トヨタbB 1.5Z Xバージョン FF(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタbB 1.5Z Xバージョン FF(4AT) 2003.07.11 試乗記 ……198.6万円 総合評価……★★★★万人に好かれるより
いかにも若い男の子向けという押しの強いデザインが人気の「bB」。でも、カッコだけのクルマと思ったら大間違い。コンパクトカーとして見ると実によく考えられた内容なのだ。
4mより短いコンパクトなボディにもかかわらず、後席、荷室ともに十分すぎるほどのスペースが確保される。このパッケージングには素直に感心する。また、実用的なエンジンとスムーズなオートマチックは街なかでもストレスない移動が可能だ。それで10・15モード燃費が16.0km/リッターというのだから、とくに都内などの足として使うには文句ない性能である。
39歳の私も含めて、エクステリアになじめない人もいるだろうが、そういう方には同等のパッケージングを誇る「ファンカーゴ」があるわけだから、まあ、このデザインが気に入った方はどうぞ! 万人に好かれるより、むしろ好き嫌いがあるくらいの方が、個性的でいいと思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年2月に登場した「ファンカーゴ」ベースの5ドアモデル。「トールボックスデザイン」と呼ばれるボディスタイルを採る。2001年6月11日に、リアをピックアップ風の荷台にした「オープンデッキ」がラインナップに加わったが、2003年3月に生産終了。
2003年4月にマイナーチェンジが施され、前後バンパーを大型化するとともに、アンダースポイラーを装着。また、フロントバンパーグリルがメッシュに変更された。インテリアは、センタークラスター部やステアリングホイールのデザインが変更され、カップホルダー部に照明が追加された。
(グレード概要)
グレードは、ベーシックな「S」と上級車「Z」。エンジンは、1.3と1.5リッターの2種類。いずれにも4段ATが組み合わされる。FFをベースに、1.5リッターモデルには4WDも用意される。今回試乗した「Xバージョン」は、本革巻きステアリングホイール、アルミホイール、ディスチャージヘッドランプなどが標準装備される豪華版。また、今回のマイナーチェンジで、UVカット機能付きプライバシーガラスや、電動格納式リモコンカラードドアミラーなどを装備する「S Wバージョン」が追加された。
【室内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
直線基調のインパネに丸いセンターメーターが印象的なbBの室内。運転席側、助手席側のいずれにも収納スペースが多いのがうれしい。センタークラスターは両端がシルバーで中央に幾何学パターンの表面処理が施される。このパターンのデザインがセンタークラスターだけでなく他の部分にも見られたら、全体に統一感が出て、また違った“いい雰囲気”になると思うのだが……。
(前席)……★★★
前席のベンチシートは、運転席と助手席が別々にスライドできるタイプで、アームレストを出せば独立シートに早変わり。高さ調整機能は持たないが、身長168cmの私が着座して、自然に足が曲がるドライビングポジションが取れる。シートの表面は適度に張りがあるが、硬すぎるというほどではない。セダンに比べると高めの着座ポイントと四角いボディのおかげで、車両感覚が掴みやすく、狭い道でも運転はしやすい。
(後席)……★★★
背が高く、アップライトなシートポジションのおかげで、後席のレッグスペース、ヘッドルームは十分すぎるくらい広い。シートスライドを一番前にしても足下には余裕が残るほどだ。加えて、ウィンドウが大きく、前席との間隔も大きいので、窮屈な感じは一切なし。ただ、シートバックが短めで平板な印象なので、広くても長時間乗せられるのは気が進まない。
(荷室)……★★★★
前後にスライドするリアシートを一番後ろのポジションにしても、奥行き約50cmのスペースが確保されるbBのラゲッジスペース。一番前なら約66cm、シートバックを倒してクッションを起こせば110cmまで広がるから、たいていの荷物は飲み込んでしまうはずだ。シートバックは6:4の分割可倒式を採用するが、それでいてクッションが一体式というのはやや中途半端な印象だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
今回試乗した前輪駆動モデルに搭載される1.5リッターエンジンは、最高出力109ps/6000rpm、最大トルク14.4kgm/4200rpmのスペック(4WDモデルはそれぞれ105ps、14.1kgm)。1トン強のボディに対して、このエンジンは不足のない性能。とくに街なかを走る場面では、エンジンのピックアップのよさとレスポンス、優れたオートマチックのおかげで、気持ちよく走る。高速道路でも、日本の道路状況であればとくに不満のない走りっぷりだ。4000rpm付近でエンジンや排気系の音が籠もるのが唯一気になった点。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
背が高いことや着座位置が高めなこともあって、コーナーリング時のロールは大きい方だが、ロールのスピードはさほど速くなく、姿勢も落ち着いている。必要とあらば、安心してワインディングロードを駆け抜けることができる。乗り心地もさほど硬めではないが、ふわふわした感じはなく、むしろしっかりとしている。路面によって、ロードノイズが室内で共鳴することがあったが、おおむね快適な乗り心地である。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年5月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:576km
タイヤ:(前)185/65R15 88S(後)同じ(いずれもMichelin GreenX)
オプション装備:VSC&TRC(8.0万円)/DVDボイスナビゲーション付ワイドマルチAVステーションII(CD・MD一体AM/FMマルチ電子チューナー付ラジオ・TV&6スピーカー)(27.0万円)/ハイマウントストップランプ(バルブ式プライバシー用)(0.8万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:273.7km
使用燃料:21.5リッター
参考燃費:12.7km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。

































