トヨタ・プリウスGツーリングセレクション(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プリウスGツーリングセレクション(CVT) 2003.11.21 試乗記 ……292.1万円 総合評価……★★★★★ 出足好調が伝えられるトヨタの戦略モデル、2代目「プリウス」。「“普通のクルマ”と較べてほしい」と開発陣が胸をはるハイブリッドカーはどうなのか? 『webCG』のアオキ・コンテンツエディターが乗った。toward TOYOTA
「初代が出たときも話題になりましたが、新型プリウスを見に来るお客さまは真剣さが違います。“(将来の)自分のクルマ”という視点でチェックにいらっしゃいます」。取材したディーラーの、営業マンの方が言っていた。取材中も見学客(?)がチラホラと。
「輸入車の、いわゆるプレスティッジサルーンから乗り換えるヒトもいらっしゃるんですよ」
−−不景気だから?
「……そうではなくて、『ハイブリッドカーに乗りたい』という、確固たる意志がおありのようで……」
トヨタのハイブリッドカー普及作戦は、順調に進んでいるようだ。
ニュープリウスは、ボディを「大きく」「広く」しながら、燃費をアップ。堅実に進化したハイブリッドシステムもさることながら、「軽量化(140kg相当)」「良好なエアロダイナミクス(CD値=0.26)」「S-VSC(ステアリングをも操作するアクティブセイフティ機構)」などに、自動車メーカーとしての底力が見える。従来よりコンパクトにまとめられた動力系コンポーネンツは、車型の自由度アップをも可能にするはずだ。
2003年9月に登場した2代目プリウスは、デファクト・スタンダード確立を目論む大トヨタの戦略モデル。世界統一キャッチフレーズ「The power to move forward(ついに未来が動き出す)」の後に、なろうことなら「is moving toward TOYOTA(トヨタに向かって)」と付け加えたいに違いない。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
世界初の量産ハイブリッドカー「プリウス」がフルモデルチェンジを受け、2003年9月1日に2代目が発売された。新型は、北米市場での本格的な普及を目指し、ボディサイズがひとまわり大きくなった。また、ラゲッジスペースを重視したため、車型は「3ボックス」から「ハッチバック」に。
パワートレインは、1.5リッター直4エンジン(77ps)と68ps相当の出力を得る電気モーターを組み合わせ、巧妙な動力分配装置によって、駆動力を前輪(と発電機)に伝える。改良された新世代トヨタ・ハイブリッドシステム「THS-II」の恩恵で、リッター当たりのカタログ燃費はなんと「35.5km」! 効率のよさのみならず、モーター出力を上げ、2リッター車なみの動力性能を獲得したこともジマンだ。
(グレード概要)
プリウスは、ベーシックな「S」と、ちょっと贅沢な「G」に分かれる。Gは、乱れた挙動を安定させる「S−VSC」「クルーズコントロール」「スマートエントリー&スタート」を標準で装備する。Sでは「ウレタン」だったステアリングホイールが、Gでは「本革」になる違いもある。
スポーティに装いたい向きには、「S」「G」ともに「ツーリングセレクション」が用意される。タイヤサイズはひとまわり大きな「195/55」の16インチとなり、専用「ユーロチューンドサスペンション」が奢られる。また、アンダーカバー、リアスポイラーといった空力パーツが付与されるほか、ヘッドランプが「ディスチャージ式」になり、「フロントフォグランプ」が追加される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
乗り込みやすい、楕円形のステアリングホイールが特徴。ラウムに続いて、「ユニバーサルデザインコンセプトに基づく」インターフェースを採る、というインパネまわり。
そのわりに、初めてのヒトには、始動、シフト方法をレクチャーしないといけない「パワーボタン」や「エレクトロシフトマチック」はいかがなものかと思うが、慣れると、たしかにエレガント。「P」ボタンを押してギアをパーキングポジションに入れ、「パワーボタン」を押せばエンジンが切れる。指先以外を動かす「足踏み式パーキングブレーキ」が、やけに肉体的で、ワイルドに感じられるほど!?
「G」グレードは、「スマートキー」が標準装備なので、キーを携帯していれば、ドアハンドルを引くだけで解錠でき、エンジンの始動も可。車外に出るときは、やはりドアハンドルのボタンを押すだけで、施錠できる。便利。ただ、その際、確認のつもりでドアハンドルを引くと、ともすれば解錠されちゃうかもしれないので注意!「ホントに、フレンドリーなインターフェースなのかしらん?」と心配性のリポーターは感じる。
(前席)……★★★
ふんわり、あたりの柔らかい座り心地は先代ゆずり。とはいえ、なで肩のバックレスト、新しい構造の骨格と、シート自体もフルモデルチェンジを果たした。着座位置(地上高)は初代と変わらないが、ヘッドクリアランスは10mm拡大。ヘッドレストを抜いて背もたれを後ろに倒せば、リアシート座面とつなげることができる。後席で、足を伸ばしてくつろぎたいカップルや若夫婦のために。
(後席)……★★★
大人用としての使用に耐えるリアシート。長くなった全長、ホイールベースの恩恵で、前後シート間隔が65mm長くなった。一方、後ろ下がりのルーフラインのせいで、頭上空間は10mm削られた。1人ないし2人用「パーソナルカー」の色合いが濃くなったのも、北米重視ゆえ?
なお、ツーリングセレクションは硬めのアシをもつが、直接的な突き上げは、後席においてもよく抑えられる。ドライブ中でも、後席の乗員は睡眠可。
(荷室)……★★★
新型の目玉が、広くなったラゲッジルーム。先代比70リッター増しの460リッターをほこる。「荷室のフロア=デッキボード」は、手前から2段階に折れるので、積んでいる荷物の量によっては、わざわざ車外に下ろさないでも、床下の収納部にアクセスできる。搭載物を隠すトノカバーは、床下に固定する場所が用意される。分割可倒式になったリアシートを倒して、ラゲッジスペースを拡大するときなどに、空間をスッキリ使えるのがいい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
68ps相当のモーターと、最高出力77psの1.5リッター直4が、スムーズに補完しあうトヨタ・ハイブリッド・システム「THSII」。どの回転域でも、期待値プラス、やんわり背中を押される不思議なフィール。静粛性の高さも大きなポイントだ。
なお、2リッターなみの加速を実現したのはウソではないけれど、当然のことながら持久力はない。バッテリーの充電量がすくなくなると、エンジンのパワーを発電機に回して、充電し直さなければならないから。だから、長い登り坂を一気に駆け上るようなシチュエーションは、不得手だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ステアリンナックルやブレーキキャリパーにアルミを用いて、バネ下の軽量化を図ったニュープリウス。フロントはマクファーソンストラット、リアはトーションビームと、形式上はコンベンショナル。テスト車のツーリングセレクションには、「ユーロチューンドサスペンション」が奢られ、タイヤサイズは、通常の「185/65R15」から「195/55R16」にアップされる。
全体にしまった乗り心地だが、街なかでも高速でも、ハーシュネスはよく抑えられる。ハイスピードクルージングでは、フラットな姿勢で、独特の爽快感がある。
ただし、細かい“曲がり”は苦手。路面感覚が希薄なステアリングフィール、アンダーステアが強いハンドリング、ときにドライバーの予想と食い違う回生ブレーキと、峠のプリウスは、いかにも場違いだ。
(写真=峰 昌宏)
【テストデータ】
報告者:webCGアオキ
テスト日:2003年9月24-10月17日
テスト車の形態:webCG長期リポート車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:3664km
タイヤ:(前)195/55R16 86V/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot Primacy)
オプション装備:SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ(6.0万円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付EMV+インテリジェントパーキングアシスト(23.0万円)/JBLプレミアムサウンドシステム(6.1万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:2711km
使用燃料:152.4リッター
参考燃費:17.8km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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