BMW 335iグランツーリスモ スポーツ(FR/8AT)
実用的かつ個性的 2013.08.20 試乗記 「3シリーズ」に新たに加わったセダンベースの5ドアハッチ「グランツーリスモ」。ワゴンモデルである「ツーリング」にはない魅力を探った。5シリーズ並みの“押し出し”
自動車業界のトレンドセッターたるBMWがリリースした新しい車型が、「グランツーリスモ(GT)」。「5シリーズ」には2009年、「3シリーズ」には2013年から加わった。新しい車型とはいっても、要はセダンベースの5ドアハッチだが、ストレートにハッチバックと呼ばないのが、プレミアムブランドのズルいところ。
大きなハッチを持つことで、荷室へのアクセスが飛躍的に向上するのがこの手のクルマの利点だが、後ろに積むのは、あくまで遠い旅先で長逗留(とうりゅう)するための荷物(ということになっている)。BMW GTは、グランドツアーを楽しむための道具であって、仕事道具をたくさん積めたり、日々の雑事をこなすのに便利……なわけじゃあ、ありません。バイエルンの自動車メーカーは、そう言いたいわけだ。そういえば、かつての3ドアハッチは、「Ti」ことツーリングインターナショナルを名乗っていたっけ。「国境を越え、大陸を駆けぬける歓び」。うーん、カッコいいぜ、ビー・エム・ダブリュー!
さて、今回の試乗車、「3シリーズ グランツーリスモ」にも、5シリーズ同様、ノーマルモデルよりストレッチした車台が使われる。ホイールベースは、2810mmのセダンより110mmも長い2920mm。ドンガラの大きなクルマが好まれる、中国市場向けのプラットフォームである。
上屋も立派なサイズで、全長4825mm、全幅1830mm、全高1510mm。背が高くて塊感があるので、普通の5シリーズに勝るとも劣らない“押し出し”がある。
日本でのラインナップは、
・320iグランツーリスモ:494万円
・328iグランツーリスモ:599万円
・335iグランツーリスモ:730万円
「ツーリング」こと3シリーズワゴンと単純に価格だけ比較すると、GTはワゴンより、順に23万円、8万円、16万円高となる。グランツーリスモの荷室容量は、ツーリングより25リッターも大きい520リッター。トレンドを逃したくないビマー(BMWオーナー)の方々が「いま買う!」としたら、「ツーリングよりグランツーリスモ」になるんじゃないでしょうか。
存在感のあるボディー
『webCG』スタッフとの合流地点に止まっていたのは、渋い「ミネラルグレー」(8万円のオプション)にペイントされた「335iグランツーリスモ スポーツ」。3シリーズ グランツーリスモは、それぞれのグレードに、「ベースモデル」に加え、「スポーツ」「モダン」「ラグジュアリー」と3つのデザインパッケージをラインナップする。「デザインライン」と呼ばれ、エクステリア各部の加飾やホイールデザイン、内装のカラーやマテリアルなど、あらかじめ異なったセットで用意される。機関面での違いはない。いずれもベースモデル+20万円の750万円。
試乗車のスポーツの場合、ベースモデルと比べると、キドニーグリル内がブラックアウトされた粗いバーになり、フロントフェンダーのエアアウトレットも黒く塗られ、ホイールは17インチから18インチにアップされる(試乗車は、オプションの19インチ装着。13万円)。
ドアを開ければ、ブラック内装にエアラインの入ったアルミパネルの組み合わせ。インテリア各部に赤いハイライト入りという、派手スポーティーな仕様だ(2万7000円のオプション)。黒と赤がスポーツのテーマらしく、赤いハイライトをグロスブラックにすることもできるし、真っ赤なレザーシートを選ぶこともできる。他のグレードに対し、スポーツには、サイドサポートの調整が可能なスポーツシートが標準で装備されるのが、唯一の機能面での違いといえようか。ちなみに、スポーツといえども、パドルシフト機能は2万2000円のオプションとなる。
存在感のあるグランツーリスモのボディーをグルリと見まわし、最大の特徴たるハッチゲートを開いてみると、ギッシリと荷室に撮影機材が積まれていた。「だから、そういうクルマじゃないんだってば……」とおかしく思いながら、四角く、実用的なラゲッジスペースに感心する。ゲートを閉めると、中が見えなくなるのもいい。「次のカメラカーに」ともくろんでいるリッチなフォトグラファーにとって、四駆モデルがないのが残念なところだろう。5シリーズ グランツーリスモは、トランクリッドだけ開閉することも可能だが、3シリーズ グランツーリスモでは、ハッチゲート全体を跳ね上げてのアクセスとなる。
運転手付きで使ってもいい?
335iグランツーリスモ スポーツの運転席に座って走り始めると、その運転感覚は「視点のやや高い3シリーズ」というよりも、自分の記憶のなかでは、5シリーズに近いものがある。1800mmを超える横幅は、周囲が開けた箱根の道でも「3シリーズ、大きくなったなぁ」と感じる。街なかの狭い道では、相当気になるのではないか。
一方、さすがに室内は広い。特に後席の足元には、GTを「運転手付きで使ってもいい」と思わせる余裕がある。別の取材で、リアシートに乗って「東京-三浦」間を往復する機会があったが、後席の隣に座ったスタッフと、その快適性をたたえ合ったものである(道中、大半は寝ていた)。
日本市場の3シリーズGTは、2リッター直4ターボの出力違い(184psと245ps)と3リッター直6ターボ(306ps)で構成される。335iは、いうまでもなく306ps/5800rpmの最高出力と40.8kgm/1200-5000rpmの最大トルクを発生する後者を搭載。トルコン式の8段ATと組み合わされる。
伝統のストレート6を積む335iだが、シルキースムーズな回転フィールは、あまり話題にならないだろう。過給機付きの特性を生かして、2500rpmも回していれば、十二分なアウトプットが得られるから。1速で60km/h、2速で90km/h付近までしかカバーしない、低めなギア設定で加速力を確保しつつ、8速のトップでは、わずか1600rpmで100km/h巡航を維持できる。多段トランスミッションに感謝。カタログ燃費は、12.5km/リッターと記載される。
1740kgと相対的に重めのボディーと柔らかめの足まわりのマッチングはよく、ハイウェイでは快適至極。ロールは大きめだが、傾き方が漸進的なので、不安感はない。19インチの薄いタイヤをよく履きこなしている印象だ。
例えば、ワゴンからSUVに乗り換えて、次のBMWを探しているような人たちに、グランツーリスモはいい選択肢になると思う。実用的でありながら一癖ある感じが、ウレシイ。ただ、繰り返しになるが、3シリーズ グランツーリスモは、意外にデカい。路上に占める面積は、現行の「X3」より大きいことをお忘れなく。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
BMW 335iグランツーリスモ スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4825×1830×1510mm
ホイールベース:2920mm
車重:1740kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:306ps(225kW)/5800rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1200-5000rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92W/(後)255/40R19 96W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5 SSR)
燃費:12.5km/リッター(JC08モード)
価格:750万円/テスト車=861万7000円
オプション装備:イノベーションパッケージ(31万円)/ダブルスポークスタイリング466 アロイホイール(13万円)/8段スポーツオートマチックトランスミッション(2万2000円)/電動パノラマ・ガラス・サンルーフ(21万5000円)/パーキングアシスト(4万9000円)/ブラッシュドアルミトリム/マットコーラルレッドハイライト(2万7000円)/ダコタレザーシート+シートヒーティング(運転席&助手席)(28万4000円)/メタリック・ペイント(8万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:4914km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:316.5km
使用燃料:37.4リッター
参考燃費:8.5km/リッター(満タン法)/8.7km/リッター(車載燃費計計測値)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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