アルファ・ロメオ・アルファ159 2.2 JTS(FF/6MT)【試乗記】
「血中アルファ度」は薄くない 2006.03.13 試乗記 アルファ・ロメオ・アルファ159 2.2 JTS(FF/6MT) ……427.0万円 「アルファ・ロメオ」のスポーティサルーンが、先代モデルから数字が3つ増えて「159」になった。名前だけでなく図体も相当大きくなったが、まぎれもないアルファの血を受け継ぐモデルに仕上がっていた。GMとのハネムーンの産物
乗り込む寸前に、随分大きくなってしまったものだ、とまず感じた。「156」の後継であるはずのこのクルマ、ホイールベースは2705ミリ、全長は4690ミリと長く、幅に至っては1830ミリと「Eクラス」や「5シリーズ」に近い。
よく考えたらそれも仕方がなかった。このモデル、約5年間しか続かなかったアルファ/フィアットとGMとのハネムーンの産物なのである。つまりベースはイプシロン・アーキテクチュア。「オペル・オメガ」で導入されて以来、「サーブ9-3」、「キャデラックBLS」など、GMが世界で使っている中型前輪駆動用プラットフォームを、アルファが翻訳したものだからだ。
こんなに大きなボディということに加え、左ハンドルはまだしも、最初の輸入版は6MTだけだから、「ああ面倒くさい」という気分になる。でもその「面倒くささ」は、数分もするうちに「走る喜び」に変わった。これはいつもアルファで体験する気持の変化だが、このGM時代のモデルでも変わらなかった。やはり紛れもないドライバーズカーだった。
イタリア的おもてなし
2.2リッターのJTS4気筒エンジンは、オペルにも使われているアルミブロック・ユニットをもとに、アルファ流に改変したもの。全域トルクに溢れているが、上でもそれなりに活気がある。そのためか現代のクルマとしては、かなりローギアードな設定にして、回す喜びを与えようとしているし、それには充分に応えてくれる。
でも進化したのは乗りごこちで、従来の156よりもはるかに奥深く、しかもしっとりした乗り味を出すようになった。ステアリングフィールもとてもいい。そして大きくなったにもかかわらず、ボディは一段としっかりした。
インテリアも、懸命になってアルファであることを主張する。速度計と回転計の間にあるインフォメーションパネル部は、ドアが開いた瞬間に真っ赤なアルファ・エンブレムとして輝いてドライバーを迎える。そして深いシートに落ち着けば、目前にフロントのヘッドランプのモチーフを生かした3眼メーターと、3つの空調パネルが並ぶ。メーターの一つが油温計というのがおかしかった。現代のエンジンで、油温が急変するようでは困るけれど、イタリア的なおもてなしだと思えばいい。
大きく、妙に落ち着いてしまったようで、一見血中アルファ度が薄まってしまったクルマに思える。でもじっくり観察し直すと、そうではないのだ。GMの中でもひときわ完成度が高いイプシロンを巧みに使いつつ、アルファならではの気合いを入れ、イタリアンフレーバーを大事にミックスしたという点で、それなりに存在意義は大きい。
(文=大川悠/写真=高橋信宏/2006年3月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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