プジョー406スポーツ(5MT)【ブリーフテスト】
プジョー406スポーツ(5MT) 2002.06.28 試乗記 ……317.0万円 総合評価……★★★★特別な普通
「206」「307」といったニューシリーズ日本上陸の影に隠れがちだったハンサムカー「406」。本国フランスの交通事情にあわせて高速巡航にふられたATセッティングやギアリングが災いして、わが国都市部では、「カネはわからんがチカラはなかりけり」な印象を否めなかった。しかし、次期モデルが噂されるデビュー7年目にして、ついにマニュアルモデルが正式導入! 「限られた顧客ニーズであっても(中略)市場にミートしたマーケティングレスポンスを実践」(プレスリリース)するプジョー・ジャポンに拍手ぅ!!
さて、サブネーム「スポーツ」のよりどころは、従来の4気筒モデルより0.2リッター大きなエンジンと16インチの足まわり。ドアを開ければ、ファブリックをベースにサイドに革を用いた「スポーツシート」と、シートの色に合わせたアクセントパネルがインストゥルメントパネルを横切る。控えめな演出だ。
吸気側可変バルブタイミング機構を備える2.2リッターは、バカ力はないが素直に吹けあがる。“手漕ぎ”で運転する甲斐ある、目元に負けぬ涼やかなエンジン。路面の情報を伝えつつ、しかし滑らかな乗り心地。ハンドリングと直進性の高次のバランス。軽やかなドライブフィール。「スポーツ」は、406シリーズの美点はそのままに、トランスミッションに起因する痛痒感を取り去った、(一部)クルマ好きにとっての理想のセダン。
欧州ではごく“普通”のクルマだが、AT天国ニッポンでは十分“スポーツ”。価格は、2リッターAT車より17.5万円高の317.0万円。いうまでもなく、「トヨタ・ウィンダム3.0X(3リッターV6/320.0万円)が買える!」ではなく、「アルファロメオ156TS(2リッター直4/359.0万円)」や「BMW318i(2リッター直4/368.0万円)より安い!!」と考えるべきだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
406シリーズは、405の後を受け、まずセダンが1995年に登場。96年にV6モデルとオートマチック、そしてブレーク(ワゴン)が加わった。また、同年のパリサロンでクーペがお披露目された。
99年にセダン、ブレークがフェイスリフトを受け、ハッキリとしたグリル、クリアレンズのヘッドライトが与えられた。日本には、2リッター直4と3リッター(厳密には2.9リッター)V6の「セダン」「ブレーク」が輸入される。クーペは、3リッターV6のみ。
2002年6月19日に、2.2リッター直4と5段MTを組み合わせたセダン「Sport」が追加導入された。
(グレード概要)
406「スポーツ」は、日本では406シリーズ中唯一のマニュアルモデルとなる。左ハンドルのみ。搭載される2.2リッター直4は、本国ではフラッグシップ「607」のベーシックグレードにも使われるエンジンだ。フランスでは、2000年から406シリーズに搭載される。
車内では、革とファブリックのコンビネーションをとる「スポーツシート」と、ブルーのアクセントトリムが特徴となる。タイヤは、他グレードより1インチ大きな「205/55R16」を履く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
細かいスクラッチの入ったブルーの(光の当たり具合によっては紫っぽく輝く)樹脂製トリムが横切る。つや消し黒のシボで覆われたダッシュボード上面はともかく、メーターまわり、センターコンソールなどの表面は少々プラスチッキーだ。メーターには、シルバーの縁取りが入る。「熱線入り電動ドアミラー(格納式)」「キーレスエントリー/集中ドアロック」「クルーズコントロール」はじめ「オートエアコン」「ラジオ+6連奏CDチェンジャー」など装備満載。センサーが外部の明るさを感知してヘッドランプを自動的に点灯/消灯する「オートヘッドライト」、イグニッションをオフにしても、約50秒間ヘッドライトが点灯しつづける「フォローミーホーム」機能も搭載する。
(前席)……★★★
織りの荒いファブリックと、サイドに革を用いたシート。声高に「スポーツ」を主張することはないが、見かけ以上に上体をホールドしてくれる。座り心地はほどほどで、たとえばルノー車のように感銘を受けることはないが、かつての106や306のようにコストダウンが疑われる平板さからは脱却した。「スポーツ」は、運転席、助手席とも電動パワーシートにして、アームレストが備わる。
(後席)……★★★
膝前、頭上とも、文句ないスペースが確保されたリアシート。このクラスのセダンとして当たり前のことながら、大人用として立派に使える。中央席にもしっかりしたヘッドレストと3点式シートベルトが備わる。ロングドライブにおける快適性はともかく、センターシートも実用的だ。細かい不満は、乗り降りの際に、Cピラーの角度が比較的急なので頭をブツけがちなことと、ドア内側の取っ手が支点に近いので、閉めるのに意外な力が要求されること。
(荷室)……★★★
床面最大幅=115cm、奥行き105cm、荷室の高さ50cm。妥当な広さ。トランクリッドのヒンジが荷物に干渉しないよう覆いがつけられる。後席は分割可倒式かつスキーなどの長尺モノを通すトンネルが設けられる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2リッターエンジンのボアを1mm広げストロークを8mm伸ばし(ボア×ストローク=86.0×96.0mm)、2.2リッターとしたEW12型ユニット。吸気側に可変バルブタイミング機構を組み込んでトルクバンドの拡大と、2本の相互逆回転バランサーシャフトを装備して回転フィールの向上を図った。低回転域からモリモリ力を出す、というマッチョなタイプではないが、さわやかな吹け上がりと、自然なパワーカーブが印象的。5段MTとのマッチングもよく、というより、そもそもマニュアルでドライブされることを前提に開発されたとおぼしき気持ちよさ。MTの正当派セダン。日本ではすっかり希少になった車種だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ハイウェイでは路面の凹凸をしなやかにいなしながら、ボディはフラットに、ピッとまっすぐ走っていく406スポーツ。すばらしい乗り心地。スタビリティ高く、しかもロードインフォメーションを過不足なくドライバーに伝える繊細さをあわせもつ。“曲がり”ではFFを感じさせない、シャープな軽やかでハンドリング。“日常のスポーティ”が溢れる。「乗り心地」「ハンドリング」とも満点!! 気になるのは、新車のフィールがどれだけ持続するか、だ。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年6月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:1768km
タイヤ:(前)205/55R16 91W/(後)同じ(いずれもPirelli P6000 Powergy)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(4):山岳路(1)
テスト距離:163.0km
使用燃料:−−
参考燃費:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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