ホンダ・ステップワゴンG Lパッケージ(FF/4AT)【試乗記】
大事な性能を持っている 2005.09.18 試乗記 ホンダ・ステップワゴンG Lパッケージ(FF/4AT) ……264万1800円 低いボディと低い床、陽光を採る天窓やフローリングフロアなど、ホンダらしい“尖り”とクルマらしからぬ新鮮なオプション装備をもつ「ステップワゴン」。ミニバンとして見たとき、3代目ステップワゴンは、大事な性能を持っているという。受け継がれるインパクト
それまでの常識を覆す、鮮烈で若い感性が漲ったクルマというホンダ車に対する世間のイメージがまだ残っているとするならば、それはこのステップワゴンにだろう。思えば初代は、高い実用性をそのまま表したカタチがとても新鮮だったものだが、この3世代目もインパクトは負けていない。
一番の驚きは、ギリギリまでの低床設計が可能にした低い全高だ。ホンダにとっては珍しいことではないが、それまで築き上げてきた自らのアイデンティティを打ち壊すようなこの変貌ぶりは、しかしキチンとした理由がある。要するに、重心を下げて走りの基本的な資質を高めるためなのだが、目を見張るのは、単に全高を低くするだけでなく、その分フロア高も下げることで、室内高は逆に先代以上を実現したということだ。
さらに、低くなったフロアには、フローリング仕様なんてオプションも用意されている。傷付きやすさや耐久性の低さ、滑りやすさを考えて本物のウッドは使っていないものの、ポップな色合いの生地が用意されたシートともどもインテリアにこだわる今どきの感性にはベストマッチ。これがクルマのインテリアの殻を破る画期的なモノであることは間違いない。
数値以上の“低さ感”
これらが相まってステップワゴンは、見て、乗って実に個性的だ。運転席の着座位置は、実はそんなに下がってはいないのだが、天地にドーンと開けたフロントスクリーンや、ワイド感を強調したインパネのおかげで数値以上に低く感じられる。そしていざ走り出すと、低重心化の恩恵は想像以上で、ステアリングの反応は小気味よく、4名乗車だと乗り心地もちょうどいい。きっと基本設定もこのあたりなのだろう。適度な荷重がかかるおかげで、心地よいフラット感がもたらされている。この操縦感覚だけでも、ステアリングを握る人にとっては大満足のミニバンと言えそうだ。
ただし試乗車の2リッターエンジンは、スムーズではあるけれど4人乗車では、ちょっと線が細いというか、ホンダ車のイメージ通り、回さないと前に進んでくれない。せめて4段ATでなく、2.4リッターに組み合わされるCVTが欲しいところである。ただし現状でも、振動や騒音のレベルは極小。この面ではライバルにハッキリ差をつけている。
内装も含めての“広さ感”
乗り降りしやすい低いステップと、分厚いクッションのシートで迎えてくれる2列目は、ステップワゴンにとって特等席だ。実際、ふんわりとした掛け心地はとても安楽。段差を超える時などに華奢な印象はあるものの、乗り心地も悪くない。ただし、前席シートバックのボリューム感が大きく、またその向こうに垣間見えるフロントウィンドウ越しの景色が今ひとつ開けていないこともあって、開放感は最高とまでは言えない。2列目に座る人のことを考えると、不思議な和テイストのトップライトルーフと、フローリングフロアを含む明るめの内装色選びは必須と言えそうだ。
3列目も大きな座面、シートスライド可能で足元スペースも十分なこと、肩まわりや頭上の余裕など美点は多い。けれどやはりクウォーターウインドウが小さめなせいか、狭くはないのに狭さ感はあるのがもったいない。また、乗り込む時には2列目シートを跳ね上げることになるのだが、これを一回のレバー操作で行えるのはいいとして、その勢いが急なのは気になった。女性なら爪を折りかねないのでは? 子育て中のママだからといって爪が短いとは限らない今だからして。3列目までラゲッジとして使う時のシートの左右への跳ね上げに大きな力が要るのも、これまた若干配慮を欠く点である。
“何となく楽しそう”
運転していて楽しいということはクルマとしては大事なポイントだし、そのシャシーの資質の良さは緊急回避性能の高さに繋がると考えても評価したいが、肝心な2列目以降の心地よさや使い勝手には、あとちょっとの何かが足りない。しかし、ステップワゴンはそこを乗り降りしやすい低いフロアや分厚いクッション、あるいはフローリングフロアやトップライトルーフといったアレコレの工夫でよくカバーしている。そうそう、先代の最大の弱点だった右側スライドドアも、ようやく備わった。
向いていると思うのは、ファミリーカーとしてよりも、たまに友達で集まって大騒ぎしながら遊びに出かけるためのクルマとしての使い方だ。これらの工夫を肴に、静かな車内で皆で楽しんでいれば、3列目でも閉塞感などないはず。やはりステップワゴンは、ミニバンのなかでは断トツの鮮烈で若い感性が漲ったクルマということか。“何となく楽しそう”と感じさせるのは、ミニバンにとっては大事な性能である。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2005年9月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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