マツダ・アクセラスポーツ15F(4AT)【ブリーフテスト】
マツダ・アクセラスポーツ15F(4AT) 2003.12.16 試乗記 ……183.5万円 総合評価……★★★ マツダの新世代モデル第4弾として、2003年10月15日にリリースされたアクセラ/アクセラスポーツ。「コンパクトを超えたインパクト」とカタログに記される5ドアハッチはどうなのか? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが、ベーシックグレードの「15F」に乗った。![]() |
世話女房
大地に踏ん張った4つの車輪。それらを強調すべく、ボンネットにクッキリ浮き出たV字のラインと、左右から絞られたキャビンをもつアクセラスポーツ。5ドアハッチから「といううすのろ」を排除したかった?
ベーシックグレード「15F」のドアを開け、やや“廉価版”を感じさせるシートに腰をおろせば、深いひさしをもつ3連メーターがスポーティ。「ホコリが溜まらないかしらん?」なんて、所帯じみたことは考えないように。
走りはじめれば、意外やおとなしい。114psの1.5リッターは必要十分なアウトプットを生み出すけれど、アクセルペダルの操作に対するクルマの反応は緩慢で、「23S」の元気溌剌さを知る身には、すこし寂しい。
マルチリンク化されたリアサスは、都会でも“曲がり”で頑張れば、高いポテンシャルを垣間見せるが、まあ、たいていは隠しっぱなしのツメでありましょう。15Fは、多数の平均的ユーザーに数売ることで、華やかなトップモデルをボトムで支える世話女房。そう考えると、これでいいのかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年10月15日に発表されたマツダのコンパクトカー。「ファミリア」の後継にあたる。4ドアセダン「アクセラ」と、5ドアハッチバック「アクセラスポーツ」と、2種類のボディラインナップをもつ。「アテンザ(海外名Mazda6)」(2002年5月発売)、「デミオ(同Mazda2)」(2002年8月)、そして「RX-8」(2003年4月)に続く、マツダの次世代商品群の第4弾。欧州をはじめとする世界各国では「Mazda3」の名で販売される世界戦略車である。
新開発のプラットフォームは、フォードグループのボルボ「S40」や、次期フォード「フォーカス」と共有する。
エンジンでグレードが異なり、1.5リッター(114ps、14.3kgm)搭載の「15F」、2リッター(150ps、18.7kgm)の「20C」、そして2.3リッター(171ps、21.8kgm)を積む「23S」の3種類。トランスミッションは、マニュアルモード「アクティブマチック」付き4段ATが基本。5段MTの設定は、1.5リッターの最廉価モデルのみだが、2003年末頃、2.3リッターにも5段MT仕様を追加するという。駆動方式はFFのみ。
(グレード概要)
「アクセラスポーツ15F」は、5ドアハッチのベーシックグレード。足まわりが15インチの「鉄チンホイール+ホイールカバー」となり、「フロントフォグランプ」「リアルーフスポイラー」「マフラーカッター」が備わらないのが、上級グレードとの外観上の差。
インテリアは、シート地が「フラットウーブン」、ガーニッシュに「シルバー」が採用され、「ステアリングホイールのオーディオコントロールスイッチなし」「マニュアルエアコン」「2スピーカー」など、装備が簡略化される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
“東洋のアルファ”たらんとする野望が感じられるスポーティなインパネまわり。「樹脂類の質感」「組み立て精度」などは“お値段相応”だが、厳しいコストを、デザインと新意匠の素材でカバーしようとする努力が痛いほど感じられる。簡素で機能的なダイヤル、スイッチ類に好感。ことに空調関係のコントロールはわかりやすい。夜は、全体に赤いバックライトが点いて、キレイ。
(前席)……★★★
おとなしく平板な見かけのわりに、座り心地は悪くない。サイドサポートの張り出しはごく控えめだが、腰まわりの左右を、意外なほどしっかり支えてくれる。ドライバーズシートのみ、座面横のレバーを上下することで、シート全体の高さを調整することができる。マツダのワールドモデルだけあってか、大きなスライド量が印象的。
(後席)……★★★★
車検上は3名座れるリアシートだが、左右独立して前に張り出すシートクッション、2つしか用意されないヘッドレストからわかるように、実質2人用。十分な長さの座面、わずかに窪んで上半身を安定させる背もたれと、前席同様、見かけより座り心地はしっかりしている。
後ろまで延びる長いルーフの恩恵で、夏場でも、強い日差しの直撃は防げそう。ヘッドクリアランス、膝前空間とも、不満ないレベル。ただし足先は、前席取り付けステーに左右を挟まれるカタチで、フロントシートの下に入れなければならない。
(荷室)……★★
床面最大幅104cm、奥行き84cm、パーセルシェルフまでの高さは43cm。テールエンドに向かってキャビンが左右に絞られる関係で、荷室の絶対的な容量いまひとつだが、そのぶん、形状はスクエアで使いやすそう。床下に、薄い収納部あり。「フレキシブルフロアボード」と呼ばれる前後2分割されたフロアボードを使って、ラゲッジスペースを上下や前後に区分けすることができる。
リアシートの背もたれは分割可倒式。シートバックを前に倒せば、容易にラゲッジスペースを広げることが可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
可変吸気、可変バルブタイミング機構を備えたマツダ自慢のオールアルミ新世代エンジン「MZR」を搭載。あえてエンジン音を排除しないつくりで、フルスケール回すと、なかなか勇ましい。
とはいえ、「D」レンジで普通に走ると、各ギアの守備範囲が広い4段ATと組み合わされることもあり、クルマのルックスほど“躍動感溢れる走り”を披露するわけではない。むしろ、おとなしい。本気でキビキビ走りたいなら「シーケンシャルシフトを使え」ということか。これは、シフターを前に押すとギアが落ち、手前に引くとシフトアップする、BMW流を採る。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
たとえば、かつて「トヨタ・カローラII」に乗っていたヒトがアクセラスポーツに乗り換えたら、まずは乗り心地が「ゴツゴツする」と感じるだろう。
一方で、路面のインフォメーションをしっかり伝える足まわりから、ステアリングを切るとサッと向きを変えるシャープなハンドリングとあわせ、(抑えめの動力系にだいぶスポイルされているとはいえ)、マツダの目指す「はつらつとした」ドライブフィールの片鱗を感じ取ることができる。付け加えるなら、完全独立のリアサスは、このクラスではオーバークオリティといえるデキだ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年11月26-27日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2555km
タイヤ:(前)195/65R15 91H(後)同じ(いずれもブリヂストンB390)
オプション装備:Fパッケージ(オートライトコントロール/レインセンサーワイパー/撥水ガラス+ドアミラー/フロントフォグランプ/CDデッキ+4スピーカー/オーディオリモートコントロールスイッチ)/フルオートエアコン/ダークティンデッドガラス/DVDナビゲーションシステム+TVチューナー&ガラスプリントアンテナ/ディスチャージヘッドランプ(35.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:257.7km
使用燃料:25.8リッター
参考燃費:10.0km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。