ポルシェ911GT2(6MT)【海外試乗記】
『飛び立つ手前』 2001.03.01 試乗記 ポルシェ911GT2(6MT) ターボ版「RS」ともいえる、ポルシェ911「GT2」。4WDからRRに復帰して、ターボモデル比10%アップの出力を誇るエンジンで、しかも約100kg軽いボディを加速する。その速さや、推して知るべし。自動車ジャーナリスト、河村康彦が、イタリアで試乗した。200km/hまで12.9秒!
「史上最強最速のポルシェ911」。その称号は、これまで911ターボの頭上に輝いていた。ツインターボ付きオーバー420psのエンジンに、4WDシャシーを組み合わせたこのモデルは、台数限定の自然吸気ハイチューンモデル「911GT3」の運動性能データをわずかながらも確実に凌ぐ1台として、ポルシェ社自らが「最強/最速」と認定してきた。
ところが、911ターボの天下は長く続かなかった。なぜなら、2001年のデトロイトショーで、「911GT2」がベールをぬいだからだ。
ポルシェ911GT2のアウトラインは、「GT3用のRR(リアエンジン、後輪駆動)シャシーに、ターボベースの心臓をドッキングさせたもの」。911ターボ用ユニットにブーストアップなどのカンフル剤が打たれたGT2のエンジンは、なんと! 最高出力462ps/5700rpm、最大トルク63.2kgm/3500から4500rpmという途方もないアウトプットを発生する。
さらに、車重の軽減もGT2の運動性向上に拍車をかけた。ヨンクモデルである911ターボから前輪駆動用のシステムを取り除き、シートをレザー張りのグラスファイバー製に変更、リアシートを撤去することで、ターボモデル比約100kgもの軽量化を実現した。静止状態から100km/hに達するまでわずか4.1秒。200km/hまででも12.9秒しかかからない。最高速度は315km/hにも達するという。まさに、「史上最強/最速の911」である。
「300km/h」「1600万円」超
果たせるかな、ポルシェ911GT2は、とんでもない速さの持ち主であった。
イタリアは“水の都”として知られるベネチアを基点に開催された国際試乗会では、「それなりの場所」を見つけては、462psと63.2kgmの出力を堪能した。排気量1リッター当たりの出力が128psプラス(!)というこのクルマの心臓は、走行スピードに関係なく、とにかく3000rpmという回転数さえキープしておけば、好きなときに明確な加速Gを感じさせてくれる。たとえば、6速、4000rpmでこなす200km/hからですら、アクセルペダルをペタンと床まで踏みこめば、「通常のファミリーセダンの発進加速程度のGをいとも簡単に味わえる」のである。
最高速のデータも掛け値なしと思えた。何しろ、デジタルスピードメーターの表示が「300」を超えた瞬間にも、この怪物は、ハッキリとした加速の意志を示していたからだ。まったくもって、GT2の動力性能には、敬服するしかない。
ただし、オーバー250km/hゾーンでは、「片手でリラックスしたドライブを楽しむ」というわけには行かない。最大の理由は、直進性が優れているとは言えないことで、完全に平坦に見える高速道路上であっても、右に左にと、わずかずつ進路を乱す。ハイスピードでのスタビリティに関しては、明らかに911ターボの後塵を拝する。
ステアリング切りはじめ部分の応答性は、「敢えて控えめにした」という印象だ。これも「300km/h超カー」ゆえの、超高速安定性の確保とハンドリングを天秤にかけた結果と受け取るべきだろう。
軽く、かつ耐フェード性に優れる、と謳われる「セラミックコンポジットブレーキ」は、その言葉通りの、抜群の効き味を証明した。このアイテムがあってこそ、GT2は、ジャンボ機の着陸速度さえ上回る300km/hオーバーの世界を手に入れることができた、とぼくは思う。
911GT2は、2001年9月頃を目処に日本上陸を果たす予定だ。価格は未公表だが、911ターボのそれ、1680.0万円(6MT)を上回る可能性が高いという。
(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン/2001年2月)
拡大
|
拡大
|
拡大
|

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。 -
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ
2026.8.20デイリーコラムフルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。 -
第292回:350SEが運ぶのは幸福か、それとも究極の不幸か…… 『星の時 4K』
2026.8.20読んでますカー、観てますカーブラジルの女性小説家クラリッセ・リスペクトルが1977年に発表した小説を、女性監督スザーナ・アマラウが1985年に映画化した伝説の作品。「メルセデス・ベンツ350SE」がもたらす運命の瞬間を謎めいた手つきで描き出す。
































