ダイハツ・ムーヴX(2WD/4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・ムーヴX(2WD/4AT) 2003.01.18 試乗記 ……108.4万円 総合評価……★★★
|
あすなろ物語
ある意味、2面性を持ったクルマである。1つは「すべての面で現在最高レベルの性能を持った軽」。最大のライバルであるスズキ「ワゴンR」に負けじと、ボディをプラットフォームから一新し、クラストップの広さ、質感、トップレベルの衝突安全性等を手に入れた。それはそれでいいことなのだが、おかげで「小型車コンプレックスを感じさせるクルマ」になってしまった。
まるで『あすなろ物語』である。軽を超えよう、上のクラスであるコンパクトカーになろうなろうと思うがあまり、質感でも室内の広さでもコンパクトカー並みになった。だが、やはり660ccという排気量の制限がある動力性能や、ハンドリングの点で物足りず、中途半端なイメージが拭えない……、という。
とはいえ、今もっとも「立派」な感じのする軽であることは、間違いない。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ダイハツの軽セミトールワゴン。現行モデルは、2002年10月15日にフルモデルチェンジを行った3代目で、プラットフォームが一新された。ボディサイズは軽自動車規格イッパイ。ホイールベースを従来比+30mmの2390mmに延長。ドア内側の形状を見直すなどして、幅で80mm、前後乗員間隔が105mm長い、広い室内がウリ。加えて、スライド量を250mmに拡大した後席や、ワンタッチで後席を折り畳める「ワンモーション荷室フラット」など、使い勝手の向上が図られた。
ムーヴは、コンサバティブな「ムーヴ」と、スポーティな外観をもつ「ムーヴ カスタム」の2種類がラインナップする。エンジンは、0.66リッターの直3NA(自然吸気/58ps、6.5kgm)とターボ(64ps、10.5kgm)。カスタムには、それらに加え、「軽」で唯一の4気筒ターボ(64ps、10kgm)もラインナップされる。トランスミッションは、コラム式4段ATをメインに、フロアシフトの5MT、CVTが用意される。FF(前輪駆動)のほか、4WDも設定される。
(グレード概要)
ムーヴのグレードは、NAの「L」と「X」、ターボエンジンを積む「R」の3種類。「X」は中核グレードで、0.66リッター直3DOHC12バルブ(58ps、6.5kgm)のエンジンに、コラム式4段ATが組み合わされる。250mmスライドする後席や、ワンモーション荷室フラットを標準装備。Xにのみ、センタクラスター下に脱着式のクリーンボックスが備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ、装備)……★★★★★
あすなろ……を、最も感じさせるのがインテリアだ。そういう意味では★1つ。運転席に座った瞬間、「どっかで見た感じだなぁ」と思う。具体的にどれとはいえない。とはいえ、インパネ運転席側にある“ヒサシ”風デザインや表皮の樹脂の質感は、まさにモダンコンパクトカーのそれ。特に質感なんて、完全にトヨタ「ヴィッツ」以上。くぅ〜頑張ってる!
(前席)……★★★
前席の座り心地は普通にいい。ベンチシート風の見た目通りに横方向のサポート性は悪く、厳しいコーナリングで体が動くが、これは仕方ない。
それより驚きは、助手席の遠さ。ドアの内側形状まで考慮したおかげで、カップルディスタンス、つまり「運転席-助手席間の長さ」は、旧型比プラス40mmの620mm。暑苦しくなくなったが、ちょっと寂しい。
(後席)……★★★★
ムーヴのインテリアは驚きの連続だが、特筆はなんといっても後席の広さ。ホイールベースを2390mmと、3395mmのボディ全長に対して極限まで延長したおかげで、インパネから後席後端までの長さは、旧型の1730mmから1920mmになった。実際、座るとひざが余裕で足が組める。これはコンパクトカーレベルを超えて、「セルシオ」に匹敵するレベルだという。いやはやご苦労様、って感じ。うれしいけどね。
(荷室)……★★
通常の状態では、トランクはハッキリいって狭い。一番小型のスーツケースでさえ積めないか? という感じである。ただそれも仕方ない。全長は“軽自動車規格”ゆえに変えられず、室内長を極限にまで伸ばしたのだから。ただ、250mmの移動量を誇るスライド機構のおかげで、シートを思いっきり前に出せば普通に使える。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
エンジンは、基本的に旧型譲りの660cc直列3気筒。58psを発するが、一番ツライのはこの点である。ゆっくり走ってる分には前より静かになったような気もするし、日常的には動力性能も過不足ない。だが他が良くなった分、コンパクトカーと較べるとツライ。特にアクセル全開でのエンジン音は、やっぱウルサめ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地は良くなったんじゃないだろうか。特に感じるのはフロア剛性の高さで、道路継ぎ目を越える時に感じられる“安っぽさ”は微塵もない。基本的に足は硬めで、コーナリング中のロールも少ないのだが、それでいて不快な衝撃は入ってこない。ただステアリング中立付近にしっかり感が薄いのは、やっぱり軽自動車って感じ。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:小沢コージ
テスト日:2002年10月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:900km
タイヤ:--
オプション装備:バックソナー(1.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(10)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
MINIジョンクーパーワークス エースマンE(FWD)【試乗記】 2025.11.12 レーシングスピリットあふれる内外装デザインと装備、そして最高出力258PSの電動パワーユニットの搭載を特徴とする電気自動車「MINIジョンクーパーワークス エースマン」に試乗。Miniのレジェンド、ジョン・クーパーの名を冠した高性能モデルの走りやいかに。
-
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.11.11 ボルボの小型電気自動車(BEV)「EX30」にファン待望の「クロスカントリー」が登場。車高を上げてSUVっぽいデザインにという手法自体はおなじみながら、小さなボディーに大パワーを秘めているのがBEVならではのポイントといえるだろう。果たしてその乗り味は?
-
メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.10 2020年に上陸したメルセデス・ベンツの3列シート7人乗りSUV「GLB」も、いよいよモデルライフの最終章に。ディーゼル車の「GLB200d 4MATIC」に追加設定された新グレード「アーバンスターズ」に試乗し、その仕上がりと熟成の走りを確かめた。
-
アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】 2025.11.8 新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。
-
MINIジョンクーパーワークスE(FWD)【試乗記】 2025.11.7 現行MINIの電気自動車モデルのなかでも、最強の動力性能を誇る「MINIジョンクーパーワークス(JCW)E」に試乗。ジャジャ馬なパワートレインとガッチガチの乗り味を併せ持つ電動のJCWは、往年のクラシックMiniを思い起こさせる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS(4WD)【試乗記】
2025.11.15試乗記ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」にスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。ベースとなった4WDのハイブリッドモデル「e:HEV Z」との比較試乗を行い、デザインとダイナミクスを強化したとうたわれるその仕上がりを確かめた。 -
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ・マカン4編
2025.11.14webCG Moviesポルシェの売れ筋SUV「マカン」が、世代交代を機にフル電動モデルへと生まれ変わった。ポルシェをよく知り、EVに関心の高いレーシングドライバー谷口信輝は、その走りをどう評価する? -
ホンダが電動バイク用の新エンブレムを発表! 新たなブランド戦略が示す“世界5割”の野望
2025.11.14デイリーコラムホンダが次世代の電動バイクやフラッグシップモデルに用いる、新しいエンブレムを発表! マークの“使い分け”にみる彼らのブランド戦略とは? モーターサイクルショー「EICMA」での発表を通し、さらなる成長へ向けたホンダ二輪事業の変革を探る。 -
キーワードは“愛”! 新型「マツダCX-5」はどのようなクルマに仕上がっているのか?
2025.11.14デイリーコラム「ジャパンモビリティショー2025」でも大いに注目を集めていた3代目「マツダCX-5」。メーカーの世界戦略を担うミドルサイズSUVの新型は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 開発責任者がこだわりを語った。 -
あの多田哲哉の自動車放談――フォルクスワーゲン・ゴルフTDIアクティブ アドバンス編
2025.11.13webCG Movies自動車界において、しばしば“クルマづくりのお手本”といわれてきた「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。その最新型の仕上がりを、元トヨタの多田哲哉さんはどう評価する? エンジニアとしての感想をお伝えします。 -
新型「シトロエンC3」が上陸 革新と独創をまとう「シトロエンらしさ」はこうして進化する
2025.11.13デイリーコラムコンセプトカー「Oli(オリ)」の流れをくむ、新たなデザイン言語を採用したシトロエンの新型「C3」が上陸。その個性とシトロエンらしさはいかにして生まれるのか。カラー&マテリアルを担当した日本人デザイナーに話を聞いた。






























