MINI One/Cooper【試乗記】
合理との決別 2002.01.11 試乗記 MINI One/Cooper(5MT/5MT) ……(195.0万円/225.0万円) ナカタのおかげで、日本でも一躍有名になったイタリアのペルージャ。そこで新しい「MINI」の試乗会が開かれた。自動車ジャーナリスト金子浩久が、プレミアムな小型車をインプレッションする。
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初の「プレミアムコンパクト」
新世代「MINI」のペルージャでの試乗会に参加して、開発担当者から興味深い話を聞いた。
「もしかしたら、新型MINIはフランスに限って、他の国のようには好意的に受け入れてもらえないかもしれない」
新型車の報道試乗会では、あまりネガティブなことは言わないものだから、ちょっとビックリした。と同時に、「フランスでは」とはっきりと限定しているところに興味を掻き立てられた。
「フランス人は、クルマに対して非常に合理的な要求をする。特にMINIのような小さなクルマについてはなおさらだ。燃費が良くないと彼らは納得しないし、車内とトランクスペースについても、1リッターでも多くの空間を求めて譲らない」
MINIのプロジェクトリーダーである、BMWのハインリッヒ・ペトラ博士は、ボディサイズが近い「プジョー206」や「フォルクスワーゲン・ポロ」もライバルにはならないと言う。その理由が、今度のMINIは206やポロと同じだけの空間が確保されていない上に、価格は高くなるからだ。
狭いのに、高い。クルマを移動の足としてのみ求める人には、フランス人じゃなくたってノーサンキューだろう。ペトラ博士によると、フランス人にはそういう人が多いのだそうだ。フランスのクルマのことを考えると、理解できる話で納得した。では、新型の存在意義はどこにあるのか?
プロジェクトリーダーは言う。「新しいMINIによって、初めてプレミアム・コンパクトというクラスが出現したのです。プレミアムは、もう中型以上のクルマだけの話ではなくなりました」
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クルマに求められるもの
たしかに、ペルージャの試乗会で運転したMINI Cooperの走りは素晴らしかった。まるでBMWの新型車のように、シャキッとしていながらしなやかに走る。インテリアのデザインと仕上げも上質そのものだ。これまでの小型車の基準を大きく上回っている。ペトラ博士の言うように、MINIの走りとつくりは“プレミアム”に違いない。
でも、日本人の標準的体格に近い僕が助手席に座ると、シフトするドライバーの右手が膝頭に時々触れる。ドアが下に行くほど厚みを増すので、外見ほど中は広くない。後席も大人には“MINIマム”な空間だ。なるほど、これが“プレミアム”とやらの狭さか。
考えてみれば、プレミアムというのは空間の広さだけ、価格の安さだけを追求することから訣別することだ。それは、メルセデスベンツやBMW、ジャガーなどのサルーンを思い出してみればわかることだろう。それらのプレミアムサルーンが追求し、訴求しているのは上質な乗り味や卓越した走行性能、希少な技術などだ。
新型MINIに、1人ないしは2人で乗ることがほとんどならば、これだけの走りとインテリアの仕上げに免じて認めてもいいと、僕は思う。
小さなクルマでも走りの質感を向上できるように、技術が進歩したからなのか、それともフランス以外のヨーロッパでは、パッケージングを詰めることを第一義としない小型車でも、受け入れられる下地ができたからなのか。理由はいろいろあるだろうけれど、新しいMINIの成否はとても興味深い。
元祖MINIは、スエズ動乱によるイギリスでのガソリン配給制が、開発を加速させたことによって世に出た。低燃費で省スペースな小型車の登場が、国家の危機を救うと信じられていた時代の最新鋭車だった。そのイメージを最大限に活用しながら“プレミアム”を謳う新型MINIとは、とても対照的だ。クルマに求められるものや自動車の役割が、この42年間(元祖は1959年デビュー)で大きく変わったことの一例に、2代目MINIはなるのかもしれない。
(文=金子浩久/写真=ビー・エム・ダブリュー株式会社/2001年7月)

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