アルファ・ロメオ ジュリエッタ スプリント(FF/6AT)【ブリーフテスト】
アルファ・ロメオ ジュリエッタ スプリント(FF/6AT) 2012.03.08 試乗記 ……318万円総合評価……★★★
「ジュリエッタ」のベースグレードである「スプリント」。これは単なる廉価なモデルか。それともアルファらしさをピュアに表現したモデルか。東京から箱根を目指した。
パンとしてもスイーツとしても
大人4人が無理なく乗車でき、その分の荷物もしっかり積め、街中のちょい乗りから、1日かけて目的地を目指すようなロングツーリングまでをこなし、当然ながら燃費も良くなくてはならない――あらためて言うまでもなく、Cセグメントというのは厳しいカテゴリーである。この小さなボディーで、クルマというものに求められているものを、ひととおり盛り込まなくてはならないからだ。
しかも困ったことに、Cセグメントは最近かなりぜいたくにもなってきている。このセグメントの定番「フォルクスワーゲン・ゴルフ」がTSIエンジンで燃費を飛躍的に伸ばし、内外装のクオリティーをあれだけ向上させた今となっては、ちょっとやそっと造り込んだくらいでは「いいクルマじゃないか」と言ってもらいにくくなってしまった。
そんなツラい世界で、「ジュリエッタ」はうまくやっていけるのだろうか。答えはおそらくイエスである。居住性、装備、品質など、Cセグメントカーに求められる基本要件は、けっこう高いレベルでクリアしている。環境性能にたけたマルチエアエンジンも備えている。
さらに、ジュリエッタにはドイツ勢にはないエキゾチックなスタイリングがある。ステアリングを握る者の心を熱くさせるブランドストーリーもある。毎日欠かせない「パン」としても食べられて、趣味の「スイーツ」としても楽しめるCセグメントカー。そんなクルマ、ありそうで他にはなかなかない。アルファ・ロメオというのはアップルのように、つくづく“しぶとい”ブランドだと感じた次第である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アルファ・ロメオのコンパクトハッチバック「147」の後を継ぐかたちで、2010年3月のジュネーブショーでデビュー。日本市場への導入は遅れ、約2年後の2012年2月に発売された。社内のデザインセンターが手がけたというスタイリングは、「8Cコンペティツィオーネ」からイメージを引き継ぐ伝統の盾型グリルを強調したフロントデザインと、クーペを連想させるサイドウィンドウのグラフィックが特徴。
プラットフォームは「コンパクト」と呼ばれる新設計のもので、前にマクファーソンストラット式、後ろにマルチリンク式のサスペンションが付く。こちらもプラットフォームと同様に新設計とのことで、アルミパーツの採用により、軽量化が進められている。エンジンは、1.4リッター直4ターボの通称「マルチエア」ユニットと、1.7リッター直4ターボの2種類。後者は、アルファの過去の車名にちなんで「1750」と通称されることがある。
(グレード概要)
グレードは「スプリント」「コンペティツィオーネ」「クアドリフォリオ ヴェルデ(QV)」の3種類。前二者が1.4リッター直4ターボのマルチエアユニット(170ps、23.5kgm)を、最上級のQVが1.7リッター直4ターボ(235ps、30.6kgm)をそれぞれ搭載する。トランスミッションは、1.4マルチエアが乾式デュアルクラッチを介した「Alfa TCT」6段AT、QVは6段MTのみ。ハンドル位置は3グレードとも右となる(限定車を除く)。
なお、2種のエンジンには走行モード切り替えの「アルファ・ロメオD.N.A.」システムが付き、スポーティーな「D(ダイナミック)」モードを選ぶとトルクが上乗せされる。カタログに最大トルク値が2種類表記されているのはそのためだ(1.4マルチエア:23.5kgm→25.5kgm、1.7ターボ:30.6kgm→34.7kgm)。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
「8Cコンペティツィオーネ」の縮小版的なイメージがあった「ミト」とは異なり、ジュリエッタのインパネにはすっきりとした水平基調のデザインが採用されている。価格相応の質感が手際よく演出されている。また、スイッチ類は配置がシンプルで操作性も良好である。
インパネの表面に装着されるパネルの色は、「スプリント」グレードでは、ボディーカラーがアルファレッドなら赤、アイスホワイトなら白、エトナブラックならグレー(テスト車はこれ)となる。オーナーの好みに応じて自由に変更できるプログラムにはなっていない。赤いインパネは、カーラジオのクラシカルなデザインと相まって、オリジナル・ジュリエッタを始めとする、古き良きイタリア車のインテリアをほうふつとさせる。他のCセグメント車にはない、楽しい演出だ。なお、純正カーナビ装着時には、“アルファ純正”の専用パネルを使用する。
(前席)……★★★★
スプリントには100%ファブリックのシートが装着される。掛け心地はソフトに過ぎず、思いのほか締まっており良好。ステアリングのチルトおよびテレスコピック機構、そしてシートに備わった高さ調整機構を駆使すれば、適切なドライビングポジションが見つかるだろう。両腕をピンと伸ばした「イタリアンスタイル」の運転姿勢は完全に過去のものになった。ちなみに、スプリントよりスポーツ色が強められた「コンペティツィオーネ」グレードには、レザーとファブリックのコンビネーションシートが標準装着されており、体とのフィット感がとてもよい。
(後席)……★★★
ヒップポイントが前席より高く、開放感はある。しかし、前後方向の余裕が少ない。フォルクスワーゲン・ゴルフ(ホイールベースは2575mmとジュリエッタより60mm短い)と比べて、膝まわりが広くない。また、高いヒップポイントが災いしているのか、頭上の余裕もあまりない。身長180cmあまりの筆者の場合、髪がルーフライニングに触れる。それともうひとつ、リアドアの開口面積がそこそこで、開き具合もドイツ車ほど大きくないので、乗降性のよさもそれなりだ。
(荷室)……★★★
傾斜の強いリアゲートのせいで、荷台の容量はそれなりにケラレてしまっているのだろうが、ざっと見た感じ、使い勝手は悪くなさそう。荷台のフロア長は後席使用時が77cmで、後席をたたむと145cm以上まで広がった(筆者実測値)。カタログに記された容量は350〜1045リッターとこのクラスの平均的なもの。参考までに、ゴルフは350〜1305リッターである。後席は6:4の可倒式となっており、背もたれだけを倒し、クッションは動かないタイプである。荷台のフロアは完全にフラットにはならない。センターアームレスト部にはトランクスルーが備わり、スキー板など長さがある荷物の積載が可能。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ジュリエッタ・スプリントの車重は1400kg。最近のCセグメント車の実勢からすると若干重めだが、170psを発生する1.4リッターのマルチエアユニットは十分な力を備えている。もっとも、同じエンジンを搭載する「ミトQV」ほどハツラツと走る印象はない。余裕あるパワーを楽しむというより、むしろ巡航時の静かさが心地よい、実直な実用ユニットという印象を持った。
ひとつ気になったのは、ターボを備えた最近のダウンサイズ・ガソリンエンジンにしては珍しく、比較的はっきりとしたターボラグを持つことだ。特にD.N.A.システムを「N(ノーマル)」モードにしておくとそれが目立った。2000rpm以下のトルクが細く、2500rpmあたりでターボトルクがグイッと盛り上がってくるのがわかるのだ。
そんな特性を持つため、低回転域を多用する街中ではどうしてもモサッとした印象がぬぐえない。アルファ・ロメオらしくスパイスがピリッと効いた走りをするには、D.N.A.スイッチを「D」モードにしておくほうがいい。スロットルペダルのツキが見違えるようによくなるばかりか、おそらく無駄に高回転まで回さくなるぶん、燃費にもいい結果を与えるはずである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
サスペンションがよく動き、ロールを拒むことなくしっとりと姿勢を深めて、コーナーでジワーッと粘る。だからといって挙動が重々しいわけでもなく、フットワークは軽快というアルファ・ロメオの乗用車の、昔からの乗り味は、3種類の中で「スプリント」グレードに最も色濃く表れているように思う。絶対的な旋回速度は高くない。しかし、タイヤの接地感を探りながら、クルマと対話しながら曲がっていく運転が嫌いでないのなら、スプリントのハンドリングは「アルファのデフォルト」としてぜひ体験していただきたいものだ。そういう意味ではオススメである。
ただし大入力に対しては少々だらしないところがあり、高速道路ではごくたまにウワンウワンとあおられ気味になることがある。ピタッとフラットな姿勢を終始保つセッティングがお好みなら、コンペティツィオーネを選んだほうがいい。それでいてコンペティツィオーネは目地段差のハーシュネスもきつくないし、足まわりが若干締め上げられたセッティングになっているぶん、ワインディングロードを駆け抜けるペースも速い。
それと、スプリントで気になったのがブレーキである。イニシャルバイトが思いのほか強く、制動力が急激にグッと立ち上がるのだ。これは走りにこだわるアルファとしては、ちょっと残念な点である。特に街中で、同乗者がいるときのブレーキングには気を使わされた。一方で、より大径のブレーキディスクが付き、キャリパーがブレンボの4ピストン式(スプリントはごく普通のフローティング式)になるコンペティツィオーネでは、そのような気難しさはなかった。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:竹下元太郎
テスト日:2011年12月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2011年型
テスト車の走行距離:1304km
タイヤ:205/55R16(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト2E)
オプション装備:なし
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:198.6km
使用燃料:19.9リッター
参考燃費:10.0km/リッター ※満タン法による計測値

竹下 元太郎
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