ホンダ・アコードワゴン24Tスポーツパッケージ(5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・アコードワゴン24T スポーツパッケージ(5AT) 2004.02.26 試乗記 ……276.0万円 総合評価……★★★ 日本と欧州とで仕様が統一された、7代目「ホンダ・アコード」。17インチタイヤ、スポーツサスを装着したアコードワゴン「24T スポーツパッケージ」に、別冊編集部の道田宣和が乗った。たしかに、スポーツワゴン
アコードワゴンシリーズ随一のスポーツ性を謳うこのクルマ、とにかく「長い」「低い」「硬い」というのが第一印象で、それは最後まで変わらなかった。長くて低いボディについては、小型車枠を超えた4750mmの全長はもちろんのこと。どの窓よりも横長のリアクォーターウィンドウや、いざ座ってみると、想像していたよりかなり低めの着座位置がその感を助長する。すくなくとも、見た目の雰囲気はスポーツワゴンのパイオニアとして知られた、かつての「リライアント・シミターGTE」そっくりだ。
かたや「硬い」については、最近の日本車のなかでもかなりのもの。明らかな高速向け、それもアウトバーン並みのハイペースに照準を合わせたのでは? と思えるセッティングだった。そのため、身体に感じるハーシュネスが完全に消えてなくなるのは、法定速度を超えてからという過激さだ。それだけにハンドリングは優秀で、ワインディングロードを攻めると、ワゴンとは思えぬ限界の高さと洗練されたマナーを披露する。
目指したキャラクターが実にハッキリしていて、それはそれでいいのだが、いささかやりすぎの感がなくもない。その代表的な例が、低速で路面の不整に影響されてステアリングがチョロチョロする、ワンダリングの激しさだ。乗用車としては、ちょっと考えモノなのである。ラゲッジルームはたしかに広大だが、その割に後席が余裕充分とは言えないのも、やや首を傾げざるをえない。グローバルプレーヤーのアコードとしては、これだけの全長を与えられた挙げ句、単なる“2+2ワゴン”に甘んじるつもりはない、と信じたい。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アコードは2002年10月にモデルチェンジされ、1年あまりが経過した。この間、ヨーロッパでは「地元のプレミアムブランド以上」と評されるなど、内外問わず賞賛の声が高い。筆者個人としても、オプションの「HiDS」と呼ばれる、先進の高速道路運転支援システムなどには大いなる魅力を感じる。
アコードワゴンは、セダンに用意される2リッター直4を捨て、同じDOHC4気筒「i-VTEC」でも、最初から2.4リッターだけに絞られた。いわば、中級〜上級専用のシリーズだ。FF(前輪駆動)と4WDがあり、それぞれにエンジンチューンの高い「24T」と標準的な「24E」がラインナップする。テスト車の「24Tスポーツパッケージ」(FF)は、200ps/6800rpmと23.7mkg/4500rpmを発生。この値は、「24E」(FF)より40psと1.5mkgパワフルで、「24T」(4WD)と比べても10psと0.5mkg上まわる。ギアボックスは全車共通のトルコン式5AT。シフトアップ制御などが組み込まれた“考える”オートマチックだ。
(グレード概要)
前輪駆動の24Tにはグレードが3種ある。ベースモデルは249.0万円、「エクスクルーシブパッケージ」と称するラクシュリー指向は269.0万円。そしてシリーズ最大の17インチ径タイヤ/アルミホイールを履き、スポーツサスペンションで締め上げられた「スポーツパッケージ」が276.0万円である。ちなみに、同じスポーツパッケージでも、4WDはハードサスが適用されない。要するに、ことスポーツ性に関しては、今回のテスト車がシリーズでも突出しているのだ。
ほかに、このグレード独自の装備としてはラチェット式ハイトアジャスターの付いた本革/“ソフトウィーブ”(織り)混成のシートや前後のエアロフォルムバンパー、テールゲートスポイラーなどがある。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インテリアの高級感はなかなかのものだ。広報車を引き取って、ホンダ本社の地下駐車場で乗り込み、まず眼を射ったのはダークな室内(スポーツパッケージのインテリアカラーは黒に限られる)で光り輝く、指針が赤の“自発光メーター”。視認性に優れるメーターは、地上に出ても眩しいくらいである。そう思ってパネル周辺を捜してみると、トリップ計のつまみがレオスタット(照度調節)を兼ねていた。このつまみ、実はほかにも外気温を表示する機能がある。箱根では摂氏3度まで下がって凍結の危険があることを、チャイムと表示の点滅とで自動的に知らせてきた。この例で代表されるように、新型アコードの装備は豪華かつ豊富でありながら過剰な印象が排され、なかなかのバランスを見せている。
(前席)……★★★
ホンダのクルマは昔から概してフロアが低いが、それにしてもアコードワゴンは、まるでローダウンでもしたかのようだ(実際にはシリーズ他車と同一)。周囲のセダンと比べても明らかで、乗り込むには尻を落として転がり込むような姿勢が必要。だから、足の弱った年寄りを乗せる時などはハラハラさせられる。
通常ならこれだけで“ペケ”だが、逆にイイところもすくなくない。
一旦シートに収まってしまえば、ドライバーにとってはその低さこそが美点となり、スポーツカーのような一体感をより味わうべく、いつもの信条に反して高さ調節を下げてみたくなる。当然ボンネットは見えなくなるが、セダン系には稀な“ロースタンス感”は、なかなか得難いものなのだ。ハイトアジャスターやスライドの調整代の大きさもさることながら、チルト(上下)に加えてテレスコピック(前後)も調節可能なステアリングコラムは、そんなヤル気にハヤるドライバーにとって理想的なポジションを約束する。ただし、素早くセットしないと、マスの大きなステアリングホイールが調整途中で“自然落下”するという、些細な問題もあるにはあるのだが……。
(後席)……★★
いたれり尽くせりの前席に比べると、後席は凡庸のひとこと。もちろん、狭くて困るほどではないが、長大な全長とホイールベースを考慮すれば、もっともっとレッグルームに余裕があってしかるべきだ。豪華で分厚いシートも一因だろうが、上記のように、ドライバーが身勝手なスタンスを楽しんでしまうと、クッション下への足入れ性が途端に悪くなるのも事実である。
(荷室)……★★★★
このクルマのフォルムを見た時、まず真っ先に思い浮かべたのはふた昔も前、同じアコードが世に問うた意欲作「エアロデッキ」(ワゴン)だった。当時はあまりにも進んだカタチだったため商業的には充分な成功を収めなかったが、それがいまになって花開いたとも言える。すくなくともラゲッジルームのでき、という意味では。
クラス最大級を豪語するラゲッジルームは、なるほど、後席を立てたままでも畳んでも広大そのもの。VDA法による測定で、前者は576リッター、後者は921リッターもあり、最大長は大柄な男が縦に寝られる1818mmもあるのだから充分以上だ。それに、路面から僅か570mmの低さにある開口部下端がキレイに面取りされ、きわめて積み下ろししやすいのも特筆。キレイといえば、荷室の床が完全にフラットなのも、実用上はむろんのこと見ているだけでも気持ちがいい。
そのほか、リアシート背面のレバーを握るだけでクッション、ヘッドレストもろともガバッと前倒れする便利な機構や、全車標準のパワーテールゲート等々、ワゴンとしてのアイデアは実に盛り沢山である。だが、仮にそのぶんを多少削ってでも、もうすこし後席の余裕にまわすべきではなかったか。基本的には、れっきとしたミドルクラスのセダンがベースなのだから。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
さすがに「エンジンのホンダ」だけあって、実にスムーズだ。2.4リッターと大排気量の4気筒にもかかわらず、7000rpmのリミットまで淀みなく気持ちよくまわる。DBW(ドライブ・バイ・ワイア)のたまものか、スタートではアクセルペダルの踏み方いかんで、オートマチックにもかかわらず一瞬ホイールスピン。びっくりするようなダッシュと、鋭いピックアップを披露することもある。パワーも充分。特に、4000〜5000rpmからの力強さが印象的で、メーター読みの100km/hでもまだまだ余裕の5700rpmを示す2速ギアは、ワインディングロードのほとんどすべてをカバーできる万能ぶりだ。したがって、同100km/hが4150rpm、3050rpm、2100rpmにすぎない3速以上の快適さは推して知るべしである。音はミドルクラスとして特に静かでもうるさくもないが、音質そのものは飛ばすほどよくなる。
ただし、オートマチックのシフトショックは若干大きめ。キックダウンを効かせたときの、ちょうどカムを乗り越えた時のような感じがその感を助長している。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
実はこの項目、★の数をいくつにしようか大いに迷った。箱根の山道を駆け下りた時には、正確なステアリングとすくないロール量に瞠目。終始安定した挙動に、単なる乗用車以上のものを見いだし、★5つを献上したくなった。ABSにTCS(トラクションコントロール)とスキッドコントロールを加えたVSAもそれが介在しているとは思えない巧妙さで驚かせた。
ところが、街に戻ってみると、つまり日常に帰ってみると、その裏返しであるワンダリングの強さと足腰の硬さがどうしても気になる。
たとえば、前者に関してはこういう場面だ。高速ではEPS(電動パワーステアリング)が自らちゃんとセンタリング(直進位置に戻す)しているのに、低速だと一転して戻りが悪く、場合によっては切れっぱなしの状態になる。たまたま運悪くタイヤが路面の影響を受けたりすると、ステアリングが思わぬ方向に取られたりするのだ。乗った者だれもが口にしたハーシュネスの強さも、上質なモダーンカーとしては異例なほど。テスト車が1万6000kmプラスと、広報車としてはかなりの距離を後にしているせいもあるだろう。とはいえ、ボディがしっかりしている割にはカタカタ、コトコトと、意外に低級音も看取された。
要するにやりすぎなのである。もしかしたら、ほかのグレードでは事情がまったく異なるのかもしれない。ベストなアコード・ワゴンはどれなのか、改めてトライしてみたくなった。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年1月7日〜13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1万6624km
タイヤ:(前)215/45R17 87W(後)同じ(いずれも、ブリヂストン ポテンザRE050)
オプション装備:ホンダスマートカードシステム(5.0万円)/VSA(7.0万円)/音声認識DVDナビゲーションシステム(28.0万円)/プレミアムサウンドシステム(6.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(6):高速道路(3)山岳路(1)
テスト距離:707.8km
使用燃料:96.5リッター
参考燃費:7.3km/リッター

道田 宣和
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