ホンダ・エディックス20X(5AT)【試乗記】
3×2の理想と現実 2004.07.27 試乗記 ホンダ・エディックス20X(5AT) ……255万1500円 3列が一般的なミニバンのシートを、3席2列に“席替え”した「ホンダ・エディックス」。センターシート中心のコミュニケーション、走りとユーティリティを実現したというニューモデルはどうなのか? 自動車ジャーナリストの生方聡が2リッターモデル「20X」に乗った。「6名様ごあんな〜い」
3席×2列シートで6人乗り。しかも、センターシートはそれぞれ前後スライドして、いままでにないシートレイアウトを楽しめるのが「ホンダ・エディックス」だ。
「シビック」と同じ2680mmのホイールベースと4285mmの全長を持つエディックスは、全幅を100mm、全高を115mmそれぞれ膨らませ、さらに、ルーフの絞り込みを小さくすることで横3人がけを実現した。それゆえ、真正面や真後ろから見ると“四角い感じ”が目立ってしまうが、真横や斜め前から眺めると、意外にスポーティでアクティブな印象。楽しいデザインに仕上がっている。
3×2の“V字レイアウト”
なんといっても興味の的は「3×2」(スリーバイツー)のシートである。しかも、ただ横に3つ席を並べるのではなく、中央を後ろへスライドさせることで“V字レイアウト”を可能にしたのがミソだ。
そのメリットはいろいろ考えられるが、たとえば、フロントセンターを一番後ろにスライドさせれば、チャイルドシート(前向き)を装着できるので、親子のコミュニケーションが図りやすくなる。仲間5〜6人なら、フロントセンターを中心に全員が会話に参加できる。3列シートのミニバンだとなかなかそうはいかないのだ。
けれども、実際にフロントのセンターシートに陣取ってシートを後ろに下げてみると、両側席のバックレストが邪魔をして肩まわりが狭まり、肘の置き場にも困る。窮屈さは否めない。エコノミークラスで両脇を体格のいい人に囲まれた……みたいな感じだ。また、フロントセンターを一番後ろに下げた場合、リアセンターのレッグスペースはないに等しいうえ、フロントセンターのバックレストが後席の前方視界を遮るのも気になった。
一方、前2人、後ろ3人で乗車するなら、両側に比べて狭いリアセンターでも大人が普通に座ることができるのはうれしい。ヘッドレスト、3点式シートベルトも備わる。おかげで、後席に2人分のチャイルドシートと大人1人、あるいは、3人分のチャイルドシートを載せても、室内空間に無理がない。フロントセンターのバックレストを前に倒してしまえば視界も広がるから、閉所感も和らぐというものだ。
走りっぷりには満足
走りっぷりについては、2リッターエンジン+5ATを搭載する「20X」は、必要十分な動力性能と快適な乗り心地、そして、軽快とまではいかないが、安心してステアリングを握ることのできる安定した身のこなしを備えていた。
同時に試乗した、1.7リッターエンジン搭載の「17X」はやや非力な印象であるが、20X、17Xとも走るという機能について、とくに不満はなかった。
それだけに、煮詰め切れていない感がある6人乗りコンセプトが惜しい。V字レイアウト、6人乗りをウリにするエディックスだが、乗員全員を快適に運ぶなら、5人乗車が適当だろう。ちなみに、後席を畳まなくてもラゲッジスペースは広大だし、リアシートの格納も簡単。ワゴンとしての資質は十分備えているから、“6シーターミニバン”というより、“5+1のワゴン”として付き合うのが現実的だと思う。
(文=生方聡/写真=高橋信宏/2004年7月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。