ホンダ・アコード/アコードワゴン【試乗記】
ホンダに求められること 2002.11.06 試乗記 ホンダ・アコード/アコードワゴン 保守的にはしって、わが国の自動車市場では影が薄かったホンダ・アコード。しかし、7代目にして、かつての“バタ臭さ”が戻ってきた。webCGエグゼクティブディレクター、大川 悠がリポートする。 拡大 |
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■帰ってきたアコードの思想
よくも悪しくもホンダは変わった会社である。ミニバンやSUV、そしてむろんスポーツカーなど、非乗用車系のクルマをつくらせたら、独創的なばかりか、肩の力を抜きつつも意欲的なヒット作を送り出す。でもその一方で、まっとうなセダンをつくらせると、なんだか急にぎこちなくなって、結局、保守的な方向に行きたがる。
その好例が「アコード」である。ここ何代かのアコードは、クルマとしてのできはいいものの、何となく地味でコンサバだった。特に先代アコードなど、思い出そうと思っても形が頭にすぐ浮かばないほど、妙に地味な存在になっていた。
いま一度、アコードというクルマの歴史をふり返る必要があろう。本来ならアコードは、“日本から生まれたヨーロッパ車”ともいうべきバタ臭さが魅力だった。それゆえ、アメリカ市場でも成功した。
ところが、これがかえってアダになった。初期には「フォード・トーラス」と、そしてその後はトヨタの「カムリ」と、つい去年からはニッサンの「アルティマ」と、アメリカにおけるトップセラーの座をかけた争いに巻き込まれたのだ。
王者はどうしても受け身になる。カムリから激しい挑戦を受けた頃からアコードの保守化が始まった。次第に、日本よりアメリカを向いたクルマとしての立場がますます重要になってくる。
その課程で、先代からはアメリカ用アコードは別ボディとなり、しかも同時にヨーロッパ向けもまた違うボディとなった。ということは、日本で売られるアコードは、完全にセダンが消え入りそうなジャパニーズマーケット志向であり、それゆえに先代は、冒険が最小限に押さえられた、やけに保守的なクルマとなったわけだ。
だが、7代目の今回は、“バタ臭い日本車”あるいは“ホンダ製ヨーロッパ車”ともいうべき、最初期のアコードのイメージが多少なりともよみがえった。理由はこれまた国際戦略ゆえだ。
アメリカ版は同じプラットフォームを使いつつもうすこし大きく、デザインはもっと保守的だ。アメリカではアコードは、比較的年輩層が買う、地味だが中身の濃いセダンという位置を確保しているからである。それにアメリカにはクーペもあるから、セダンは地味でいい。
一方で、思い切ってヨーロッパ版と日本版のボディを共通にした。そしてヨーロッパでは市場が大きなワゴンとセダンという構成にした。そのためにスタイリングもダイナミック能力の味付けも、かなりヨーロッパ志向になった。それが今回の新型に魅力を与えることになった、と思う。
アコードが再び昔のコンセプトでよみがえった。新型に乗ってまず評価したかったのが、この方向転換だった。
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■完成度の高いできばえ
どちらがいい悪いではなく、偶然の一致で「マツダ・アテンザ」によく似てしまったフロントエンドと、まだ整理がつかず、どこか日本的なインテリアデザインをのぞけば、新型はかなりヨーロッパ調である。張りが強い面を大胆かつシンプルに構成し、しかもダイナミズムを表現した外観は、アルファなどのラテン系のイメージももつ。一方ワゴンは思い切ってルーフを伸ばし、全高を低く見せるサイドウィンドウグラフィックの効果によって、かつての「アコード・エアロデッキ」の再来のような、スポーティワゴンのイメージを演出する。いずれにせよ、セダン、ワゴンとも、かなり極端なウェッジシェイプが、日本車としては珍しく強いメッセージを発している。
各種のエンジンを試した結果、やはりホンダはエンジンメーカーだと改めて思った。いずれも単なる実用車のパワーユニットとしてはエモーショナルな魅力をもつし、正確に計らなかったが、燃費もよさそうだからだ。
すべて4気筒だが、その中枢をなすのが2.2から2.4にアップされたDOHC「i-VTEC」ユニットで、セダン、ワゴンともに使われる200ps(4WDは190ps)版と、ワゴンのみに搭載される160ps版がある。後者は「超-低排出ガス」の認定を受けたうえ、3000rpm近辺のトルクが多少落ち込むのを除けば、必要な力を十分にもつ。実用性が高いのみならず、高回転を積極的に好むスムーズさは、まさにホンダの世界だった。ということは、アウトプットに余裕がある200psバージョンは、非常に快適であり、下手なV6を凌ぐユニットである。
個人的に感心したのは2種の2リッターだった。ひとつはベースモデルの155ps、もう一つはトップに立つ「EURO-R」用220psである。ベースはこれで必要にして十分、しかもホンダ・ユニットならではの気持ちよさをもつ。
一方、以前の2.2からかえって小さくなっても、リッターあたり100ps超を発生するEURO-Rユニットは、6MTと相まって痛快なドライビングの世界を与える。「シビックR」や「インテグラR」の大人版そのものである。この2リッターエンジン、世界の4気筒のなかで最良の一つだろう。
Rも含めて、アコードで感心したのは快適性である。まず絶対的に静かで、これはライバルのトヨタ車を凌駕する。乗り心地も以前よりはるかにいい。ストローク感が増えて、しっとりした感覚を与える。2リッターのベースモデルは、多少ダンピングの弱さを感じさせたが、総じて剛性の高いボディとあいまって、従来よりも遙かに落ち着いたのり味を見せる。
ハンドリングも徹底した安定志向であり、めったなことでは破綻をきたさない。電動パワーステアリングは、切り始めはちょっとデッドで、多少違和感があるだろうが、ホンダのEPS(電動パワステ)はモデルを重ねるに従ってよくなっているし、燃費向上にもつながるというから、これはこれで受容すべきだろう。
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■先にやった方が偉い
新型アコードの話題が、「HiDS」と音声認識ナビを含む「テレマティック・システム」である。HiDSはシーマがまず導入した自動運転への第一歩で、フロントウィンドウに設置したC-MOSカメラを使った車線維持システムとミリ波レーダーによる車速,車間制御機構である。車線維持システムは65〜110km/hの間で230R(日本の高速道路でもっとも強いコーナー)までカメラで読みとり、クルマを車線内に走らせる。また車間も3段階の距離を選べば、前車との間隔も自動的にそれに応じて調整される。
実際に九州の道路で試したそれは、ロジックはきちんとしているから、むろん運転神経軽減につながる。ただし最高110km/hまでというのは、今の日本の高速道路では中途半端である。つまり高速車線では大抵が120+で走っているし、低速車線では車間調整が効いて、一番遅いクルマの後ろを走るしかない。この裏には、日本の道路は原則上100km/h以上出してはいけないし、メーター誤差を見込んでの110km/hまでというのが国土交通省が認可するときの条件として存在しているのだ。

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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