スズキ・スペーシアX(FF/CVT)
ハイトワゴンの新基準 2013.05.29 試乗記 スズキがハイトワゴンの分野で勝負をかけてきた。大きくて広いのに、軽量で燃費がいいのが売りの新型「スペーシア」。これがあると、クルマ生活はどう変わる?登録車より魅力的
「スペーシア」はスズキのスペース系ハイトワゴン「パレット」の新型だ。モデルチェンジを機に名前からも広さを感じさせる車名をつけたという。
軽自動車は、「スズキ・アルト」や「ダイハツ・ミラ」のようなハッチバック、「スズキ・ワゴンR」や「ダイハツ・ムーヴ」のようなハイトワゴン、それに「ダイハツ・タント」や今回のスペーシアのようなスペース系ハイトワゴンの3種類に分けられる。ちなみに、ホンダはハッチバックとハイトワゴンの中間に位置する「N-ONE」、ハイトワゴンとスペース系ハイトワゴンの中間に位置する「N BOX」をラインナップし、スズキとダイハツだらけの軽自動車界に久々に割って入った。
スペーシアに関して、みんな大好きなお金の話から。今回試乗したのは、NA(自然吸気)エンジン搭載の「X」のFF版(132万3000円)。メーカーオプションがスマホ連動カーナビをはじめ16万8000円分、ディーラーオプションがETC車載器とフロアマットの3万8273円分付いて、計152万9273円。
最も燃費に有利な2WDのNAエンジン搭載車から、最も不利な4WDのターボエンジン搭載車まで、スペーシアは全モデルでエコカー減税(免税)が適用されるため、自動車取得税、自動車重量税はかからない。購入時に上乗せされるのは、軽自動車税(7200円)と自賠責保険(3万7780円)、リサイクル料金(1万150円)くらい。テスト車だと乗り出しでだいたい160万円の買い物だ。
160万円出せば、「トヨタ・ヴィッツ」「ホンダ・フィット」「日産マーチ」の新車が買え、軽自動車の価格としては安くない。けれど、現在の軽自動車が以前の軽自動車と完全に別物なのも事実。動力性能、安全性、経済性、そして利便性を総合して比較しても、同価格の登録車より魅力的なモデルも多い。スペーシアもその一台で、160万円で乗り出し可能な数ある新車の選択肢から、積極的に選びたいモデルの一台だなと感じた。
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自然吸気エンジンでもここまで走る
選びたい一番の理由は、燃費のよさだ。JC08モード燃費は29.0km/リッター。「スズキ・アルトエコ」や「ダイハツ・ミライース」のように、コンパクトで質素な軽自動車は、30km/リッター超えを果たしているが、ハイトワゴン系もここまできた。今回の走行では、一般道と高速道路を織り交ぜ200km前後走行し、18~19km/リッター前後だった。
一般道では、停止前の13km/h以下でエンジンを停止するアイドリングストップ機能や、減速時の運動エネルギーを回生して電気エネルギーとしてリチウムイオンバッテリーにため込み、そのエネルギーを走行時に電装品に使うエネチャージ、そして何より850kgという軽い車重のおかげで、渋滞に巻き込まれても20km/リッターを割らない。一方で、高速道路では流れに乗ろうとすると、エンジンを高回転まで回す機会が増え、空気抵抗も影響してくるため、燃費が見る見る下がる。
話は脱線するが、軽自動車はどんどん豪華になって、重くなった結果、価格はリッタークラスのコンパクトカーを上回り、燃費は押され気味となった。と同時に、軽自動車の優遇税制が批判の的になり始めた。実際、サイズの制限があるとはいえ、装備は充実、ターボによって動力性能も十分となり、価格はコンパクトカーより高く、燃費もよくないとなれば、もはや優遇する正当な理由はない。
もちろん、軽自動車の税制が適正で、登録車の税制が不当に高いのだという意見もある。どっちが正しいか答えを出すのは難しいが、そろそろ軽自動車も登録車も同じ税体系に入れた上で、多くの人が公平感を抱ける税体系を新たに組み立てるべきではないだろうか。
近頃の軽自動車の急激な燃費向上は、ライバルとの競争の激化とともに、軽自動車の優遇に対する批判を逃れるためという背景もあるはずだ。ま、理由はどうあれ、ユーザーにとっては、燃費がよくなることは歓迎だ。
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スペーシアに話を戻すと、NAでもここまで走るのかと驚かされた。発進から望む速度まで、一切痛痒(つうよう)がない。副変速機付きのCVTとボディーの軽量化によって、このサイズのクルマを過給器なしの660ccで動かせるようになったということか。一家の2台目、3台目として使うのであれば、高速道路を使う機会も少ないだろうから、NAで十分だ。
あきれるほどの広さ
ハンドリングは変な癖がなく、ごく普通。ステアリングを切れば曲がるし、背の高さに起因する揺られ感もない。走りの楽しさを望んで買うクルマではないので、普通以上の何を望もうかという話だ。
ひとつ気になったのは、停止前の13km/h以下でエンジンが止まるのだが、停止寸前にブレーキを少し緩めて停車時のおつりを防ごうとすると、エンジンがかかってしまうことがあった。かかってしまっても特に問題があるわけではないが、余計な始動なので気になる。アイドリングストップ機能は、必要な時に再始動できないと危険なので、少しでも減速を中止するような動きがあれば即座に再始動するようにしつけられているからこそ起こる事象で、難しい問題ではあるのだが。
スペーシアというだけあって、スペースはサイズを考えると、あきれるほどに広い。リアシートは左右独立してリクライニングさせられるほか、座面を前後に170mmスライドできるので、乗員スペースと荷室スペースをケース・バイ・ケースで使い分けることができるし、荷室とツライチになるよう格納することもできる。
リアハッチは開口部の天地が1110mmあり、確かめてはいないが、カタログによれば、27インチのママチャリを飲み込んでしまう。必要とする人にとって広さは最高の性能だ。
とにかくこの辺りは日本車の得意分野で、“走りの楽しさ”という、コストがかかるわりに満足してもらいにくい目標を除外した途端、クルマづくりはとても自由になるというよい例だ。
軽自動車を選ぶ際、2WDか4WDかは、住む地域によって決まるが、ターボかNAか、迷う。けれど、今回、NAのスペーシアに乗って、NAでいいなと感じた。スペーシアがあれば、もう1台は思い切り楽しさに振れるというもの。スペーシアと「ロータス・エリーゼ」なんて、日本ならではの実にすてきな組み合わせじゃないか。
(文=塩見智/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
スズキ・スペーシアX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1735mm
ホイールベース:2425mm
車重:850kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:52ps(38kW)/6000rpm
最大トルク:6.4kgm(63Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:29.0km/リッター(JC08モード)
価格:132万3000円/テスト車=149万1000円
オプション装備:スマートフォン連携ナビゲーション=7万3500円/ホワイト2トーンルーフ=4万2000円/ディスチャージヘッドランプ=5万2500円
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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