アウディQ5ハイブリッド クワトロ(4WD/8AT)【試乗記】
そろそろ「次」が見てみたい 2013.04.04 試乗記 アウディQ5ハイブリッド クワトロ(4WD/8AT)……798万円
アウディが誇る最新のハイブリッドSUVに試乗。ラインナップを拡大し、日本勢に追撃を仕掛けるドイツ製ハイブリッド車の実力を探る。
攻勢に出るジャーマンハイブリッド
新着の「Q5ハイブリッド」は、アウディの真価を知る本当のファンにとって、現時点における最良の選択に違いない。まるで蜜の海を泳ぐような滑らかきわまる走行感覚に身を委ねながら、新時代への扉を開く名誉も担えるのだから、715万円も払う理由は大いにある。誰かがパイオニアの役目を引き受けなければ、何も進まないからだ。
ハイブリッド車(HV)界を圧倒的にリードしている(はずの)日本を追って、遅ればせながら牙をむき出したドイツ勢。日本に向けても矢継ぎ早に重量級の爆弾をブチ込んできた。この傾向は今後さらに強まるはずだがハードルも高いという話題には、最後に触れる。
Q5ハイブリッドの基本構成は至って簡潔。エンジンは多くのアウディに搭載されている2.0TFSI。4気筒1984ccツインカム16バルブ・ガソリン直噴ターボの211psで、普通なら3500cc級に匹敵する35.7kgmもの大トルクを1500〜4200rpmという広い回転域で絞り出す。これとお家芸のフルタイム4WD機構(クワトロシステム)の組み合わせで、アウディならではの走行感覚は約束される。
HV化の主役はZFから供給される8段AT。その前端にあったトルコンに代えて円盤状の交流同期モーター(40kW=約54ps、210Nm=約21.4kgm)と多板クラッチを仕込んだもの。このクラッチは二重構造のメインドライブシャフトとつながっており、電子制御によってモーターだけ、エンジンだけ、両方共同という3種の走行パターンを切り替える。いわば“カセットぽん”式の組み合わせなので、ボンネットを開いて見ても、下面から眺めても、特にモーター類の存在は発見できない。後部オーバーハング部分にバッテリーがつり下げられているのと、オレンジ色の専用被服を施された高圧コードによって、やっとHVであることがわかる程度。既成のエンジン車をHV化するに当たって、最も改造範囲が少なくてすむ、効率の良い作り方だ。
ハイブリッド×クワトロの妙
運転した印象はまったく普通。そおお〜っと踏めばモーターだけで音もなく発進するが、そのままの状態を保つには我慢が必要で、つい少しばかり踏み込んでエンジンを目覚めさせてしまうことが多い。あとは慣れ親しんだガソリン・アウディそのもの。HVらしさを感じさせるのは、情報表示モニターにエネルギーの流れが図示されるのと、惰力走行や制動時にエンジンが止まり、エネルギーメーター(普通のタコメーターの位置にある)の針が充電側に振れることぐらいだ。
もう少し注意深く観察すると、加速時にそれほどエンジンが頑張っていないのに、妙にトルクが上積みされている“電気感”を読み取れるかもしれない。こんな時、エンジンに対してモーターがいかに強力なブースターかを思い知らされ、人によっては深くハマることになる。
ところでアウディのHVといえば、すでに「A6」と最高級の「A8」が知られているが、8段ATやモーターなどの組み合わせはすべて共通。ただしA6とA8がFF方式なのに対し、Q5だけはSUVであるためかお家芸のフルタイム4WD(クワトロシステム)を守っている。これは、未舗装路や雪道だけでなく、普通に走るにも重要なポイントだ。前述の通りモーターのトルクに余裕がありすぎ(特に静止からの発進時)、FFではトラクションコントロールが追いつかず、一瞬キュキュッと空転させてしまうことも多い。それがQ5ハイブリッドでは難なく吸収され、いつでも、どんな路面でも、何も障害などないかのようにスラッと加速できる。前輪にだけ大トルクの負担をかけるわけではないから、コーナリング中のアンダーステアも非常に弱く、行きたい方向を脳裏に浮かべるだけで、素直にそちらに行ってくれる。
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ハイブリッドというよりも……
注目の燃費(プレミアムガソリン)は、走行パターンのいかんにかかわらず、おおむね10〜11km/リッターに終始。重い渋滞の中で6km/リッター程度。平均してガソリンQ5より20%ほどの改善だろうか。率直に言って、「プリウス」や「アクア」に慣れきった日本人が驚くほどではないが、これほどの差は、やはりHV化なしには考えにくい。
こうして見ると、本格HVではなく「電動アシスト付きエンジン車」と言えなくもない。これは「BMWアクティブハイブリッド3/5/7」「ポルシェ・カイエン/パナメーラ」「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」にも共通することで、実はZFの8段AT「改」によるHV化は、基本部分ですべて共通なのだ。現時点でのドイツ勢の考え方が、「電気の加勢はこの程度で」ということで、合理的に共通のコンポーネントを活用しただけなのだろうか。それとも、やがて訪れるに違いない厳しいCO2排出規制本格化に備え、新技術の第二段階に進むための体力を温存するため、“取りあえず”一歩を踏み出したということなのだろうか。
すでに地平のかなたには、純粋EV(アウディの場合は「eトロン」)の姿も見えだした今だからこそ、もっと従来の常識を打ち破る、驚異の低燃費ジャーマンハイブリッドの登場に期待したい。
(文=熊倉重春/写真=中村宏祐)

熊倉 重春
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