第242回:欧州レクサス最新事情 欧州ではレクサスがジャガーより売れている!
2012.04.27 マッキナ あらモーダ!第242回:欧州レクサス最新事情欧州ではレクサスがジャガーより売れている!
あの「レクサス晴れ舞台」から1年
早いもので、モナコのアルベール2世大公が元五輪競泳選手のシャルレーヌ妃と結婚式を挙げてから、2012年6月で1年になる。ボクの記憶に残っているものといえば、「レクサスLS600hL」のランドーレットである。
そのLS600hLは後日モナコ旧市街の海洋博物館に納められたと聞いていたが、今回モナコのイベント会場に貸し出されて公開されるという。
イベントの名は「トップマーク・モナコ2012」。自動車、ボート、腕時計から果ては子女の教育コンサルタントまで、高級なものを一堂に集めたモナコらしいイベントで、今年で第9回だ。大公自身が名誉総裁を務め、期間中はF1モナコグランプリで有名なヨットハーバーからプール周辺を自動車の試乗コースに締め切るという、ゴージャスな全4日間企画である。
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トヨタ担当者の努力のたまもの
フランスの町、ロクブリューン・カプマルタンとの国境には変則的なかたちをしたロータリーがあって、ボクはいつも回っているうちに間違い、あれよあれよという間にフランス側に戻ってしまう。「お前のような奴はモナコに来るな」と言われているようで悲しくなる。
それはともかくレクサスLS600hLは、会場入口の真正面で来場者を迎えるように展示されていた。解説によると、このクルマは、アルベール2世大公の環境問題に対する深い関心を象徴したものである。
大排気量高級車がいつも往来していることで有名なモナコの国だが、実はハイブリッド車や電気自動車(EV)購入の際の奨励金制度は、いち早く導入された。ちなみにモナコ国内にはすでに600台以上のEVもしくはハイブリッドカーが走っており、400基の充電ポールが設置されている。2009年には三菱の電気自動車「i-MiEV」も4台関係機関に納車された。
充電ポールを迅速に設置し維持できる潤沢な国家財政と、それがいたずら等で破壊される不安が少ない良好な治安が背景にあるとはいえ、国土面積わずか2平方キロメートルの国であることを考えると、環境対策車に対しての真剣な取り組みが感じられる。同時に、日本の高級ブランドをいかに認知させるか苦心していた他メーカーの担当者を覚えているボクとしては、公家納入実現に奔走したトヨタ担当者の努力も感じざるを得ない。
ブリュッセルに本拠を置くレクサスのエンジニアとともにクルマの改装にあたったのは、VIP用防弾仕様車や装甲車製作で40年の歴史を誇る多国籍企業キャラット・デュシャトレ社である。総製作時間は2000時間に及んだという。
実車を観察する。ショーファードリブンのクルマというと、古くは運転席には耐久性を重んじてレザーを、客席には肌触りがよく四季を通じて心地よいモケットが選ばれてきたものだが、この特製LS600hLのシートは全席白のレザーである。
そして結婚式当日のテレビ中継では見られなかった透明ルーフが車体後部に掛けられている。スペックによると、厚さ8mmのポリカーボネイト製で、重さはわずか26kgという。航空分野に精通したフランスのサプライヤーによって製作されたとのことだ。
もし結婚式当日が雨だったらこの透明ルーフが重宝したわけだ。天気が悪くならないと自社作品が衆目にさらされないサプライヤーとしては複雑な思いでパレード中継を見ていたに違いない、とボクは同情している。
レクサス人気の先導役は?
アルベール2世大公のLS600hL見学はこのくらいにして、イベント会場に足を向けよう。
フェラーリ、ベントレー、フィスカーなど各国の高級車展示に混じってレクサスのブースもあった。地元モナコのディーラーが出展したものである。加えて試乗コーナーには「CT200h」が用意され、F1グランプリの準備がほぼ整ったコースをテストドライブできるようになっていた。
クルマの横を見ると、モナコ公家の紋章が描かれたプレートが誇らしげに掲げられている。モナコには「公家ご用達(ようたし)」の制度がある。クルマもその例外ではなく、例えば国内にあるメルセデス・ベンツのディーラーでは長年セールスマンひとりひとりの名刺に公家の紋章が印刷されている。レクサスも晴れて、その栄に浴せたというわけだ。
脇に待機していたセールスマンに声をかけると、美しい発音のフランス語で対応してくれた。彼によるとレクサスモナコは7年前の2005年に開設されたとのこと。ウェブサイトを訪ねると、ショールームはモナコのメインストリートのひとつであるイタリー通りにあって、メカニックも含め7人体制である。レクサスフランスの一拠点という位置づけだ。
モナコにおけるレクサスの経緯を伺うと
「発足当初は安易な道のりではありませんでしたが、昨年の販売は年間100台レベルに達しました」
そのうえで、モナコでレクサス人気の先導役となってくれたのは「米国人や英国人のお客様でした」と証言する。
「自国でレクサスの成功を目のあたりにしてこられた方々だったのです」
人口の2割しか国籍保持者がいないモナコで、図らずもその国際性がレクサスのスタートに寄与したというわけである。
レクサスは欧州全体でも奮闘している。2011年は2万7016台が欧州圏内で登録された。前年比にすると53%増で、この伸び率はフィアットをバックにして拡販を図ったジープに次ぐ好成績である。また高級ブランドでは、ジャガー(2万3074台)よりも多く登録されたことになる。
未来は明るい?
ラインナップ中の売れ筋モデルは「RX」だという。これはイタリアでも同じ現象だ。セダン系の奮闘もこれから望みたいところだが、同様にプレミアムブランドを担当する他社の関係者によれば、「SUVはともかく、歴史あるメーカーがうごめく欧州セダン市場でその地位をいきなり獲得するのは難しい」と分析する。ボクの考えも同じで、レクサスが欧州圏で定着するかどうかの鍵は、そこにあるといえよう。
だがふと見ると、若い女子たちが「レクサスIS C」の横で交互に写真の撮りっこを始めた。メルセデスやBMWに比べれば希少なモデルだからといううがった見方もできるが、どちらかというと純粋にスタイリッシュさで選んでいると見た。だとすれば、すぐ脇には派手なフェラーリやランボルギーニなども並んでいるなかで、レクサスの未来は暗くないぞ。
あとはアルベール2世大公にも、世界のVIPに会うたび「レクサス、いいですよ」と大いに語っていただこう。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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