マツダ・アクセラスポーツ15XD(FF/6AT)/アクセラセダン22XD Lパッケージ(FF/6AT)
いつもどこか確かに違う 2016.08.18 試乗記 「マツダ・アクセラ」がマイナーチェンジを受け、1.5リッターディーゼルエンジンを搭載する「15XD」が登場。また、さらなる人馬一体感を実現する「G-ベクタリングコントロール」が採用されるなど、その走りが一段と磨かれた。「15XD」と、2.2リッターディーゼルの「22XD」を乗り比べてみた。忘れられていなかったペダル
やはり“オルガン”にしたかったのだ。“大幅改良”された新しいアクセラの注目点がこれまで「デミオ」と「CX-3」のみに積まれていた1.5リッターディーゼルターボを積んだモデルの追加設定と、「エンジンでシャシー性能を高める」という例の「G-ベクタリングコントロール」が実際のモデルに初めて投入されたことなのは間違いない。それに比べれば小さなトピックかもしれないが、まずはマツダがこだわるドライビングポジションの話題を紹介したい。
“人馬一体”を追求するマツダはすべての基本として適切なドライビングポジションにこだわってきており、2012年の「CX-5」から始まったマツダの新世代モデルはスロットルペダルがいわゆるオルガン式に変更されているが、「アクセラハイブリッド」のみ積み残しになっていた。ご存じのようにアクセラのハイブリッドシステムはトヨタから供給されているもので、その都合でスロットルペダルだけをマツダ製に変更するのは難しかったのだが、今回、ハイブリッドモデルもめでたくオルガン式に変更された。つり下げ式ペダルがすべて悪いというわけではなく、操作に力が必要だとしてオルガン式を嫌う人もいるが、ステアリングホイールに正対した自然なポジションを設定し、また適切な操作性や疲労度を考えればオルガン式の優位は明らかだと思う。3年前の“忘れ物”をきっちり取り戻したところにマツダの執念が表れている。
ちなみに、昔有名な整体の先生に聞いた話だが、長時間どちらかの脚だけに力が加わっているような不均衡な姿勢は最も避けるべきだという。たとえばタクシーの運転手で腰痛に悩む人が多いのは、シートそのもの以上に、正対して両脚で均等に支える正しいドライビングポジションが取れないことが理由ではないかという。
テレビCMで声高に宣伝するようなことではないかもしれないが、ステアリングホイールが新しくなっていることも見逃せない。レザーそのものがよりしっとりとした感触のものに変更されているうえに、センター部(エアバッグカバー)が小径化(φ164→150)され、さらにリムの断面形状も見直されてスポークも細くなって握りやすくなっている。最近はフォルクスワーゲングループやBMWなどのステアリングも中央部分が小型化されている。メーターの見やすさだけでなく、回転マスを中心部分に集めることは当然操作感の面でも有利である。気にしない人にはまったく響かないかもしれないが、私は大いに評価したい。
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より静かに扱いやすくなったディーゼルエンジン
新たに追加された1.5リッターおよび2.2リッターディーゼルターボエンジンにはナチュラルサウンドスムーザーなるピストンピン内蔵のダイナミックダンパーが装備されたうえに、新たに「ナチュラルサウンド周波数コントロール」と称するシステムも備わった。これは、微妙に燃焼タイミングをずらすことによって、燃焼圧力波による共振を打ち消し、ノック音のピークを低減するという機構である。明らかな違いはアイドリング時のエンジン音が静かになったこと。他に音源がない静かな森の中ならいざ知らず、ごく普通のバックグラウンドノイズがある場所なら、もう掛け値なしにガソリンエンジンとの見分け、というか“聞き分け”がつかないはずだ。
さらにディーゼルエンジンには「DE精密過給制御」という技術も盛り込まれている。これはEGR(排ガス再循環システム)バルブを最適に制御することで過給圧をコントロールし、日常的な場面で比較的穏やかに加速する際に、スロットル操作に対する応答性を向上させるというものである。エミッション低減のために排気を燃焼室に戻すのがEGRだが、再循環させるとタービンに流れる排気が少なくなり(過給圧が上がらず)、思ったほどの加速感が得られずつい余計にスロットルペダルを踏み込む、という現象を解消するのが狙いだ。1.5リッター版では正直明確に体感できるというほどではなかったが、2.2リッターでは軽く加速したいと思った時のレスポンスが向上していることが分かる。
G-ベクタリングコントロールを搭載
新しいアクセラには以前技術のみを紹介したマツダの新世代車両運動制御技術の第1弾、G-ベクタリングコントロールが搭載された。今後は他モデルにも順次搭載される予定という。このシステムはステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを制御、すなわちステアリングを切るとエンジントルクを絞って前輪の接地荷重を増し、前後Gと横Gを滑らかにつなげてスムーズな挙動を実現するというもの。経験豊富なドライバーが普段自然に行っている操作を微小な領域で緻密にコントロールするものと考えてもらえばいい。
効果が明らかなのは、ハードコーナリング時ではなく、ごく普通に車線変更したり、街角を曲がったりするような場合だ。まるでステアリング系の精度が上がったかのように、狙ったポイントへスッと車のノーズが向かう、いわばピントが素早く合うという感覚である。直進時でも私たちは路面のアンジュレーションに合わせて半ば無意識にステアリングを常に修正しているものだが、その修正舵(だ)が減ることで乗員の快適性も向上するという。トルクを絞ることによる減速Gは違和感を生じさせないために最大でも0.05Gというから、注意していてもドライバーには感じ取れない。ただしそれぐらいの減速でもステアリングフィールには違いが表れる。本当かな? という向きは(実は私もそうだった)ぜひ自分で試してもらいたい。雨の日や雪道など滑りやすい一般道をある程度長く走るような場合に最も効果を実感できるはずである。
正攻法で充実
2.2リッターディーゼルターボ(175ps/42.8kgm)はアクセラにはややパワフルすぎると感じていたが、それに対して105ps(77kW)/4000rpmと27.5kgm(270Nm)/1600-2500rpmを生み出す1.5リッターユニット(「アクセラスポーツ」のみに搭載)はまさにちょうどいいあんばいだ。マツダは1.5リッターディーゼルの追加によってアクセラの販売台数の半分ほどがディーゼルになると見込んでいるという(従来は1割程度)。
乗り心地も従来型よりしなやかになっているようで、またインテリアも質感向上を狙って細かな配慮がなされている。他にも、シャッターなどのメカニカル機構によって照射範囲を大ざっぱに切り替えるのではなく、LEDの発光自体を制御するアダプティブLEDヘッドライトや、速度制限、止まれなどの重要な道路標識も表示されるようになり見やすくなったアクティブ・ドライビング・ディスプレイなど、派手ではないが実質的な装備が紹介しきれないほど数多く盛り込まれている。
強いと認められているプレーヤーは、奇策に訴える必要なく、さらにその強さを着実に磨き上げればいい。ただそれは基礎トレーニングを積んだ者だけに許されること。正攻法で誠実に改良されたアクセラはマイナーチェンジのお手本である。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
マツダ・アクセラスポーツ15XD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1795×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:27.5kgm(270Nm)/1600-2500rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92V/(後)205/60R16 92V(ブリヂストン・トランザER33)
燃費:21.6km/リッター(JC08モード)
価格:230万3640円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1993km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
マツダ・アクセラセダン22XD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4580×1795×1455mm
ホイールベース:2700mm
車重:1450kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)215/45R18 89W/(後)215/45R18 89W(ダンロップSP SPORT MAXX TT)
燃費:19.6km/リッター(JC08モード)
価格:308万8800円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1686km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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