ボルボS60R(5AT)/V70R(5AT)【試乗速報】
目立たないのが洗練だ 2004.12.04 試乗記 ボルボS60R(5AT)/V70R(5AT) ……701.4万円/748.4万円 2003年に復活した「R」モデルが、再び新たな装いを得て登場した。「ボルボ最強」のハイパフォーマンスモデルに、『NAVI』編集委員の鈴木真人が乗った。
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アツい走りの限定モデル
「R」はレーシングではなく、リファインメント、すなわち洗練を意味する。
この説明に、ボルボらしさが表れている気がする。もちろん、今さらレーシングというのも気がひけるかな、という理由もあるのだろうけれど、「安全性」を金科玉条とするボルボには速さだけを追求するよりも全体として無理なく高性能を実現するほうがふさわしい。イメージカラーも、ありがちな赤ではなくて、ブルーが採用される。
「R」モデルのそもそもの始まりは、1995年の「850 T-5 R」にさかのぼる。黄色のボディが鮮烈な印象を残すモデルだった。そして、2001年の東京モーターショーに参考出品された「PCC(パフォーマンス・コンセプト・カー)」を土台として、2003年に発表されたのが「S60R/V70R」だった。
限定7000台のなかから日本には「S60R」が250台、「V70R」が800台上陸したのだが、希望者全員には行き渡らないほどの人気だったらしい。
つい「ノンターボのベーシックバージョンこそが最もボルボらしい」などと口走ってしまうのだが、実はボルボオーナーの中には「アツい走りへの希求」を密かにふつふつと沸き立たせている人々が結構いるのだ。
今回もリミテッドモデルとしての発売だが、限定の方法が異なっている。S60Rは2005年3月末までの期間限定、V70Rは700台の台数限定となる。
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1秒間に約500回の制御
Rモデルの概要は、「S」と「V」でほとんど同一である。300psの2.5リッターハイプレッシャーターボ付きエンジンにギアトロニック付き5段ATが組み合わされ、電子制御多板クラッチで四輪にトルクを配分する。「FOUR-C(Continuously Controlled Chassis Concept)」テクノロジーと呼ばれるアクティブパフォーマンスシャシーは、ボディの縦横の動きやロール状態をセンシングして1秒間に約500回の頻度で可変ダンパーを制御する。
2004年モデルからの変更点には、最大加給圧が1.0barから1.1barに引き上げられたこと、CPUの性能が向上してよりきめ細かい制御が可能になったことなどがある。
また、ボディ同色モールディングの採用、トンネルコンソールの形状変更など、「S60/V70」シリーズ全体の変更点は当然盛り込まれている。
試乗会が行われたのは鹿児島で、まずはS60Rで隼人道路を走る。300psというのは目を見張るような数字ではないが、車影の少ない高速道路を気分よく飛ばすことができる。加速は力強いのだが、そのフィールは決して獰猛なものではない。通常の「T-5」モデルとは明らかに音色の違うエグゾーストノートを控えめに聞かせながら、滑らかに速度を上げていく。
血気盛んな風土なのか、地味な某国産セダンに戦いを挑まれた。ハイパフォーマンスモデルであることを示す指標はそれほど明確には表されていないので、与しやすしと思われたのかもしれない。もちろん、無駄に張り合ったりしないのが大人の態度というものだ。
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「アドバンスモード」が使える!
ワインディングロードの指宿スカイラインに入り、かつて六甲山の「血気盛んな若者」だったK氏に運転を代わってもらう。存分に「R」の実力を試したあとのK氏の言葉は、「何をやっても大丈夫」というものだった。
アンダーが出れば勝手に修正するし、コーナー途中でアクセルを戻しても何事もなくラインをトレースしていく。腕自慢の乱暴者より、飛ばしたいけど安全に、という慎重派に向けたクルマらしい。
何よりも意外だったのは、乗り心地だった。「R」のFOUR-Cシステムはノーマルモデルの2段階に対し、3段階のモードが選べるようになっている。コンフォート、スポーツ、アドバンストスポーツの3つなのだが、04モデルではアドバンストモードはとても一般道で使えるような代物ではなかった。ロードコンタクトだけを求めた仕様なので、路面の変化がそのまま腰にきたのだ。
しかし、やたらにバンピーな指宿スカイラインでも、このモデルではガマンできないほどの突き上げは感じなかった。ボルボなのだから、こうでなければいけない。
「V70」に乗っても、ほとんど感想は変わらなかった。山道では多少リアが遅れてついてくるような気もしたが、ワゴンに乗っていることなど、すぐに忘れてしまう。ハイパフォーマンスワゴンといっても、「アウディRS6アバント」などとは相当に性格が違っていて、道路上で実力を見せつけてやろう、などという気はあまり起こらない。
あまりにおとなしい外観なので、コアなボルボファンの中には「せっかくだからもう少しまわりにアピールしたい」と思う人もいるだろう。しかし、運転席に座った時にブルーの専用色に輝くメーターパネルを見て、秘めた力を自分だけが知っていることを愉しむ、という態度がこのクルマには似合うように思える。
(文=NAVI鈴木真人/写真=荒川正幸/2004年12月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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