トヨタ・パッソG Fパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・パッソG Fパッケージ(4AT) 2004.07.15 試乗記 ……152万6700円 総合評価……★★★ 「ダイハツ・ストーリア」の後継「ブーン」の姉妹車にして、軽自動車と「トヨタ・ヴィッツ」の間を埋める「トヨタ・パッソ」。1.3リッターの上級グレードに、『webCG』コンテンツエディターのアオキが乗った。いつかはパッソ
「プチトマトはいいから、クルマを見せてくれ」と、一部のクルマ好きは思ったであろう、「トヨタ・パッソ」のテレビCM。いまひとつ愛嬌の足りない合理的なカタチに、夢を与える広告戦略か?
ダイハツとの共同開発になるパッソまたは「ダイハツ・ブーン」。飛びすぎないスタイル、ギリギリまで隅に寄せられたタイヤ、大きく開くドア、わずかな隙間も逃がさない室内空間の活用、そして徹底したコストコンシャスと、「ヴィッツ」の弟分というより「ミラ」の兄貴分。つまりダイハツ色が強い。
テスト車の「G」は、1.3リッターを積む上級グレード。街乗りに徹するなら贅沢すぎる動力性能。軽いステアリング、最小回転半径わずか4.3m。楽々ドライブ。運転初心者はもとより、年輩の方にも優しかろう。「クラウン」「セルシオ」を卒業したら。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2004年6月7日、「ダイハツ・ストーリア」とそのOEM版「トヨタ・デュエット」の後を継ぐかたちでデビュー。トヨタとグループ企業ダイハツによる国内初の共同開発車である。バッヂ以外基本的には同じ車両で、トヨタでは「ヴィッツ」よりさらに小さいエントリーカー「パッソ」として、またダイハツでは軽よりワンランクアップした上級「ブーン」として販売する。生産はダイハツが担当。
パワーユニットは2種類。オリジンたる1リッター直3が、先代より7psパワーアップした新開発「1KR-FE型」(71ps/6000rpm、9.6kgm/3600rpm)。もう一方の1.3リッター直4「K3-VE型」(90ps/6000rpm、12.6kgm/3200rpm)のアウトプットは変わらない。どちらも連続可変バルブタイミング機構付きだ。トランスミッションは電子制御の4段AT「Super ECT」のみで、1リッターモデルには2WDに加え、フルタイム4WDも用意される。
燃費を1リッター+2WDの10・15モードで21km/リッターと、「軽乗用車に匹敵する低燃費」(プレスリリース)としたことがジマンのひとつ。加えて全車「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」も達成した。
(グレード概要)
パッソのグレード構成は、ベーシックなリッターカーの「X」、1&1.3リッターの上級「G」に大別される。Xには、装備を簡略した「Vパッケージ」、シートまわりの収納スペースなどを追加した「Fパッケージ」を、GにはFパッケージを用意する。
「G Fパッケージ」は、パッソの上級モデル。Fパッケージは、「助手席アンダーボックス」「助手席シートバックポケット」といったモノ入れを増やし、セキュリティを強化し、またリアシート組込み式ジュニアシートを装備した仕様となる。プラスとマイナスの除菌イオンで、車内を清潔に保つという「プラズマクラスター」が付くのもFパッケージのみ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
樹脂類の質感はともかく、実用第一に構成されたインパネまわり。上下2トーンに分けられる。財布、携帯電話、手帳ほか、小物を気楽に放り込めるセンターの「マルチトレイ」は文句なく便利。グローブボックス下の「ワイドフリーラック」に至る下半分のデザインに、肉厚感を与え、貧相に見せていないのが上手なところ。
ステアリングコラム上に置かれ、チルト(上下)してもステアリングホイールに隠れない速度計は、大きく見やすい。が、近すぎる、と感じた。進行方向遠方を見ていた年輩の方には、焦点の調整が難しいかもしれない。要改善。
(前席)……★★★★
1.3リッターモデルには、運転席にレバー式のハイトコントロールが付く。シートそのものは、細めの背もたれながら、微妙に湾曲したクッションが、乗員の背中をはさむように保持する。ちょっと「ポルシェ911」のような……というのはホメすぎか。
助手席のヘッドレストは、ドライバーが振り返って後方を見やすいよう、小さくなっている。本末転倒の感アリ。
(後席)……★★★
膝前、頭上とも、スペースが十分とられ、肩まわりの窮屈感もない。大きなサイドウィンドウのおかげで、開放感が高いのもいいところ。ただし、座り心地はいまひとつ。シートクッションが薄く、2段階の角度調整ができる背もたれは平板。走行中は、タイヤの動きがよくわかる、気がする。つまり、それなりの入力がある。センターシートはヘッドレストが備わらず、シートベルトも2点式となるので、実質、モノ置きである。
Fパッケージには、後席左に「組み込み式ジュニアシート」が仕組まれる。これは、座面一部の前半分を後ろに折ることでクッションの高さを稼ぎ、座高が足りない子供のシートベルトによる拘束を確保するものだ。
(荷室)……★★★
床面最大幅108cm、奥行き54cmと、ボディサイズからは妥当なラゲッジルーム。床下にはテンパータイヤが置かれる。
ただ、実際にラゲッジスペースとして頻繁に使われるのはリアシートであろう。後席はダブルフォールディングタイプの分割可倒式。背もたれを倒す前段階、つまり座面を前斜め下にスライドさせた状態を「ロングクッションモード」と名付け、フラットな荷物置きとしたのは、コロンブスのタマゴだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ストーリアからのキャリーオーバーとなる1.3リッター直4エンジンは、可変バルブタイミング機構を備え、90ps/6000rpmの最高出力と12.6kgm/3200rpmの最大トルクを発生する。トルキーで実用的。930kgのウェイトには十二分。平成17年排出ガス基準75%低減の、いわゆる4ツ星エンジンである。今回は、高速道路をブン回して走り、山岳路で再びフルスケール使ってドライブする、という苛酷な使用状況だったが、10km/リッター超の立派な実用燃費(参考値)を示した。
静粛性に関して、それほど回さない街なかドライブでは、エンジン音は気にならないが、一方、4段ATのうなり音、特に微速からの加速時の「ウィーン」というギアノイズが耳についた。吸・遮音材を、ギリギリまで削った弊害か。タイミング、ショックといった、シフト自体のクオリティは高い。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
前マクファーソンストラット、後トーションビームのコンベンショナルな足まわりをもつパッソ。総じてソフトな乗り心地。走り好きには、「ステアリングが軽すぎ」「もうすこし締まったサスペンションが欲しい」と感じられるかもしれないが、純粋な“お買い物グルマ”と見た場合、ギリギリでの限界性能より、安楽な操作系、路地も怖くない小回り性能、そしてなにより手頃な大きさがモノを言う!?
高速道路では、常に上屋がヤワヤワ揺れている感があって、ゲルマン派は「ビシッと直進せんかい!」と一言いいたくなろう。といって、直進性そのものに問題はなく、初めてステアリングホイールを握った人が不安になるほどではない。ハンドリングも乗り心地同様、フェアなもの。シャカリキに攻めなければ、アゴを出さない。
(写真=荒川正幸)
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【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2004年6月28-30日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:1984km
タイヤ:(前)155/80R13 79S/(後)同じ(いずれもFALKEN SINCERA SN-535)
オプション装備:サイドエアバッグ+カーテンエアバッグ(6万3000円)+ディスチャージヘッドランプ(4万2000円)+タコメーター(1万500円)+G-BOOK対応カードボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーションII(25万5150円)+ラジオレス(−1万9950円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(4):山岳路(1)
テスト距離:312.3km
使用燃料:29.1リッター
参考燃費:10.7km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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