トヨタ・カローラフィールダー Z エアロツアラー(6MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・カローラフィールダー Z エアロツアラー(6MT) 2003.01.31 試乗記 ……240.0万円 総合評価……★★★素材はとびきりだけど……
1.8リッター直4で、8000回転以上回る190psエンジン、6段マニュアルギアボックス、4輪ディスクブレーキ、締め上げられたサスペンション。それでいて重量は1190kg。これなら、さぞかし俊敏でスポーティだろうと乗る前からワクワクさせられたクルマだった。ところが、乗ってみると期待ハズレも甚だしい。各コンポーネンツのスペックは凄いのに、全体のまとまりがもう一歩。素材はとびきりいいはずなのに、味付けの悪い料理みたい。これじゃあ“なんちゃってスポーツワゴン”、という感じなのだが、それでもまあ、ちょっとカッコつけたい若者向きのクルマではある。フツーに乗るなら、136ps版“S”がいい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年8月28日に発表された9代目カローラ。ボディは、4ドアセダン、コンパクトミニバン「スパシオ」、ハッチバックの「ランクス」、そしてワゴンバージョンの「フィールダー」がある。
フィールダーのエンジンラインナップには、1.5リッター(110ps)、1.8リッターは、中低速トルク重視の136ps版と、高回転型の190ps版、2.2リッターディーゼル(79ps)が用意される。FFのほか、4WDもある。
(グレード概要)
フィールダーは、ベーシックの「X」、標準仕様の「X“Gエディション”」、ちょっと豪華な「S」、そして6段MT搭載のスポーティ版「Zエアロツアラー」がラインナップする。トップグレードのZエアロツアラーは、190ps/7600rpmと18.4kgm/6800rpmの高回転、高出力エンジン「2ZZ-GE」を搭載するスポーティモデルで、EBD付きABSや大径フロントディスクブレーキを標準装備する。エクステリアは、カラードルーフレール、スポーツタイプフロントグリルやディスチャージヘッドランプなどを装着。インテリアは、ステアリングホイールやシフトノブが、本革巻の豪華版となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
フィールダーに限ったことではなくカローラ全体にいえることだが、内装の質感がなかなか高い。少なくとも、安いクルマに乗っている感覚はない。機能的にもまったく不満なく、スイッチやボタンの操作性が優れている。
装備はとても充実している。オートエアコン、後席プライバシーガラス、SRSエアバック、ディスチャージヘッドランプ等々、オプション装備を選ばずとも、ほとんどなんでも付いてくる。テスト車はオプションの16インチホイール+タイヤ、SRSサイドアエアバッグ、バックガイドモニター、DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーションも装備されていたので、まさにいたれりつくせりの仕様だった。
(前席)……★★★
まるでバリスティック・ナイロンみたいなシート素材の肌触りは悪くない。けれど、スポーツ性を謳うなら、もっとサポートに優れたシートが欲しい。見た目はよさそうなのに、大して機能的じゃないのが惜しい。革巻のステアリングホイール、シフトノブ、ダークグレーでまとめられた無機質な内装は、たしかに解かりやすく、若い人には受けそうなスポーティムードが漂う。
物入れはかなり豊富である。グローブボックスが大きいだけでなく、ダッシュボード中央のトレイ、センターコンソール、ドアポケット等々、小間物を入れるのに不自由しないはずだ。
(後席)……★★★
天井がそこそこ高いワゴンボディの恩恵で、リアのヘッドクリアランスは充分以上ある。フロントシートのバックレストと後席の住人の膝との間隔もかなりあり、窮屈に感じることはない。シートのクッションはそれほど薄くないので、長時間座っていても苦にならないのがいい。
(荷室)……★★★★
リアシートを使用している状態でも、必要充分以上の荷室スペースが確保されている。特別に広くないが、カローラクラスのワゴンなのだから、これで文句はない。もちろん、6:4の分割可倒式シートバック、同じく分割で畳めるシートクッションによって、荷室のアレンジは多彩。ワゴンとしての使い勝手はよい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
セリカにも搭載される、高回転高出力型の1.8リッター「2ZZ-GE」直4ユニットは、とにかくパワフルだしトルクも太い。ただし吹け上がりがそれほど滑らかではないのが玉にキズだ。セリカはもっとスムーズにまわった印象があるから、固体の問題なのかもしれないが、気持ちのよいフィーリングとはいえない。しかも、4000rpmを超えてからの音がひどくうるさい。割れんばかりのノイズを前に、せいぜい4000rpmあたりでシフトアップしたくなる。しかし、もともとこのエンジンは高回転型なので、早め早めの変速では有効なトルクを活かせない。積極的に飛ばすにはやはり音に抗してまわしてやる必要がある。
シフトの感触もいただけない。ストロークが大きいばかりでなく、ゲートにレバーが吸い込まれれるような感触は望めない。ようするに、スポーツドライビングに相応しくないフィーリングなのだ。
(乗り心地+サスペンション)……★★★
ダンパーの減衰力が高められている、すなわち硬いアシのわりに、乗り心地は好ましい。ステーションワゴンとしては、ボディの剛性感が高いことも奏効しているのだろう。低速域の街中でも高速道路でも、適度に締まった足まわりは快適である。もちろん、日常域での安定性はかなり高い。
とはいえ、超高速クルーズで路面にぴたり張り付くほどではないし、高速コーナリングにおいても、ワゴンの背高が災いしてか、腰の座りはそれほどよくない。ラックピニオンのステアリングの感触は悪くないが、なぜかクルマ全体がそれほどキビキビ動けないのも残念なところだ。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:阪和明(CG編集局長)
テスト日:2002年12月24日から26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:3021km
タイヤ:(前)195/55R16 86V(後)同じ(いずれもミシュラン Pilot Premacy)
オプション装備:195/55R16 86V(16×6JJアルミホイール)(7.6万円)/音声ガイダンス機能付きバックガイドモニター(カラータイプ)(4.7万円)/SRSサイドエアバッグ(運転席・助手席)(3.5万円)/DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチVステーション(CD・MD一体AM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ・TV&6スピーカー)&ガラスプリントTVアンテナ(25.8万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4)
テスト距離:162.4km
使用燃料:16リッター
参考燃費:10.2km/リッター

阪 和明
-
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】 2025.10.10 今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】 2025.10.9 24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。
-
日産リーフB7 X(FWD)/リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2025.10.8 量産電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」がついにフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、従来モデルとはなにが違い、BEVとしてどうすごいのか? 「BEVにまつわるユーザーの懸念を徹底的に払拭した」という、新型リーフの実力に触れた。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ クーペ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.7 アストンマーティンが世に問うた、V12エンジンを搭載したグランドツアラー/スポーツカー「ヴァンキッシュ」。クルマを取り巻く環境が厳しくなるなかにあってなお、美と走りを追求したフラッグシップクーペが至った高みを垣間見た。
-
ルノー・カングー(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.6 「ルノー・カングー」のマイナーチェンジモデルが日本に上陸。最も象徴的なのはラインナップの整理によって無塗装の黒いバンパーが選べなくなったことだ。これを喪失とみるか、あるいは洗練とみるか。カングーの立ち位置も時代とともに移り変わっていく。
-
NEW
マツダ・ロードスターS(後編)
2025.10.12ミスター・スバル 辰己英治の目利き長年にわたりスバル車の走りを鍛えてきた辰己英治氏。彼が今回試乗するのが、最新型の「マツダ・ロードスター」だ。初代「NA型」に触れて感動し、最新モデルの試乗も楽しみにしていたという辰己氏の、ND型に対する評価はどのようなものとなったのか? -
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】
2025.10.11試乗記新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。 -
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか?
2025.10.10デイリーコラム満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。 -
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】
2025.10.10試乗記今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか?