ポルシェ・カイエンS(6AT)vs BMW X5 4.6is(6AT)【短評(前編)】
高級SUV対決(前編) 2003.07.20 試乗記 ポルシェ・カイエンS(6AT)vs BMW X5 4.6is(6AT)……955.0/1070.0万円
北米市場で「ドル箱カテゴリー」となっているSUV。大トリよろしく、ポルシェがついに「カイエン」を投入。BMWは、スポーティSUV「X5」に4.6リッターV8を載せて、迎撃に努める。自動車ジャーナリストの笹目二朗が、両者を比較試乗した!
重量級SUVの登場
「ポルシェ・カイエン」と「BMW X5」。このような高性能SUVを、気持ちよく性能発揮させられる場所などあるのだろうか?
実際に乗ってみるまでは疑問だらけだったが、いざテストしてみると、一般路上のアシとしても、箱根を走ってみても、実用域での快適さだけでなく、「プラス&alpha」というか「可能性を垣間見る楽しみ」があった。それはスポーツカーに接するときにも似た、高揚感を確かに自覚できる種類のものである。
X5の最上級モデル「4.6is」が登場したとき、何より驚いたのは2260kgもある車両重量だった。ヘヴィデューティなつくりであることは判るが、自重の大きさは時として不利に働く。雪道など滑りやすい路面では「車体は低い方へ流れる」という自然の法則は無視できない。路面キャンバーのきつい場面での直進性など、4WDとはいえ苦手な状況もある。
たとえば、ロードクリアランスを上げたワゴン「ボルボXC70」のウェイトは1700kgである。軽い4WDの走破性の高さを考えると、重量級SUVの登場に「何故?」という疑問が残った。そこにカイエンが登場した。カイエンは、NA版「S」が2245kg、「ターボ」が2355kg(いずれもカタログ値)と、負けず劣らず、重い。
トルク配分の問題
「重さが有利に働く場面はどんなときだろうか」と考えた。
乗り心地。これはバネ上の重量が大きいと、そのまま居座ろうとする「位置エネルギー」が大きく、慣性がつくと路面の凸凹に対してもそのままフラットに進もうとして、結果としては良好な乗り心地を生む。
次に、船など重量物を牽引する時、“重さ”は発進を容易にする。蒸気機関車の重さと同じく、駆動力を発揮できるからだ。それから特に下り坂などで、後ろから牽引物に煽られることを抑止する。これらは記述された文字を読んでもわからないかもしれないが、船やキャンピングカーなどをクルマで引っ張ったことのある体験者ならば、理解していただけるだろう。
とすると、“重さ”を肯定しなければならない場合もある。
4WDのトルク配分については、カイエンが「前:後=38:62」、X5も同じく「前:後=38:62」と、どちらも後輪配分の大きいトルクスプリットを持つ。もちろんいずれも荷重変化により変動するが、ベースを固定配分する常道として、どちらもプラネタリーギアによるセンターデフを備える。
これは発進時の荷重移動により、後輪配分を大きくした方がトラクションを得るのに有利ということで、単独走行を想定した操縦安定性を云々する以前の問題として、まずは有効な駆動力発揮を優先させた結果だろう。
一日の長
まず「BMW X5 4.6is」に試乗した。4.6リッターV8(347ps、49.0kgm)を搭載した仕様で、重さを感じさせない、スッと出る“発進性のよさ”に感心する。X5には登場時に乗って以来の御無沙汰だが、いろいろ細かな部分が改良されており、とにかくスム−ズな走行性に感銘を受けた。
5段ATは、「7シリ−ズ」の6段ATよりむしろスム−ズだ。1速から2速へ上がる際の回転差がすくなく、高速道路でちょっとした負荷でも上がり下がりする“シフトの煩わしさ”もない。
高級SUVにとっては絶対的な性能数値よりも−−それだってけっしてスペックからして遅いはずもないが−−それ以上にスム−ズな走行こそ求められる。続けて乗ったカイエンも、たとえばV8エンジンなどは、BMWより静粛で滑らかに感じたものの、トランスミッションなどを含めた駆動系全体でみると、X5に一日の長が認められた。
ちょっとハナシは逸れるが、「スムーズな運転」という視点から両者をながめると、両足ブレーキ(左足でもブレーキを踏む)を使うヒトに、ポルシェのSUVはあまりオススメできない。カイエンは左足ブレ−キに理解がなく、アクセルとブレ−キを両方同時に踏んだ直後は、エンジンがスト−ルしたように吹けなくなるし、思い出したように不意に回転を上げたりする。だから現状では、右足だけできちんと踏み替えた方が無難だ。ヒ−ル&トウのような、AとBを同時に踏むことは勧められない。
一方、X5にはそうした兆候はなく、両足を使いながらスム−ズに運転できる。(後編へつづく)
(文=笹目二朗/写真=峰 昌宏/2003年7月)
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笹目 二朗
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