トヨタ・ウィッシュX Sパッケージ(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ウィッシュX Sパッケージ(FF/4AT) 2003.04.25 試乗記 ……232.4万円 総合評価……★★強さの根源
勝てば官軍、売れればOK。資本主義の王道を行く大トヨタが手がける3列シートミニバン。いわずと知れたライバル「ホンダ・ストリーム」より、しっかり2年分進歩して、やっぱり新しく見えるのが、当たり前とはいえ、さすが。
ほどほどに若々しく、適度に品質感が高く、お値打ち感において、ショールームでのアピールは抜群だろう。試乗を始めれば、じゃっかん硬めの乗り心地が“スポーティ”を演出。しかし、10分後には運転していることを忘れさせるドライブフィール。
すきのない商品企画。そつない製品。発売当初の批判はおり込み済みの、花より団子。どのカテゴリーにおいても商売敵の先行を許さない、トヨタの強さの根源。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ウィッシュは2003年1月20日にデビュー。中型セダン「プレミオ/アリオン」のプラットフォームに“スタイリッシュ”を謳うモノフォルムのボディを被せた、3列シート7人乗りのピープルムーバーである。
グレードは、132psと17.3kgm(4WDは125psと16.4kgm)を発する、1.8リッター直4DOHC(1ZZ-FE)を積む「1.8X」(2WD/4WD)のモノグレード。これに、収納やスピーカーなどの装備を省いた廉価版「Eパッケージ」(FFのみ)と、アルミホイールや本革巻ステアリングホイールなどを奢った豪華版、「Sパッケージ」(FF/4WD)が用意される。
(グレード概要)
1.8X、モノグレードのウィッシュ。装備は基本的に充実しており、オートエアコン、CDプレーヤー付きAM/FMラジオ+4スピーカーなどが標準で備わる。2WDと4WDが用意され、4WD車は、リアがディスクブレーキ、3列目シートにヒーターダクトが備わる(寒冷地仕様は、2WDも3列目ヒーターダクト付き)。上級パッケージオプション「Sパッケージ」装着車は、エアロバンパーやサイドマットガード、アルミホイールを装着。インテリアは、助手席シートバックテーブルや、本革巻ステアリングホイールとシフトノブが備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「Sパッケージ」モデルは、インパネにカーボン調パネル(ノーマルはメタル調)を用い、メーター類が発光針になり、金属リングで囲まれるのが相違点。“スポーティ”の記号を随所にちりばめ、エアロな外観とのバランスを取る。高い位置にあるナビゲーションシステム用ディスプレイ、ステアリングホイールから近いATシフター、使用方法が明快なスイッチ、ダイヤル類、豊富な小物入れと、機能面での不満はない。ケチを付けるとすれば、オリジナリティの欠如か。
(前席)……★★★
「プレミオ/アリオン」をベースにしたというだけあって、ミニバンながらドライビングポジションはセダンと変わらない。この面において、「乗用車の新しい方向を探る」というエンジニアの方の主張は妥当だ。ウィッシュにかぎらず、最近のトヨタ車で感心させられるのが、初見時の“ちょっとイイ物”感。座面中央と左右が別体になったかのシート、その生地、ドアトリム、樹脂類の色合わせなど、クルマを見に来たお客さまを捉えて放さない。それでいて“大衆車”の枠を一歩も出ないところが、自動車メーカーとしての底力であり、賢さだ。
(2列目シート)……★★★
190mmのスライド量を誇るセカンドシート。着座姿勢は自然で、頭上空間も十分。3人掛けを反映して、センターにも小ぶりながら、ちゃんとしたヘッドレストが備わる。背もたれは6:4の分割可倒式で、ヘッドレストをはずさないまま、倒すことができる。
スタティック(静的)な状態では、スペース、シートアレンジとスペック的に申し分ないのだが、ドライブが始まってしばらくたっても、どうしてだろう、「ミニバンはセカンドシートが特等席!」といった感情が湧かない。“居心地”といった説明しにくい主観要素は、あまり重視されなかったのだろう。
(3列目シート)……★★
大人でもなんとか耐えられるサードシート。頭上にはじゃっかんの余裕があるが、膝前はさすがに狭い(足先をシート下に差せないのがツラい)。セカンドシートの乗員との居住スペースに関する協議が重要となろう。いずれにせよ、居住性よりは、背もたれを倒したときの荷室の拡大に重点が置かれたとおぼしき3列目。ホイールハウスの張り出し上部を、カップホルダー&モノ入れとして活用しているのは立派(!?)
(荷室)……★★★
床面最大幅135cm、7人乗車時の奥行きは40cm、容量は144リッター(VDA法)とミニマムだが、豊富なシートアレンジで、乗員と荷物のスペース配分を調整できる。サードシートを倒せば容量は470リッターに拡大、ゴルフバッグ(47インチ)を4コ収納できるという。3列目背もたれを倒せば100cm以上、セカンドシートまで倒せば、180cm前後の長尺モノも、搭載可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
プレミオ/アリオンの中堅グレードと同じ、「1.8リッター直4+4AT」のエンジン、トランスミッションを使用。ボディはセダン比100kgを超える重量増となるが、ひとり乗車なら過不足ない。ただ、乗員が増えて、荷物を積んで、坂道を駆け上がるようなときは、少々ツラかろう。VVT-i(可変バルブタイミング機構)を採用した1.8リッターは、平成12年基準排出ガス75%低減レベル(超-低排出ガス)にして、テスト車のFF(前輪駆動)モデルは、2010年燃費基準も達成した。カタログ燃費(10・15モード)は14.4km/リッター。実用ネンピにも優れる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
増えたウェイトを支える理由もあろうが、足はミニバンとしては硬め。ステアリングフィールもしっかりしていて、路面の情報をよく伝える。総じてハンドリングはいい。と書くと、いかにも“スポーティ”な感じだが、うまいのは、それが“過ぎない”こと。ミニバンのユーザーが望むのは、“スポーティ”な雰囲気であって、いわゆる“スポーツ走行”ではないからだ。
(写真=清水健太)
|
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年2月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:3438km
タイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)同じ(いずれもGOODYEAR GT065A)
オプション装備:前席サイドエアバッグ+カーテンエアバッグ+盗難防止システム(9.5万円)/DVDボイスナビゲーション+6.5インチモニター+MD/CD付きラジオ+6スピーカー+ガラスアンテナ+バックガイドモニター&ブラインドコーナーモニター+ステアリングスイッチ(33.1万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:340.0km
使用燃料:34.4リッター
参考燃費:9.9km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BYDラッコ300プレミアム(FWD)【試乗記】 2026.9.16 中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。価格の安さや装備の充実度はすでに報じられているとおりだが、やはり自動車の仕上がりは実際に動かしてみなければ分からない。高速道路やワインディングロードでの印象をリポートする。
-
マツダ・ロードスターPS/ロードスターS/ロードスターRF VS【試乗記】 2026.9.15 デビュー以来、不断の進化を続ける「マツダ・ロードスター」。2026年の改良は、“走り”の特別仕様車「PS」の設定が話題だが、試乗すると、ほかにも多くの変化が見てとれた。日本を代表するライトウェイトオープンスポーツの、最新モデルの仕上がりを報告する。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.9.14 「スズキ・ジムニー ノマド」でロングドライブ。本格クロカンとして悪路での走りに定評あるジムニーの5ドア・ロングボディー版は、カジュアルなSUVとしても使えるのか。多くの人が多くの時間を過ごすであろうオンロードにおける日常的シーンで、その実力を確かめた。
-
BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)【試乗記】 2026.9.12 「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。
-
日産キックスG(FF)【試乗記】 2026.9.9 日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。
-
NEW
ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】
2026.9.19試乗記ホンダのCセグメントハッチバック「シビック」に、スポーティーな走りが身上の「e:HEV RS」が登場。ハイブリッドのパワートレインと専用チューニングのサスペンションが織りなす走りは、いつもの道でこそ輝くものに仕上げられていた。 -
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――三菱デリカD:5 P編
2026.9.18webCG Movies基本設計は古いのに、セールス好調の「三菱デリカD:5」。人気の秘密はどこにあるのか、元トヨタの多田哲哉さんが試乗して語ります。(関 顕也) #三菱 #デリカ #デリカD5 #ミニバン #ディーゼル #多田哲哉 -
NEW
求む、あなたのご回答! スタッドレスタイヤに関する読者アンケート実施
2026.9.18From Our Staff秋はスタッドレスタイヤの履き替えシーズンということで、今年も各タイヤメーカーから、さまざまな新製品が登場。これに合わせ、webCGでは読者を対象に、スタッドレスタイヤに関する読者アンケート調査を実施いたします。皆さまのご回答をお待ちしています。 -
「レースの技術を生かしています」は本当か? スバルのモータースポーツ関係者に問う
2026.9.18デイリーコラムスポーツカーの広告などで目にする「レースで鍛えられた~」という文句。あれはいったい、どこまでホントなの? スーパー耐久や全日本ラリーに参戦するスバルの関係者に、市販モデルの開発とモータースポーツの関係について語ってもらった。 -
たまには撮影現場に来てみませんか? 試乗記取材の見学&プロカメラマンによる愛車撮影会を開催します
2026.9.17From Our Staff皆さまからの強い要望にお応えして、試乗記の取材に立ち会える機会をご用意いたしました。いつもの記事がどのようにできているのかをじっくりご確認いただけるまたとない機会です。さらに今回はプロカメラマンがあなたの愛車の走行シーンを撮影します。奮ってご参加ください。 -
100万円台で購入できるカーマニア納得の“素うどん的名作ハッチバック”を探す
2026.9.17デイリーコラム豪華な装備や使いきれないパワーはもういらない。多くの経験を積み、もしもクルマの基本である「走る・曲がる・止まる」の純粋な手応えにこだわった「素うどん的なクルマ」が気になるのなら、おススメしたいのはこの3モデルだ。





























