ジャガーXJ6 3.0(6AT)【ブリーフテスト】
ジャガーXJ6 3.0(6AT) 2004.09.10 試乗記 ……849.0万円 総合評価……★★★★ ジャガーのフラッグシップ「XJシリーズ」に追加された、3リッターV6を積む「XJ6 3.0」。自動車ジャーナリストの金子浩久は、アルミボディとコンパクトなエンジンの恩恵を感じたものの……。
|
敵は身内にあり?
アルミモノコックボディを採用した軽さを武器に、優れたハンドリングと乗り心地で、「メルセデスベンツSクラス」や「BMW 7シリーズ」といったライバルとの差別化を図る「ジャガーXJシリーズ」。その末弟が「XJ6 3.0」だ。兄貴たちがみなV8を積むところ、XJ6のパワーソースは3リッターV6。装備や内装の違いもわずかで、17インチ(兄貴たちは18インチ以上)タイヤを採用する以外、シャシーの違いはない。
XJ6の価値は、つまるところ、エンジンと価格の違いをどう考えるかによって変わるだろう。XJ6の849.0万円に対し、「XJ8 3.5」は895.0万円。あるいは、同じ排気量の「Sタイプ3.0 V6」の690.0万円と比べる人がいるかもしれない。
結論をいうと、XJ6は、500cc大きい排気量を持つライバル「メルセデスベンツS350」「BMW 735i」に対して、ハンドリングと乗り心地のレベルの高さにおいては優位に立つ、と思った。一方、V8を積むXJとの価格差は内容に比して大きくはない、と感じた。また、今回、同じタイミングでマイナーチェンジを果たしたSタイプ3.0 V6がさらに上質になり、一番のライバルが身内から出現したことも判明した。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1968年のデビュー以来、ジャガーの主力として君臨し続ける高級サルーン。2003年4月から導入された新型は、従来のスチールから、軽量なアルミモノコックボディに変更されたことが最大の特徴である。うねりのあるボンネット、低く長いボディといった、従来までのスタイリングの特徴を継承しつつ、高い居住性、走行性能や低燃費など、現代のクルマに求められる要素が詰め込まれた。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=5090(+65)×1900(+100)×1450(+90)mm、ホイールベースは3035(+165)mm(カッコ内は旧型との比較)。旧型よりひとまわり以上大きいが、重量を40%低減、剛性は60%高められ、走行性能と燃費はもちろん、快適性や衝突安全性も向上したという。
エンジンは、V8が3.5リッター(267ps/6250rpm、34.6kgm/4200rpm)、4.2リッター(304ps/6000rpm、43.0kgm/4100rpm)、スーパーチャージャー付き4.2リッター(406ps/6100rpm、56.4kgm/3500rpm)の3種類。2004年4月、3リッターV6を積む「XJ6」が追加された。トランスミッションは、すべてZF製の6段AT。
サスペンションは、前後ともダブルウィッシュボーン式。全車、荷重変化に応じてバネレートを制御するエアサスペンションを装着する。さらに、「CATS」(コンピューター・アクティブ・テクノロジー・サスペンション)と呼ばれる、電子制御アダプティブダンピングシステムを採用。優れた操縦性と快適性を実現したという。快適装備が充実しているのはいわずもがな。シートは16ウェイ電動パワーシート(前席)、メモリー機能がステアリングホイールとペダル位置を記憶し、スイッチひとつで適切な運転姿勢がとれる。「Sタイプ」に採用された「エレクトロニック・パーキングブレーキ」や、DVDナビゲーションシステムなどは、もちろん標準装備だ。安全装備は、車両安定性を高めるDSCやトラクションコントロールをはじめ、前席フロント&サイドエアバッグ、前後カーテンエアバッグを装着。さらに、乗員の有無や体重、ステアリングホイールとの位置関係などをモニターし、衝突安全システムを制御する「A.R.T.S.」(アダプティブ・レストレイント・テクノロジー・システム)が、全車に備わる。
(グレード概要)
伝統の名を冠する「XJ6 3.0」は、「Sタイプ3.0 V6」と同じ3リッターV6(243ps/6800rpm、30.6kgm/4500rpm)を積む、XJシリーズのボトムレンジ。軽量なアルミボディを活かし、「ラージプレミアムサルーンではクラス最軽量」(プレスリリース)を誇る。
シリーズ中、もっとも細い235/55R17インチタイヤを履くが、外観は他グレードとほぼ同じ。キセノンヘッドランプや後席シートヒーターなど、一部装備が簡略化されるとはいえ、そこは高級サルーン。標準でも装備は豊富で、「CATS」など上級グレードから多くを踏襲する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
古典的で落ち着いた意匠、切り立ったインパネまわりの造形はジャガー独特のもの。XJだけでなくSタイプにも共通するが、細かい部分は明らかにXJの方が手間がかかっている。たとえば、空気吹き出し口の風量調整ダイヤルやオーディオのボリュームノブなどには滑り止め加工が施され、回した際の抵抗感なども吟味されていた。エンジン回転、速度、燃料残量、水温の各メーターも、インテリア全体の意匠と調和を図りつつ、あらゆる条件下で見やすいデザインがなされている。これ見よがしの派手さはないが、じっくり丁寧な仕上げだ。それは、オーナーが買った直後ではなく、しばらく付き合っているうちに、「いいものを買ったなぁ」と徐々に気付いていく類のものだろう。そこがSタイプとの大きな違いだ。
(前席)……★★★★
現行XJの室内空間は、旧型のそれよりも明らかに広大になった。顕著に感じるのが前席。特に頭上空間の拡大ぶりが著しく、シートも、小振りだった旧型よりもゆったりしている。穿った見方をすれば、ようやくライバル並みになったわけだが……。一方、かつてのタイトさが、ジャガーサルーン特有で好ましいものだったことが思い出された。
(後席)……★★★
頭上と膝まわりの空間は十分に確保されている。こちらも、旧型とは大違い。乗車定員は5名だが、リアシートは左右2名分を優先したつくりで、中間部分は幅、クッションの快適性も落ちる。
(荷室)……★★
モノコックボディの恩恵で旧型より約27%広くなり、VDA方式で470リッターの収納容量を誇るとはいえ、XJの荷室は頼りない。全長5メートルを超えるクルマの荷室としては、天地寸法が浅く、形状が使いやすいとはいえない。なぜなら、荷室の内壁が奥からリアバンパーにかけてすぼまっているからだ。したがって、開口部が狭く、こちらの期待ほど大きなものは入らないだろう。この傾向はXJだけのことではなく、Sタイプ、Xタイプにも見られる。
いずれも、ジャガー独特の流れるような造形に起因するのは明らかだ。数値としても形状としても、ライバルと同等以上の荷室を求めることが、はじめから酷なのかもしれない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ジャガー独自の“J”ゲートを踏襲した6段ATは、スムーズな変速、適切な変速タイミングなど、実に申し分ないでき。“J”ゲートの操作感も良好で、“D”-“5”-“4”-“3”-“2”を、手首の捻りだけで小気味よくマニュアルシフトできる。トルクコンバーターを用いたATなので、昨今流行りのいわゆる“2ペダルMT”にはない滑らかさと、シフトアップ時の“タメ”が備わり、ジャガーの高級サルーンにまことにふさわしい。
だが、3リッターV6「VB」型エンジンは、やや力不足ではないか。高速道路や交通の流れのいい道では痛痒ないが、上り坂の途中からのダッシュなどではトルクの細さを感じてしまう。
XJ6用「VB」ユニットが、SタイプV6 3.0と同じなことは周知の通り。排気量やボア×ストローク、圧縮比、最高出力とその発生回転数、最大トルクまで同じ数値なのに、なぜか最大トルク発生回転数だけがSタイプ用「FB」ユニットよりも400回転高いのだ。その理由はわからないが、車両重量が90kgも重いSタイプの方が、(ほぼ)同じエンジンを積んだXJよりも、不思議なことにわずかに加速が鋭く感じた。それほど、Sタイプ3.0 V6の“洗練”は際立っている。
このXJ6 3.0の上にはXJ8 3.5が控えているが、500ccと2気筒の違いは小さくない。XJ6の849.0万円と、XJ8 3.5の895.0万円の価格差は46.0万円。つまり、849.0万円まで出す余裕があるならば、46.0万円追加することはそれほど難しくないわけで、XJ8 3.5に心惹かれる人がいてもおかしくないということだ。逆に、XJ6を選ぶ人は、伝統ある名前や、小さいエンジンの軽快感を積極的に選ぶ“通”だともいえよう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
アルミボディの軽さを活かして、クイックなハンドリングと快適な乗り心地を高いレベルで両立している。5メートルを超える大型ボディが2まわり以上小さく感じられるほど、手の内で操ることができるのが、ライバルたちとの大きな違いだ。
ただ、そのアドバンテージも適度なエンジンパワーが伴って、初めて享受できるような気がする。XJ6が非常に洗練されたハンドリングと乗り心地を有していることは間違いないが、どうしても、XJ8の存在が気になった。
(写真=清水健太/2004年9月)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2004年4月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)235/55ZR17(後)同じ(いずれもピレリ P6000 POWERGY)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(3):山岳路(4)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

-
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.19 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
NEW
アウディA5 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】
2026.1.21試乗記「アウディA5」の2リッターディーゼルモデルが登場。ただでさえトルクフルなエンジンに高度な制御を自慢とするマイルドハイブリッドが組み合わされたリッチなパワートレインを搭載している。260km余りをドライブした印象をリポートする。 -
NEW
働くクルマは長生きだ! 50年以上続く車名がゴロゴロある商用車の世界
2026.1.21デイリーコラム乗用車ではトヨタの「クラウン」「カローラ」、日産の「スカイライン」などが長く続く車名として知られるが、実は商用車の世界にはこれらと同等のご長寿モデルが数多く存在している。生涯現役時代の今にふさわしい働くクルマの世界を見てみよう。 -
NEW
第99回:「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」(後編) ―対極的な2台の造形からスポーツカーの教義を考える―
2026.1.21カーデザイン曼荼羅コンポーネントを共用するのに、その形は全然違う! トヨタの次世代スーパースポーツ「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」のデザインを、有識者と比較検証。突き抜けて武骨なGR GTか、優雅で知的なLFAか、あなたならどちらを選ぶ? -
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。






























