ボルボV70(5AT)【試乗記】
『ベーシック、バット、レザー』 2001.03.13 試乗記 ボルボV70「レザーパッケージ」 ……423.5万円本革セットで20万円也
巨大タバコ企業を内部告発する元副社長。訴訟をやめさせようとする会社側の嫌がらせが続く。収入は途絶え、住み慣れた家を出なければならない。「大丈夫、いままでより控え目(Small Scale)に暮らせばいいんだ」といって、ラッセル・クロウ扮する元役員が、アウディA4とBMW3シリーズのカブリオレから買い換えたクルマは、ちょっと古いFRボルボのエステート。「なるほどなァ」と思いつつ、「ちっともスモールじゃないやんけ」と、まるで本筋とは関係のないツッ込みを入れる『webCG』エディター。もちろん、映画『インサイダー』の見どころは、別にあります。
さて、日本におけるボルボは、ボルボ・カーズ・ジャパンの企業努力もあって、「控え目」で「実用的」以上のイメージを獲得することに成功した。主力ワゴン「V70シリーズ」の2000年度登録台数は9937台。これは、フォルクスワーゲン・ゴルフワゴン(8066台)、オペル・アストラワゴン(4314台)といったコンパクトクラスを抑えての、輸入ステーションワゴン第1位である。しかも、「8、9割のお客さまは、本革仕様を選ばれる」(ボルボ)というから、質量ともにチャンピオン……、といったら褒めすぎでしょうか。
2001年3月、V70シリーズのエントリーモデル「V70」(400.0万円)に「レザーパッケージ」が設定された。本革シート、革巻きステアリングホイール、それに運転席パワーシートがセットで、20.0万円也。単品で頼むと合計48.8万円だから、28.8万円の「お徳」となる。上級グレード「V70 2.4」(460.0万円)「同2.4T」(510.0万円)は、本革仕様にするために「ベーシックパッケージ」(本革シート+サンルーフ+助手席パワーシート+16インチアルミ=30.0万円)をオプション装備しなければならないから、V70レザーパッケージはベーシックモデルらしく、本革へのアディショナル・チャージが10万円少ないともいえる(オプション内容も少ないわけですが)。
レザーパッケージには、「ライトサンド」「オーク」「アリーナ」「オフブラック」の4種類がラインナップされる。
Volvo for Life
外板「スクラブグリーンメタリック」、内装「オーク」のクルマに乗る。ニューV70になってからシートが立体裁断(?)になり、たっぷりしたサイズはそのままに、850シリーズに由来する旧70時代の平板さはなくなった。適度に柔らかい張りの革が、ラグジュアリー。
ベーシック70のパワーソースは、上級グレード「V70 2.4」と同じ2.4リッター直5DOHC20バルブユニットながら、「2.4」の最高出力170ps/5900rpm、最大トルク23.5kgm/4500rpmと比較して、1400rpm低い4500rpmで140ps、やはり若干低回転の3750rpmで22.4kgmを発生する。モデストな味つけだ。
とはいえ、4000rpm付近までの出力特性は変わらない。V70シリーズは、細かくギアを切った5段ATをもつので、普通に走っていて3000rpm以上回すことはまれだ。だから、街なかで痛痒を感じることは少ない。巨大企業を訴えて刺客に追われでもしないかぎり、動力性能において「2.4にしておけば!」と悔やむことないだろう。
「レザーパッケージ」を選んだ場合の、装備面での「2.4」との目立った違いは、純正ナビゲーションシステム「RTI」を付けられないことと、ホイールが「スチール+カバー」になることぐらいだ。
千葉県は幕張から外房の海を目指す。淡々と、しかし東関東自動車道の比較的速い流れに乗って走ると、V70の美点がよくわかる。特にエクサイトメントはないけれど、フラットな乗り心地、過敏に過ぎないステアリング、リラックスしたクルージングが楽しめる。「どうも自分はいいヤツなんじゃないか」と思えてきて、やたら調子のいい約束を乱発しがちになるのが、困る。ほんわか楽しい「Volvo for Life」ってか。
なお、荷室内に後ろ向きに座る、収納可能な「エクストラシート」が後付け可能になったことも、V70シリーズ共通のニュースだ。7人乗りになる。150cm以下の息子か娘がいる子沢山の家族のために。これまた「Volvo for Life」。
(webCGアオキ/写真=郡大二郎/2001年3月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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