三菱アウトランダーG 5人乗り(4WD/CVT)/G 7人乗り(4WD/CVT)【短評(前編)】
“振れ過ぎ”は許されない(前編) 2005.10.26 試乗記 三菱アウトランダーG 5人乗り(4WD/CVT)/G 7人乗り(4WD/CVT) ……266万7000円/306万6000円 三菱久々のブランニューモデルとなるSUV「アウトランダー」。「ホンダCR-V」「トヨタRAV4」のモデルチェンジが噂される中、先行デビューのこのクルマが持つ光る部分は?新奇性に欠けるか……
全長×全幅は4640×1800mm――こんなところからも、いかにもグローバルマーケットを狙ったであろう事がうかがえる、“新生ミツビシ”第一弾のSUVがこのモデル。「プラットフォームもエンジンもトランスミッションも、すべてが新作!」と開発陣が胸を張る、三菱久々のこのニューモデルは、実際に日本デビューの後に欧米、さらにはその他幅広い地域での発売が予定されている世界戦略車だ。
“新感覚の本格オフロードSUV”がコンセプトという「アウトランダー」のスタイリングは、「スマートさとスポーティ性を凝縮したフォルム」がテーマとの事。が、率直なところ僕の目にはそれは、「このタイミングで登場のSUVとしては、ちょっとばかり新奇性に欠けるかな……」とも映ってしまうものでもあった。
もっとも、そうはいってももはや“後が無い”(!)三菱発のモデルとしては、それもやむ無しと解釈の必要があるのかも知れない。同社には、特に不振の続くアメリカでの事業成績をこのクルマによって何としても改善しなければならないという命題があるからだ。冒険心を抑えた言わば“安全パイ”的なこのモデルのルックスというのは、そのまま「アメリカ市場のど真ん中を狙ったもの」とも受け取れるという事。最重要マーケットであるアメリカで堅実に数を稼ぐ必要のある同社にとって、たとえばいきなり「日産ムラーノ」のような、いかにも好みの分かれそうなスタイリングのモデルをリリースする事は、やはりリスクが大きすぎるという判断が成立したはずだ。
囲まれ感が強いインテリア
一方、インテリアのデザインコンセプトも基本的にはエクステリアのそれと共通という。「従来のSUVには無いスポーティさの中に、力強さと機能性を盛り込み、それを端正で緻密なデザインでまとめ上げる」というのがそのテーマだ。
確かに、ダッシュボード周りやドアトリムなどを始め、このクルマのインテリア各部のデザインには「オフローダーに付き物の無骨感を敢えて徹底的に排除したかった」といった雰囲気が漂う。実際、2眼式のメーターやアーム状デザインのセンターコンソールなどはSUV風味を打破するスポーティさを演じるために、「モーターサイクルのイメージを追ったもの」だそうだ。
そうした一方で、正直なところそこには「いつかどこかで見た感じ……」という印象が付きまとうのも事実。少なくとも、あまり“跳んだデザイン”にトライをしなかったのは、エクステリア同様やはり「少しでも幅広いユーザー層から共感を得たい」という思いがあったからではないだろうか。
キャビン空間は大人4人までならばそれ相応のゆとりが感じられるもの。ただし、ベルトラインが高めなので視界の広がりはさほどではなく、SUVの中では比較的”囲まれ感”の強い雰囲気の持ち主だ。ちなみに7人乗り車のサードシートは膝を抱えての“体育座り”でさえ窮屈。あくまで緊急用の域を脱しない代物だ。
(後編につづく)
(文=河村康彦/写真=高橋信宏/2005年10月)
・三菱アウトランダーG 5人乗り(4WD/CVT)/G 7人乗り(4WD/CVT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017392.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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