クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4785×1820×1560mm/ホイールベース=2710mm/車重=1670kg/駆動方式=4WD/2リッター直4DOHC16バルブターボ(211ps/5300-6200rpm、28.6kgm/1700-5200rpm)/価格=494万円(テスト車=同じ)

フォルクスワーゲン・パサートオールトラック(4WD/6AT)【試乗記】

滑らかに速いスピードワゴン 2012.09.10 試乗記 下野 康史 フォルクスワーゲン・パサートオールトラック(4WD/6AT)
……494万円

「パサートヴァリアント」をベースにクロスオーバーなスタイリングと「4MOTIONトラック」が与えられた「フォルクスワーゲン・パサートオールトラック」。その走りを確かめた。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

断トツの高付加価値モデル

どんな道でも走れるから、“オールトラック”。「パサートヴァリアント」をベースにした4WDモデルだ。フォルクスワーゲンにとって、しばらくコマを欠いていた乗用車タイプ4WDモデルの復活でもある。

これまでどおり、ハルデックスカップリングを使った4WDで、通常はほぼ完全にFF。前輪が空転すると、後輪にトラクションを分配する。

パサートといえば、現行世代でエンジンを一気にダウンサイジングし、日本仕様は1.4リッターターボになった。しかし、オールトラックは「ゴルフGTI」と同じ2リッターターボを積む。ありゃりゃ、リバウンドかと思えばそうではなく、旧型の「パサートヴァリアントV6 4MOTION」が3.2リッターだったことを考えると、2リッター化でダウンサイジング達成、という理屈である。

試乗車は純白。この色だと余計に目立つ前後ホイールアーチのミニオーバーフェンダー風ガーニッシュがオールトラックの一大識別点だ。ホイールも16インチのヴァリアントに対して、18インチが標準。単にパサートヴァリアントを四駆化したというのではなく、控えめながら、「アウディ・オールロードクワトロ」のようなスポーティー4WDワゴンの雰囲気も狙っているやに見える。

と思って乗り込むと、中はまじめだった。というか、ウッドデコラティブパネルが貼られたダッシュボードやナパレザーのシートなどをしつらえた室内には高級感が漂う。オールトラックは「パサートヴァリアントTSIハイライン」より約100万円高い494万円。パサートシリーズのなかでも断トツの高付加価値モデルである。

テスト車のボディーカラーは「キャンディホワイト」と呼ばれる純白。
テスト車のボディーカラーは「キャンディホワイト」と呼ばれる純白。 拡大
2リッター直4ターボエンジンは最高出力211ps/5300-6200rpm、最大トルク28.6kgm/1700-5200rpmを発生する。
2リッター直4ターボエンジンは最高出力211ps/5300-6200rpm、最大トルク28.6kgm/1700-5200rpmを発生する。 拡大
ウッドとアルミのデコラティブパネルで装飾される室内。ステアリングにはシフトパドルが備わる。
ウッドとアルミのデコラティブパネルで装飾される室内。ステアリングにはシフトパドルが備わる。 拡大
フォルクスワーゲン パサート の中古車webCG中古車検索

素早い変速機

ゴルフGTIのエンジンを積んだパサート! と言われても、あまり盛り上がらないのは、パサートのほうがゴルフより大きいからである。GTIの車重は1400kg。それに対してオールトラックは1670kgある。これじゃあ「羊の皮を着た狼」にはなれないだろう、と即断するのは間違いだ。オールトラックはなかなかのスピードワゴンである。

高性能エンジンというほどのパワフルさがあるわけではないが、スタートダッシュも追い越し加速もヒュワーッと滑らかに速い。一人乗車では1.7トン近い車重をまったく感じさせないクルマである。

変速機はゴルフGTIと同じパドルシフト付きの6段DSG。1.4リッターのパサートよりギアは1段少ないが、エンジンの持てる力をフルに引き出すDSGの本質に変わりはない。211psのエンジンも速いが、変速機も速い。
100km/h時のエンジン回転数は6速トップで2000rpm。「ポルシェPDK」のようなコースティング機能こそ付いていないが、最近のDSGは町なかでもとにかくあわよくばエンジン回転数を下げよう下げようとする。省燃費のためにそんなしつけが可能なのも、一朝事あれば、即座にキックダウンして加速に移れる速い変速機があればこそだ。軽いアクセルペダルを踏み込んでキックダウンを効かすと、アイドリング近くまで下がっていたタコメーターの針が、びっくりしたようにピクンと跳ね上がる。それが昔のレーシングカーに付いていた機械式タコメーターを彷彿(ほうふつ)させておもしろい。

今回、燃費はとれなかったが、JC08モードのカタログ値は11.6km/リッター。1.4リッターのヴァリアントTSIハイライン(17.6km/リッター)にはかなり差をつけられている。


フォルクスワーゲン・パサートオールトラック(4WD/6AT)【試乗記】の画像 拡大
ナパレザーのシート。インテリアカラーは写真のナチュラルブラウン(受注生産)と、ブラックが設定される。
ナパレザーのシート。インテリアカラーは写真のナチュラルブラウン(受注生産)と、ブラックが設定される。 拡大
後席は6:4の分割可倒式。センターアームレストを倒して、長い荷物を積み込むこともできる。
後席は6:4の分割可倒式。センターアームレストを倒して、長い荷物を積み込むこともできる。 拡大
容量約588リッターのラゲッジルームは、ダブルフォールディング方式の後席を倒すと約1716リッターまで拡大できる。(写真をクリックするとシートの倒れる様子が見られます)
容量約588リッターのラゲッジルームは、ダブルフォールディング方式の後席を倒すと約1716リッターまで拡大できる。(写真をクリックするとシートの倒れる様子が見られます) 拡大

広い荷室がアドバンテージ

160mmの最低地上高はFFのヴァリアントより30mm高い。実際には運転席だともっと高床に感じる。乗用車四駆としてはかなりのハイライダーである。

そんなキャラクターに誘われて舗装路を外れるとき、センターフロアにあるオフロードスイッチは便利だ。ボタンを押せば、ヒルディセントアシストがオンになり、エンジンや変速機やエレクトロニックデフロックの制御がオフロード仕様に変わる。「ティグアン」にも装備されているお手軽機構だ。

サスペンションはかなり硬めにしつけられている。ヨーロッパのバカンスシーズン、こういうクルマはたしかに貨物車として無慈悲に積まれる。ということを想定してのセッティングだとしても、空荷での乗り心地は少し硬過ぎる。バネ下が軽い感じはワルくないのだが、ダンパーが突っ張っているような印象で、高速道路の継ぎ目の乗り越しで発生する突き上げがちょっと鬱陶(うっとう)しい。「500万円の高級ワゴン」と考えると、足まわりにもう少ししなやかさがほしい。

フォルクスワーゲンの四駆なら、もっと安くて乗り心地もすごくいいティグアンがある、と、個人的には思うが、コンパクトSUVにはないアドバンテージは広い荷室である。後席を倒してフラットにすると、カーペットの上だけで177cm(実測)の奥行きがとれる。ボディー全長は「ボルボV70」より4cm短いのに、荷室(V70は同168cm)はひとまわり大きくて、しかも4WD。そのへんがオールトラックの魅力だろう。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)

後輪に送られる駆動力は通常時の10%から、発進・加速時など状況により最大100%近くまで変化する。
後輪に送られる駆動力は通常時の10%から、発進・加速時など状況により最大100%近くまで変化する。 拡大

フォルクスワーゲン・パサートオールトラック(4WD/6AT)【試乗記】の画像 拡大
アンダーガードが備わったオールトラック専用のバンパー。
アンダーガードが備わったオールトラック専用のバンパー。 拡大

フォルクスワーゲン・パサートオールトラック(4WD/6AT)【試乗記】の画像 拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

試乗記の新着記事
  • スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
  • ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
  • スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
  • トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
  • BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
試乗記の記事をもっとみる
フォルクスワーゲン パサート の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。