日産 スカイライン【特集/河村康彦】
V6によって決定づけられる-なぜストレート6を捨てたのか- 2002.01.04 試乗記 日産スカイライン……265.0-333.0万円 比較車種:メルセデスベンツ C240(5AT)……505万円 「V35」スカイラインは、その形式名の通りV型6気筒ユニットを搭載する。直6からV6へ。この流れを先行して行ったメーカーが、メルセデスベンツである。日産とスリーポインテッドスターの、V6採用の共通点と相違点とは? 自動車ジャーナリスト、河村康彦が論じる。■メルセデスの選択
“直6の火”が、またひとつ消えようとしている。スカイラインがモデルチェンジに際して「伝統の」直列6気筒エンジンを捨てたことで、日産がこのエンジン形式から撤退することがもはや決定的であるからだ。
同じ6気筒ユニットでも、直6はV6よりエンジンの回転フィールが優れている点が大きな売り物だった。けれども技術の進歩によって、昨今ではV6のフィーリングが、直6に負けないものとなった。
こうなると「全長がより短く、搭載スペースやクラッシャブルゾーンの確保に有利」「クランクシャフトが短く強度・剛性の向上がたやすい」といった理由を挙げ、世界的に「6気筒=V6」という選択をするメーカーが増えるのは、やむをえまい。
スウェーデンのボルボと並ぶ“安全フェチ”の自動車メーカーとして知られるメルセデスベンツ(ダイムラークライスラー)は、直6からV6という流れをいち早く採りいれた。「エンジン全長が短く、その分、前面衝突時のクラッシャブルゾーンを大きく確保することができる」……メルセデスはそうした理由を第一にあげ、他社に先駆けて積極的に直6からV6への世代交代を図ったのである。
たしかに、より大きなクラッシャブルゾーンが確保できることは大きな利点だ。けれども、ぼくは、理由はそれだけではないと思う。それでは、ほかに考えられる理由は?「コストダウンと合理化」だ。
■早々とV6化
メルセデスは、V6を採用するにあたり、シリンダーレイアウトの変更とともに、ヘッドメカニズムを、4バルブDOHCから、構造がよりシンプルな3バルブSOHCへと変えた。当然、製造コストは下がったはずだ。しかも、バンク角は、V6として理想の60度ではなく、V8とのモジュール化が可能な90度(もちろん、回転フィールを考慮して、バランスシャフトを組み込んだ)。
そのほか、将来的にエンジン単体を他のメーカーにセールスする場合も、“汎用度”の高いV6デザインの方が、「融通の効かない」直6より遥かに有利、というロジックが成り立つ。
こうした様々な要件が複合的に重なりあった結果、ぼくはメルセデスベンツが早々と6気筒エンジンをV6化したのではないか、と読んでいる。
■当然、V型
一方、新型スカイラインにとってのV6ユニットは、「このクルマの すべての源」と言っても過言ではない、極めて重要なアイテムだ。度々述べるが、V6は全長が短い。その特徴を最大限に生かし、「FMパッケージ」をつくりだしたのが新型スカイライン。“FM”とは、フロントミドシップの略。V6ユニットを、キャビンに食い込まんばかりにエンジンルーム後ろ寄りに搭載し、一方、フロントタイヤを思いきり前方に移動したのが、このクルマの基本的なパッケージングだ。
新型スカイラインの場合、フロントミドシップ、ロングホイールベースのレイアウトは、広いキャビンを生み出すだけでなく、独自の“ドライビングプレジャー溢れる走り”のために採用された、といわれる。大径のタイヤをボディ四隅に配し、燃料タンクを一部荷室下から完全に後席下に置くことなどにより、「フロント52%、リア48%」という、FR車として理想的な重量配分を実現することができるからだ。
実は、こうしたパッケージづくりは、あるひとりの日産技術者によって推進された。氏は、かつてニスモに在籍し、グループCカーや、ルマン24時間レース用マシンの開発、監督業務を経験してきた人物。その彼が、自らの実戦体験をベースに「理想のスポーツセダン像」を追い求めたのが、今回のスカイラインというわけだ。その心臓には「当然、V型ユニット以外は考えられなかった」という。
ストレート6もV6も積めるメルセデスベンツに対し、ニュースカイラインは、「V6ユニット決め打ち」のモデルである。パッケージングやデザイン、そして走りのテイストに至るまで、すべてがV6エンジンによって決定づけられるといっても過言ではない。
(文=河村康彦/メイン=河野敦樹、人物=初沢克利/2001年6月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。
































