ホンダNSX-R(6MT)【ブリーフテスト】
ホンダNSX-R(6MT) 2002.09.05 試乗記 ……1260.7万円 総合評価……★★★★ニッポン、チャチャチャ
1990年代初頭に、「ついにフェラーリを超えたか!?」という束の間の夢を見させてくれたニッポンのスーパーカー。その後、イタリアンライバルの代が順調にかわるのを横目に、延々と内的熟成を重ねてきたが、2001年12月にノーマルモデルがフェイスリフトを受けたのを機に、7年ぶりにサーキット仕様たる「タイプR」がリリースされた。ベーシックグレードが目を見開いたがために外観変更のタガが外れたか、はたまた“ストイックな進化”の呪縛が解けたか、2代目「NSX-R」は、ボンネットに大きなエアアウトレットが設けられ、黒いリアウィングが一段と高い位置を横切る。赤いバッヂを誇示するまでもなく、一目でスペシャルモデルと判別できる。
しかし、それらは単なる差別化のためではない。フロントアンダーカバー、リアディフューザーと合わせ、前後マイナスリフトを実現。つまりニューRは、速度を上げるほど地面に吸い付く、わけだ。ホンダのエンジニア諸氏は、“新しい速さへのアプローチ”を「空力操安」と呼んで胸をはる。
空力パーツ付加の一方で、「ボンネット、リアウィングのカーボン素材採用」「ホイールの削り込み」「キャビンと背後のエンジンルームを分けるパーテションガラスの薄板化」「内装素材の見直し」といったスプーン1杯のカロリーを気にするダイエットにより、タイプRはノーマルバージョンより70kgも軽い! しかも、環境、衝突安全性能の向上といった時代の要請に応えながらも、92年デビューの初代Rより10kg軽量はリッパ。
真っ赤なバケットシートに少々照れながらステアリングホイールを握る。NSX-R、いうまでもなく、速い。チャンピオンホワイトのミドシップスポーツがスッ飛んでいく。VTECの乾いたハイノートにシビれる。“曲がり”は、電動スロットカーがコースに従うがごとく、シャープ。トレードオフとして、ときに舌を噛みそうになるサスペンションの硬さ。気を抜くと太く薄い17インチのタイヤが轍に取られ、キモを冷やす。NSX-Rの車両本体価格は、ポルシェ911カレラクーペより高い1195.7万円。いまホンダのトップエンドスポーツを買うことは、ふがいないジャパンパワーのF1マシンを応援するようなものだ。でも、クルマ好きにとって、そういうことが大切なんだな。ニッポン、チャチャチャ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1990年9月にデビューしたアルミボディのミドシップ2シーター。1997年にマニュアルモデルのエンジンが3リッターから3.2リッターに拡大され、ギアは5段から6段にグレードアップされた。2001年12月にフェイスリフトを受け、リトラクタブルヘッドライトがプロジェクタータイプの固定式に。空力性能の向上と、フロントの軽量化が謳われる。同時にタイヤサイズが一層アップ、アルミホイールも意匠変更された。
グレードは4種類。ベーシックな「NSX」、Tバールーフの「NSXタイプT」、軽量化と足まわりのチューニングを受けた「NSXタイプS」、そして2002年5月に追加されたホッテストバージョン「NSXタイプR」である。前2者には「3.2リッター(280ps)+6段MT」「3リッター(265ps)+4段AT」、後2者にはマニュアルモデルのみが用意される。
(グレード概要)
2002年5月23日に、約7年振りに復活した赤バッヂのNSXことタイプR。エアアウトレットダクト付きボンネット、一段高められたカーボンリアスポイラーなどがエクステリア上の特徴となる。開発コンセプトは、「空力操安」。空力性能を重視したマイナーチェンジ後のノーマルモデルをさらに洗練、CD値=0.32、前後マイナスリフトを誇る。レーシングユニット同様手組みされるエンジン、カーボン素材を多用した軽量化、足まわりの専用セッティングなどが、手を加えられた内容だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
さすがに古さを隠せないインパネまわりだが、「R」は、カーボン調メーターパネルと黄色いニードルで、雰囲気を盛り上げる。速度計は300km/hまで表示される! まあ、(ほぼ)サーキット専用車ですから。回転計には、ピークパワー付近で「緑」、レブリミットに近づくと「赤」の小さなランプが点灯する。これまたレースコース用装備。36cmの小径革巻きステアリングホイールはMOMO社製。インストゥルメントパネル全体をつや消しのラバーが覆うのは、コストダウンではなく、軽量化(−0.6kg)のためだ。
(前席)……★★★★
「タイプR」の証、真っ赤なフルバケットシートが装備される。レカロ製で、軽量化のためカーボンアラミド素材が用いられる本格派だ。スライドステーにボルト留めされるのが、なんともレーシィ。表皮は専用品で、中心部がパンチング・ラックススウェード、周辺にはメッシュジャージが用いられる。見かけより座り心地はソフト。クッション感高し。リラックスしてタイムアタックにトライできる? 色は、「赤」のほか「黒」も選択可能。左手を下ろしたところにある球形シフトノブは、なんとチタン無垢材からの削り出し。ありがたく握らせていただきます。シフトブーツがメッシュジャージになったのは、これまた軽量化のため。
(荷室)……★★
ゴルフバッグが2セット積めるラゲッジスペースは、ノーマルモデルのまま。徹底的に軽量化されたRゆえ、荷室のカーペットは軽量タイプ。薄い……。ちなみに、赤バッヂが付くフロントのフード下に、テンパータイヤは積まれない。スペアタイヤを廃止、パンク修理剤を採用することで、−14.4kgの軽量化を果たした。ちょっと反則(?)
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
市販車に積まれたレーシングエンジン。涼やかに回る。カムが切り替わる手前までしか使わない街乗りでも、職人による「手組み&バランス取り」のありがたみはじゅうぶんわかる。贅沢な一品。スムーズにパワーを上げる。「手応えない」と感じさせるほどに。
いざサーキット(が望ましい)にのぞめば、クロースレシオの6段MTを繰って、ハイノートで歌わせ続けることも可能だ。ノーマルNSXと、6枚のギアの歯数は同じだが、ファイナルが「4.062」から「4.235」に落とされたことも見逃せない。より一層の加速性能を手に入れた。
スロットルペダルとエンジンを電子的につなぐ「ドライブ・バイ・ワイヤ」も変更を受け、機敏なアクセルワークのために、スロットル全開ポイントを早め、ストロークも約8mm短縮された。また、ペダル荷重は重めに設定され、スポーツ走行時の「G」で開度が変化しにくい改良が施される。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
「初代より突き上げを抑えたセッティング」との言葉がエンジニア氏の口からは出たが、デートにも買い物にもオススメできない。サーキット走行用と割り切るべき、乗り心地の硬さだ。反面、筑波サーキットでは、93年型タイプRより1から1.5秒も(!)速かったという。絶対的なタイムはともかく、万人の“走り”に底上げが期待される。「峠でも無敵!!」と言いたいところだが、路面の凹凸や轍の窪みは苦手。公道では、休みなく息を詰めた走りが求められる。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年6月19日から20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:3295km
タイヤ:(前)215/40R17 83Y/(後)255/40R17 94Y(いずれもブリヂストン・ポテンザRE070)
オプション装備:オートエアコン+オーディオ類+ディスチャージヘッドランプ
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:388.4km
使用燃料:57.1リッター
参考燃費:6.8km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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