スズキ・スイフトスポーツ(FF/4AT)/(FF/5MT)【試乗記】
スポーツモデルは派手好み 2005.09.21 試乗記 スズキ・スイフトスポーツ(FF/4AT)/(FF/5MT) ……161万7000円/156万4500円 「スズキ・スイフト」に待望のスポーツモデル、「スイフトスポーツ」が追加された。1.6リッターエンジンを積み、迫力を増したスタイリングを持つモデルに試乗した。光り輝く展示車
試乗会場に置かれた「スイフトスポーツ」の展示車は、文字通り光り輝いていた。「チャンピオンイエロー」と名付けられた外装色はJWRCで活躍するマシンと同じもので、ちょっと蛍光っぽくてやたらに鮮やかな色調なのだ。街なかで乗ったら、さぞ目立つことだろう。ぜひ乗ってみたいと思ったが、これは12月に発売予定のセットオプション(レカロシート、ディスチャージヘッドランプなど)を装着した展示用のクルマで、試乗に用意されていたのは赤と白のモデルだけなのだった。
しかし、外装色が地味でも、安心してはいけない。中をのぞくと、目に飛び込んでくるのはくっきりとした赤と黒のコントラストなのだ。基調はブラックだがシートの座面と背もたれが赤のメッシュになっている。ステアリングホイールにも赤のステッチが施されていて、ちょっと気恥ずかしい。レッド&ブラックはスポーティイメージを強調する際の常道であるわけだけれど、この内装しか選べないというのは、さりげなく乗りたいという主義の人にとっては残念なことかもしれない。
2004年にモデルチェンジされたスイフトは自体が、新たにプラットフォームを開発したという意欲作で、ハンガリー、インド、中国でも同時期に製造を開始したグローバルカーなのだった。搭載されるエンジンは1.3リッターと1.5リッターの2種で絶対的な速さはないものの、そもそもがスポーティに仕立てられたクルマなのだ。非力ではあっても、ワインディングロードでは十分に楽しめた。そのモデルのスポーティバージョンなのだから、大きな期待を持って試乗会に臨んだのである。
重視したのは「バランス」
スイフトスポーツに搭載されるのは、125psの1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンである。スイフト1.5XSの1.5リッターエンジンが110psだったから、15psのアップということになる。排気量の拡大が6.4%なのに対して、13.6%もの出力向上を果たしているのだ。圧縮比を9.5から11.1に高め、吸排気系にも専用チューンを施すことで、高回転型のエンジンに仕上げている。
高出力化に応じてホイールは1インチアップの15インチを採用し、タイヤは185/60から195/50に換えられた。ハイグリップタイヤに対応するために、足まわりも大きく見直されている。エンジニアの方によると、最も重視したのは「バランス」だという。タイヤのグリップにサスペンションが負けてしまうと、コーナリングで腰砕けになってしまうのだ。また、操縦安定性と回頭性を両立させるという課題のために、トー変化を抑えるチューニングを行っているそうだ。グローバルカーだけに開発の舞台となったのはヨーロッパで、アウトバーンから石畳までさまざまな路面で走り込みが重ねられた。
ノーマルモデルに対して、スタイリングも相当に変更されている。フロントマスクは上下のグリルが一体となって強調され、流行りのアグレッシブな表情を与えられた。リアにまわると、バンパー下部がブラックのメッシュとされた中にデュアルエグゾーストパイプが迫力を強調している。また、ルーフエンドスポイラーが装備され、フロント、サイドも空力を考慮した形状となっている。
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エンジンの存在感が圧倒的
セットオプションのレカロシートは装着されていなかったが、専用スポーツシートも十分にサポート性の高いものだった。赤いステッチで縁取られた本革巻きステアリングホイールはグリップが太く、握ってしっかり感がある。はじめに乗ったのは、4段ATのモデルである。1.3、1.5のATモデルに試乗したことがあるが、スイフトスポーツはちょっとアクセルを踏み込んだだけでもエンジンの存在感が圧倒的に違う。回転を上げるにつれて低く豪快な排気音が盛り上がり、息の長い加速が続く。山道ではノーマルモデルはややもどかしい気持ちになる場面があったが、スイフトスポーツはATでも不満を覚えることはない。
2レンジと3レンジを使えばかなりスポーティな走りが楽しめるし、Dレンジにしてハンドリングに集中するのもいい。なにしろどっしりとして何も起こりそうにない安定ぶりだから、安心してコーナーの出口でアクセルを開けることができる。ただ、乗り心地は相応に硬く、少々ゴツゴツした突き上げがある。
MTモデルは、やはり小排気量のコンパクトカーならではのファンがあった。まだ当たりが出ていないのかシフトフィールは渋めだったが、レブリミットまで回してシフトアップしていくことで味わえるダイレクト感はとても気持ちがいい。125psというのは1トンをわずかに超えるにすぎないクルマを走らせるにはむしろ必要以上なくらいで、公道で楽しむにはちょうどいいパワーなのだ。
リアシートは6:4分割式のフォールディングだし、買い物グルマにも使える実用性も持っている。日常の使い勝手を損なってまでスポーティにしているわけではないから、普段の足からスポーツ走行までオールマイティに使えるクルマである。欧州車然としたスタイリングは、万人に好まれそうだ。本当にいいクルマなので、広い層に向けてお薦めしたいと思う。ただし、派手な内装色に抵抗がなければ、という条件付きで。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2005年9月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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