スズキ・スペーシア ハイブリッドX(FF/CVT)/スペーシア カスタム ハイブリッドXSターボ(FF/CVT)
ひたむきな実用車 2023.12.06 試乗記 スズキの軽スーパーハイトワゴン「スペーシア」がいよいよモデルチェンジ。3代目となる新型は、躍進した先代から成功を引き継げるのか? ライバルに対するアドバンテージとは? 外身はキープコンセプト、中身は大きな進化を遂げた3代目の実力をリポートする。いつの間にか2位争いの常連に
新しいスペーシアは、キープコンセプトのモデルチェンジといっていい。先代が“スーツケース”なら新型は“コンテナ”と、そのモチーフに微妙な変更はあるものの、強度を高める波板加工を模したツール感あるデザインテイストは、新旧でよく似ている。
軽自動車(以下、軽)ゆえに当然のごとく全長と全幅は不変だが、1785mmという全高も先代のそれを踏襲。プラットフォームも先代の改良型で、パワートレインでは自然吸気(NA)エンジンと変速機が新しいが、ともに2020年の「ハスラー」から投入された最新世代へのアップデートだ。
なぜここまで明確なキープコンセプトかというと、それは先代スペーシアが成功したからだ。初めてスペーシアを名乗った先々代は、キャビンを絶妙にしぼったクルマらしいデザインや、リアががっちり踏ん張る正確で俊敏な操縦性、そしてクラストップの低燃費が美点だったが、売り上げ面では「ホンダN-BOX」と「ダイハツ・タント」に大きく水をあけられていたことは否めない。そんな先々代から一転して、全高を高めて四角四面のプロポーションを取り入れた先代は、販売台数では王者N-BOXに次ぐ2番手争いの常連となった。
とくに標準モデルに早くも見慣れた感があるのは、スクエアなヘッドライトと水平メッキグリルによる顔つきまで先代に酷似しているからだ。いっぽう、先代ではギリギリまで大面積化されたグリルが特徴的だったカスタムは、新型ではその面積が縮小されて、グリル自体もシンプルな意匠となっている。
最近の軽カスタム顔のハヤリとして、あまり大げさなグリルデザインを好まなくなっているのも事実だが、「先代のカスタムは、ホンダやダイハツに追いつき追い越せと、より目立とう、より派手にしよう……という意図があった」とは開発担当氏も認めるところだ。新型カスタムのハンサム顔は、いわば成功者の余裕といったところか(笑)。
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ニッポンの世相を表すインテリア
プロポーションや外見はキープコンセプトでも、内装が大幅刷新されているのは、ほぼ同時期に世代交代した新型N-BOXにも通じるところだ。軽スーパーハイトのパッケージレイアウトはほぼ煮詰まりきっているが、インテリアには時代によって移り変わる人々の生活スタイルが色濃く反映される。
新型スペーシアのリアシートは、軽でも増えているロングドライブでの快適性や、“後席に荷物を置く”という生活習慣を考慮した新機軸「マルチユースフラップ」の採用に加えて、今回からアームレストも追加された。そのためゼロから新設計されているという。
実際、絶対的な座り心地はまあ先代と大きく変わらないが、例のフラップをふくらはぎに軽く当たるように調整して、合わせてアームレストをおろせば、着座姿勢が適度に安定する。先代では「長距離ドライブすると、後席に座っている人が、もぞもぞと落ち着かない」のが課題だったらしい。
さらに、新しいインテリアには“コロナ禍”と“レジ袋有料化”という、ここ数年の世相が多大な影響を与えている。たとえば助手席前の「ビッグオープントレー」は、コロナ禍による車内飲食やテイクアウトの増加を意識したものだ。それはコンビニ弁当で最大級(スズキ調べ)の“ざるそば”までピタリと平置きできるサイズとなっており、車内での飲食に役立つのはもちろん、購入した弁当類をレジ袋に入れずに持ち込んでも安定して置くことができて、そのまま走っても傾かない。シートバックテーブルも飲食にストレスなく使えて、さらにスマホ/タブレットを立てられるように、わざわざ新開発された。
そのいっぽうで、以前のお約束だったコンビニフックが、インパネ周辺から消えたのも世相か。今回はそれより除菌スプレーや小型ウエットティッシュ、リップクリームなどの置き場、あるいはUSBポートが優先されたようだ。
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乗れば感じるスズキのこだわり
さらにインテリアでいうと、先代スペーシアは「N-BOXより安っぽい」とショールームでさんざん指摘されたらしい。それもあって新型は、カスタムのダッシュボードにあしらわれるタマムシ加飾パネルだけでなく、内装全体の質感向上が明らかだ。ダッシュボード表面もあえて伝統的な革シボではない、テカりにくい模様にするなどの工夫が見られる。一部にTFTカラー液晶を使ったデジタルメーターも全車標準。ステアリングホイールも新デザインで、上級グレードにはステアリングヒーターがつくし、電動パーキングブレーキはスズキの軽で初採用となる。
今回はメディア試乗会での短時間ドライブになったが、走りの完成度はまずまず高い。新型N-BOX同様、フラットなダッシュボードやより細くなったピラーからの前方視界も良好である。
今回はとくに前後席の会話明瞭度を中心とした静粛性と、後席の快適な乗り心地に配慮したという。高速でのロードノイズこそ新型N-BOXにはわずかに及ばないものの、大きく引けも取らないくらいには静かだ。
歴史的にステアリングの手応えや接地感を重視してきたスズキは、ホンダやダイハツよりリアサスペンションが硬めで、それが市場では「後席の乗り心地がよくない」という声につながっていた。それもあって、スズキは先代スペーシアあたりからリアを柔らかめに調律するようになってきた。新型スペーシアではリアのバンプストッパーをより短く柔らかくするなど、その傾向を強めている。
実際、中低速域では前記の静粛性もあいまって快適性が増した感があるものの、ステアリング操作への反応は、よくも悪くもより穏やかになった。それでも接地感などが、いまだにホンダやダイハツより濃厚なのはスズキらしい。シャシー開発担当によると「外からの入力に対する姿勢変化は、競合車より小さいはず。そこはスズキのこだわり」だそうである。
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ライバルに差をつける装備の先進性
従来は、どちらかというと出遅れ感が否めなかった先進運転支援システムについては、この新型スペーシアから投入された「デュアルセンサーブレーキサポートII」で、スズキも一気に最新鋭レベルに飛躍した感が強い。そのシステム内容はミリ波レーダーに広角単眼カメラを組み合わせたもので、軽では日産・三菱とならんで、基本的な検知性能がもっとも高いタイプのひとつといっていい。ちなみに他の競合に目をやると、最新軽用の「ホンダセンシング」は基本的に広角単眼カメラのみ、ダイハツの最新版「スマートアシスト」はステレオカメラである。
今回はさすがに自動緊急ブレーキの類いは試せなかったが、高速でのアダプティブクルーズコントロールのマナーは優秀で、車線中央を積極的に維持するステアリング制御も悪くなく、日産や三菱のそれに十分に対抗できる。前記のように前後席の会話にもストレスはなく、一家にこれ一台のマイカーとしての適性は、新型で間違いなく向上している。
また、「スズキコネクト」も使えるメーカーオプションの最新9インチナビは、全方位モニター映像を映せるうえに、スマホやドラレコとの連携、外付け機器やスマホの動画を閲覧できるHDMI入力にも対応していて、オプション価格は19万5800円。かつては「軽に高性能ナビなんてぜいたく品」といわれたものだが、最近の軽スーパーハイトワゴンでは、最高級のアフター品をつけるユーザーも多いという。しかし、新型スペーシアでは「豊富な機能を考えれば、メーカーオプションのナビがいちばんコスパが高い」と担当者も絶対の自信があるそうだ。
先代スペーシアがモデル末期までしっかり売れた背景には、SUV風の「スペーシア ギア」の存在も無視できない。そのギアの新型にまつわる情報がまったく出ていないが、今回の取材でお会いした複数の開発担当者の感触からすると、新型ギアは確実に存在しており、発売もそう遠くない……と、あくまで筆者の個人的予測として申し上げておく。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スズキ・スペーシア ハイブリッドX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1785mm
ホイールベース:2460mm
車重:880kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:49PS(36kW)/6500rpm
エンジン最大トルク:58N・m(5.9kgf・m)/5000rpm
モーター最高出力:2.6PS(1.9kW)/1500rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC350+)
燃費:23.9km/リッター(WLTCモード)
価格:170万5000円/テスト車=214万8960円
オプション装備:全方位モニターつきメモリーナビゲーション スズキコネクト対応通信機装着車(19万5800円)/セーフティープラスパッケージ(6万6000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>ファイングリッド(2万7060円)/ETC2.0車載器(4万6640円)/ドライブレコーダー<前方・後方録画用>+接続ケーブル(9万9880円)/HDMI接続ケーブル(8580円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:494km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スズキ・スペーシア カスタム ハイブリッドXSターボ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1785mm
ホイールベース:2460mm
車重:910kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64PS(47kW)/6000rpm
最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/3000rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ヨコハマ・ブルーアースES32)
燃費:21.9km/リッター(WLTCモード)
価格:207万3500円/テスト車=251万1960円
オプション装備:ボディーカラー<インディゴブルーメタリック2 ブラック2トンルーフ>(6万0500円)/全方位モニターつきメモリーナビゲーション スズキコネクト対応通信機装着車(19万5800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>レイヤードストラータ(2万7060円)/ETC2.0車載器(4万6640円)/ドライブレコーダー<前方・後方録画用>+接続ケーブル(9万9880円)/HDMI接続ケーブル(8580円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:570km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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