トヨタ・ラッシュX (4WD/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ラッシュX (4WD/4AT) 2006.04.20 試乗記 ……223万9650円 総合評価……★★★ ライトクロカンとしてのポテンシャルを秘めた「トヨタ・ラッシュ」。CMのとおり見晴らしは抜群、車内も広い。ではその弱点というと……。
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こう見えて実用性重視
この冬はどういうわけか雪国の取材が多かった。当然、クルマで現地を走り回ったが、ちょうど雪が多い時期だったため、街なかでも道路は圧雪の状態で、その脇には雪の壁が高くそびえ立っていた。おかげで道幅は狭く、場所によりすれ違いが難しいこともしばしばだった。
こういった環境では、ボディサイズ、とくに幅があまり広くないクルマが扱いやすい。さらに、最低地上高が高かったり、4WDだったりすればなおうれしい。そんな要求を満たしてくれるのが「ラッシュ」である。
ラッシュは、そのソフトなイメージとは裏腹にとても骨太。たとえば、搭載する4WDはこのクラスでは稀なセンターデフ付きの常時四輪を駆動するタイプで、機械式デフロックを備える本格的なもの。都会の街なかを走るには過剰と思える装備だが、雪国という厳しい状況下で使うことを考えると十分納得がいく。こう見えてラッシュは実用性重視のコンパクトSUVなのである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2006年1月デビュー、トヨタとダイハツが共同開発した小型ライトクロカン。1997年に登場した「ダイハツ・テリオス」、1999年からはOEM「トヨタ・キャミ」としてリリースされたモデルの後継で、主たる開発と生産はダイハツが担当。「トヨタ・ラッシュ」「ダイハツ・ビーゴ」と中身同じ・バッジ違いで販売される。
「ビルトインラダーフレーム式モノコックボディ」なるモノコック構造のボディは、全長4メートル弱、ホイールベースは広めの2580mmで、全体的に先代テリオス/キャミからひとまわり拡大。高いアイポイントとワイドな視界がセリングポイントとなる。
エンジンは「トヨタbB」(やはりダイハツ生産車)にも載る「3SZ-VE型」の1.5リッター直4DOHC(109ps、14.4kgm)のみ。4WDシステムは生活ヨンク以上のレベルで、メカニカルセンターデフロックの付いたフルタイム4WDは、発進加速性能や高速安定性に加え悪路走破性も優れ、ぬかるみなどにはまった場合はインパネスイッチで前後輪を直結状態とし抜け出しやすくできるといった芸当も持つ。
(グレード概要)
ラッシュのラインナップはベーシックな「X」と上級「G」の2グレード構成。それぞれに4WDと2WD、4ATと5MTが用意されるが、MTモデルを選ぶと4WDだけに限られる。機能については、両グレードとも4WDでのみVSC(車両安定制御)&TRC(トラクション・コントロール)やリアLSD(リミテッド・スリップ・デフ)がオプションで付けられる。
テスト車の「X」は、スチールホイールやマニュアルエアコン&ダイヤル式ヒーターコントロールパネルなど、「G」と比べ若干質素なアイテムがあてがわれる。前席SRSエアバッグはX、Gともに標準装備だが、前席SRSサイドエアバッグ&前後席SRSカーテンシールドエアバッグはいずれでもオプション設定(9万2400円)となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
外観同様、若々しい雰囲気が漂うインストゥルメントパネル。センタークラスターやメーターまわり、そして、ドアグリップに配されたシルバーのメタル調パネルが精悍なイメージを盛り上げている。イグニッションONで、速度計や回転計のスケールに赤いライトが灯るのも特徴だが、かといってとくに印象的というほどのものではない。
テスト車には、4WDのATモデルのみにVSC&TRCとセットオプションとなる「ヒルスタートアシストコントロール&DAC(ダウンヒルアシストコントロール)制御」が装着されていた。残念ながらその機能を試すチャンスはなかったが、このクラスでダウンヒルアシストが付くクルマは珍しいだけに、オフロード性能を重視するユーザーには貴重な存在といえるだろう。
(前席)……★★★★
「見晴らしのいいコンパクト」というキャッチフレーズどおり、運転席からの眺めは群を抜いている。そもそも最低地上高が200mmという高めのフロアにアップライトな姿勢で座るのだから、アイポイントはかなり高め。乗用車ベースのミニバンを上回り、「レンジローバースポーツ」並みの高さを誇るのだ。おかげで街なかでは先のクルマの動きが把握しやすいため、早め早めの判断が下せるのがいい。
ただ、フロアが高いので、そのぶん乗り降りが多少不便なのが玉にキズだ。
(後席)……★★★
全長3995mmとコンパクトなわりに、2580mmという長めのホイールベースを確保したおかげで、後席のレッグルームは余裕十分。前席同様、アップライトな姿勢で座らせるため、膝と前席との間には拳ふたつぶん以上の空間が残り、前席の下には爪先が入るので窮屈な姿勢を強いられることもない。天井も高く、身長168cmの私なら頭上にも拳ふたつぶんのスペースが確保される。後席からの眺めも良好。シートそのものはクッション、シートバックともにやや平板な印象だった。
(荷室)……★★★
ラッシュのバックドアにはカバー付きのスペアタイヤが装着されている。“いまどき?”という感じは拭えないが、後方視界を妨げないのがせめてもの救いだ。
当然、バックドアは横開きということになるが、開けるとそこには奥行き70cmほどの、まあ期待どおりのスペースが広がっている。リアシートは6:4の分割可倒式で、シートバックを倒したり、あるいはシートクッションごと格納することができる。格納すればフルフラットなフロアが現れるのはうれしいところだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
ラッシュにはフルタイム4WDと後輪駆動というふたつの駆動方式が用意され、前者は4ATと5MT、後者は4ATが搭載されるが、エンジンは最高出力109ps/6000rpm、最大トルク14.4kgm/4400rpmの1.5リッター直列4気筒DOHC「3SZ-VE」1種類のみのラインナップである。
このエンジン、アイドリングからノイズや振動が気になり、走り出すとその印象はさらに強まる。とくに加速中は回転数によらず耳障りな音がキャビンに溢れかえる。
動力性能は発進でもたつく感じはなく、3000rpmあたりまでは必要十分なトルクを発揮するが、そこを超えて4000rpmあたりまでのトルクがやや不足気味。ちょっと加速したい場合でも一段下のギアにお世話になる必要がある。
もうひとまわりトルクに余裕があるエンジンを搭載したら、このクルマの印象は大きく変わるかも……。エンジンで損をしているのは明らかである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
後輪駆動モデルにはサマータイヤが装着されるが、この4WDモデルにはM+S(マッド&スノー)のオールシーズンタイヤが付く。もちろんオンロード重視のオールシーズンだから、タイヤのアタリに硬さはなく、乗り心地は十分快適だ。
一方、コーナーや高速のレーンチェンジではロールが目立ち、高速のフラット感もいまひとつ。目地段差を越える際のショックも遮断しきれない印象である。しかし、一般道を走るかぎりはフワフワした印象はなく、電動パワーステアリングの感触にも違和感はない。街乗り中心なら不満のない味付けといえるだろう。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年3月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:1901km
タイヤ:(前) 215/65R16 98S(後)同じ(いずれも、プリヂストンDUELER H/T687)
オプション装備:G-BOOK ALPHA対応HDDナビゲーションシステム(26万2500円)/前席SRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ(9万2400円)/VSC&TRC+ヒルスタートアシストコントロール&ダウンヒルアシストコントロール(9万9750円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:141.3km
使用燃料:14.3リッター
参考燃費:9.9km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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