン、室内空間、走りにはまったく不満はないが、ひとつ気になるところといえば……。
高級車ならシートにもこだわりを
トヨタは「クラウン」を作らせると本当にうまい。新型「マジェスタ」に乗ってそれを再確認した。100km/h以下での快適性や静粛性にターゲットを絞った設計思想にブレはなく、コンセプトの合焦度はトヨタ車でダントツといえる。その世界観は欧州のプレミアムブランドの対極といえるけれど、ここまで明確な個性を突きつけられると、海外のライバルと比較して優劣をつけようという気にすらならない。天晴れである。
しかも新型は、高級車としての資質が成長してもいる。従来はロイヤルサルーンなどと共通だったホイールベースを75mm延長したおかげで、後席まわりが広くなったのはもちろん、プロポーションは伸びやかになり、乗り心地には落ち着きがプラスされている。もともとソフトなクルマが好きな自分にとって、このクラスではかなりお気に入りの1台になりかけた。
でも完全なお気に入りにならなかったのは、シートがイマイチだからである。事実上国内専用車(今後は中国でも売るようだが)とはいえ、1時間で腰に疲労を覚えるというのは、それ以外のデキがいいだけに残念。日本の風土習慣に根ざした高級車という立ち位置はわかるけれど、畳文化の悪い部分が出てしまったような気がする。せめてイスだけは西洋を見習って開発してほしかった。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「クラウンマジェスタ」は、トヨタが手がける高級セダン。伝統的高級車である「クラウン」シリーズの“さらに上”として、1991年にデビューした。
のちに「セルシオ」がレクサスブランドに移行したことで、(主に公用車となる「センチュリー」を除いて)名実ともにトヨタブランドのフラッグシップセダンとなる。
最新モデルは5代目にあたる。開発のベースは現行型の13代目「クラウン」シリーズで、ホイールベースを延長するなどして得られた広く豪華な室内空間や静粛性がセリングポイント。いっぽうで国内専用車らしく、全長を5m未満とするなど日本での取り回しにも配慮される。
パワートレインは「レクサスLS」ゆずりの4.6リッターV8+8段AT(4WDモデルは従来型の4.3リッターV8+6段AT)で、足回りはエアサスペンションが全車標準。さらに、操作系を統合制御してオーバー&アンダーステアに対応する「VDIM」など、現行型クラウンで培った高度なコンピューター処理技術もその走りを支える。
安全性能も自慢で、全10個のエアバッグやアクティブヘッドレストは全てのグレードで標準装備。ミリ波レーダー方式のプリクラッシュセーフティシステムも選べる。
(グレード概要)
ラインナップは大きく分けて、3種類のFRモデル(「Aタイプ」「Cタイプ」「Gタイプ」)に4WD「i-Four」を加えた、計4種。なかでも最上級の「Gタイプ」の“Fパッケージ”は、2人掛けのリアシートにオットマン機能が備わるなど、パッセンジャーズファンな特別仕様となっている。
試乗車はエントリーグレード「Aタイプ」の“Lパッケージ”。FRの最廉価グレードながら、本革シートと電動サンルーフ、アクティブステアリング統合制御付きVDIMなどの上級装備を追加したモデルである。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インパネやドアトリムの造形はロイヤルサルーンに似る。トリムの仕上げも同レベルだが、ウッドパネルの面積に差をつけ、しかも本木目を使うことで差別化を図っている。とくにステアリングやシフトノブはニスなどを塗らず、ざらっとした肌合いを生かした仕立てで、新鮮な感触。試乗車は廉価グレードだが、このクラスのセダンに求められる装備はすべて標準でついてくる。しかも左右どちらからでも開閉可能なセンターコンソールボックス、どこから風が出ているのか判別できないオートエアコンなど、クラウンらしいおもてなしにあふれている。
(前席)……★★
Aタイプの表皮はファブリック張りだけれど、“Lパッケージ”は本革シートが採用される。昔からのクラウンユーザーはレザーよりもむしろファブリックを好むかもしれない。サイズや厚みはたっぷりしており、サポート性も十分で、硬すぎない着座感を含め、腰を下ろした瞬間は好印象だった。ところが1時間もドライブすると、腰がだるくなってきた。自動車のシートは本来、座面と背もたれがまったく違う構造になっているのだが、マジェスタの場合は背もたれも座面のような感触であり、張りが完全に不足していた。
(後席)……★★
ホイールベース延長のおかげで、身長170cmの自分なら楽に足が組めるほどの広さを持つ。リクライニング可能なシートはふっかりした座り心地で、座面の高さや角度も適切に思えた。ところがこちらも前席同様、いやそれ以上に背もたれの張りがなく、むしろ凹面になっていて、猫背を強いられてしまう。乗り心地は上下左右の揺れが前席より多く、ロードノイズも少しだけ耳に届くが、このイスの前ではさしたる問題ではない。高速道路ではサービスエリアごとに休憩を取り、クルマから降りて伸びをしたくなる代物だった。
(荷室)……★★★★
全長をほとんど変えずにホイールベースを伸ばした結果、リアオーバーハングは旧型より削られたが、奥行きには不満がない。それ以上に印象的なのは幅で、絞り込みがほとんどないリアエンドをいっぱいに使っている。横長の空間が無意識のうちにゴルフバッグを思い浮かべる、クラウンらしいスペースである。トランクリッドの開口幅も大きい。リッドはイージークローザーのみ装備される。パワートランクリッドはオプション。上級グレードにはドアにもイージークローザーが追加される。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
4.6リッターV8と8段ATという、「レクサスLS460」から譲り受けたパワートレインは、このうえなく静かで滑らかな加速をもたらす。とくに静粛性は、排気音はほとんど出さず、緻密なエンジン音だけをかすかに届けてくるので、LS460よりも上に感じられた。アクセルペダルを踏み込めばストレスなく高回転まで吹け上がり、強烈なダッシュを披露するのだが、それよりもこのきめ細かいクルージングに浸っていたくなる。Dレンジ100km/hを1600rpmあたりでこなす8段ATは当然燃費にも寄与しており、エコランを心掛けたわけではないのに、10・15モードに近いリッター9.1kmをマークすることができた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地をひとことで表せば「とろけそう」である。でも常にふわーんと揺れ続けているわけではなく、抑えるところは抑えており、フラット感は高い。シートがよければ最上の乗り心地を持つ1台に数えられたはずだ。ハンドリングも悪くない。ソフトなサスペンションとロングホイールベースのために、操舵に対する反応は遅れ気味ではあるが、グリップは安定しており、前後のバランスもとれている。前後に長い車体ゆえ挙動はおっとりしているけれど、車格にふさわしい身のこなしだと思う。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2009年5月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年式
テスト車の走行距離:1987km
タイヤ:(前)235/50R17(後)同じ
オプション装備:プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール+インテリジェントパーキングアシスト+クリアランスソナー&サイドモニター(23万1000円)/パワートランクリッド(9万4500円)/トヨタプレミアムサウンドシステム(8万9250円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:373.4km
使用燃料:40.77リッター
参考燃費:9.16km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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