ボルボV40 開発者インタビュー
スウェーデンのオリジンを打ち出した 2014.01.06 「ボルボV40」を知る。見る。語る。 “プレミアム・スポーツコンパクト”とうたわれる、ボルボの新型「V40」は、どのような思想で開発されたのか? シリーズ全体の主査を務める、ホーカン・エイブラハムソン氏に尋ねた。「人を思いやるスウェーデンの風土」を元に
ホーカン・エイブラハムソンさんは、「ボルボV40/V40クロスカントリー」を含むボルボのCセグメント全般の開発のまとめ役を務めている。Cセグメントとは、わかりやすく言えば「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「アルファ・ロメオ ジュリエッタ」などが属するセグメント。ホーカンさんは、各国の主力商品がしのぎを削る激戦区で戦う男だ。
と、初対面にもかかわらずファーストネームでお呼びしてしまったけれど、そうしたくなるほど温かい人柄の方である。ふんわりやさしくて、知的で、ボルボというブランドに洋服を着せたらこうなるだろうと思わせる方だった。
本題のボルボV40クロスカントリーにふれる前に、1978年から35年にわたってボルボで働くホーカンさんに、ボルボについて前々から疑問に思っていたことを尋ねてみた。
――1990年代の前半まで、日本のクルマの教科書には「ボルボは手袋をはめたまま操作できるように、ドアノブやスイッチ類を大ぶりに作ってある」とありました。でも、いまのボルボはどのパーツもスタイリッシュで繊細なデザインになっています。もう、手袋をしたままでは操作できない。ボルボは変わったのでしょうか?
答えはYesであり、Noでもあります。人間を中心に考えることや安全性を重んじることは変わっていません。人を思いやるスウェーデンの風土が背景にあるので、変わりようがないともいえます。
一方で、スタイリングやドライビングダイナミクスは変わりました。ひとことで言えば、エキサイティングでアグレッシブな方向に変わっています。
――ホーカンさんは、ボルボが変わり始めたのはいつだと思われますか?
こう尋ねると、ホーカンさんは沈思黙考。ご自身の35年のキャリアを丁寧に振り返っているようにお見受けした。真摯(しんし)な方なのだ。
モデル名で言えば「850シリーズ」からでしょうか。年代で言えば、1990年代に入る頃だと記憶しています。
――変わったのはなぜでしょうか?
愚問だとはわかっていたけれど、聞かずにはいられない。
それは、グローバルな競争に勝つためです。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ボルボで最もアグレッシブなモデル
ここから、本題であるボルボV40シリーズの話題に入る。
――グローバルな競争に勝つため、というお話がありましたが、ボルボV40/V40クロスカントリーは、熾烈(しれつ)な戦いが繰り広げられるCセグメントに送り込むモデルです。競争に勝つために、どんなことに取り組んだのでしょうか。
実はV40/V40クロスカントリーを開発中に、「S60/V60」がデビューしました。驚いたのは、S60/V60のダイナミックパフォーマンスが格段に向上していたことです。
私は、V40シリーズはボルボのラインナップで最もアグレッシブなモデルでなければいけないと考えていました。だからS60/V60を見て、V40シリーズの性格がよりアグレッシブな方向になるように設計を変更したのです。具体的にはフロントとリアのサスペンション、そしてステアリングコラムなどをやり直しました。
評価の高いボルボV40シリーズの運動性能が生まれた背景には、こんなプロセスがあったのだ。
――とはいえ、メルセデス・ベンツのAクラスも高い運動性能を打ち出していますし、おそらく新しいフォルクスワーゲン・ゴルフも仕上がりはいいはずです。そんな中にあって、ボルボV40シリーズの強みは何でしょう?
ドイツ車のコピー製品を作っても仕方がありません。もちろん運動性能や品質といった面で、ドイツ製品のスタンダードに達している必要はあります。けれども、そこから先はスウェーデンのオリジンを打ち出すことが大切だと考えています。
――オリジンとは、具体的にはどういうことでしょうか。
大昔から取り組んできた安全技術、それから北欧デザインですね。
安全装備に関しては、上級モデルに備わるものはすべてV40シリーズにも搭載しています。
デザインについて述べれば、V40シリーズのエクステリアはボルボとしてはかなり強い表情にしています。Cセグメントでアグレッシブに戦うためです。一方インテリアは、クリーンでピュア。少しアンダーステートメントでありながらぬくもりのある、北欧デザインのよさを味わっていただけるはずです。
乗る人に応じた車種がある
ホーカンさんが、うれしそうに笑う。デビュー2カ月で約4000台と、日本におけるボルボV40シリーズの売り上げが好調であるという話題になったのだ。
同時期のメルセデス・ベンツAクラスは約5000台だから、販売ネットワークの規模を考えればV40は大健闘だといえる。
世界的に見ても、V40の日本での売れ行きは際だつ。2013年1月~3月の日本における販売台数は3387台で、同時期のイギリスが3095台、スウェーデンが1562台なのだ。まず日本で人気に火が付いた、クイーンやチープトリックみたいなモデルだ。
――新しいV40が日本で売れている理由を、どのように分析なさいますか?
この質問に対して、ホーカンさんは3つの答えをあげた。
まず、燃費が日本のみなさんを納得させる水準に達したことでしょう。
JC08モードを見ると、1.6リッターの4気筒ターボが16.2km/リッター、2リッターの5気筒ターボが12.4km/リッターと、パフォーマンスから見てまずまずの数値となっている。
2番目に、エクステリアデザインが日本のみなさんを「おっ!」と思わせたのだろうと思います。
異論なし。世界的に見ても、V40シリーズは最もカッコいいCセグ車だ。
3番目は、ディテールの技術、例えば3種類のテーマごとに色を変える液晶パネルなどが受け入れられたのだと思います。
異論あり(と、声には出しませんでしたが)。そこはあんまり刺さっていないように思う。それよりも、リーズナブルな価格設定を理由にあげたい。ただ安いと言いたいわけではなく、バリューフォーマネーなのだ。
――価格と中身の関係が、フェアだという印象を受けます。いいモノには相応の対価を支払おうという、ある種の目の肥えた層に受けたと感じていますが、いかがでしょう?
V40シリーズは、すべて「ダイナミック」というサスペンションのセッティングになっています。だから「T4」や「T4 SE」でも、次のコーナーに向かっていくような走り方を楽しむことができます。213psの「T5 R-DEIGN」はもっとパワーが欲しい人に向けたモデル。そして週末に馬に乗りに行くようなライフスタイルの方にはV40クロスカントリーを用意しています。
ベースは共通でありながら、乗る人がどういう使い方をするかに応じてバリエーションがあり、しっかりすみ分けができています。これも、好調の理由かもしれません。
確かに、自分が何を欲しいのか、しっかり認識している方がV40シリーズを購入したと考えると腑(ふ)に落ちる。ホーカンさんと話をしながら、賢い人が作った賢いクルマを、賢い消費者が選択している構図が頭に浮かんだのだった。
(インタビューとまとめ=サトータケシ/写真=荒川正幸)
※当記事は2013年5月に公開した「開発者インタビュー」を再編集したものです

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
-
第4回:実走・実感「V40クロスカントリー」 2014.1.6 日本市場でも人気の、新型「ボルボV40」。中でも異彩を放つ「V40クロスカントリー」には、このモデルならではの見どころがあるという。一般道から雪道まで試したモータージャーナリスト 生方 聡のリポート。
-
第2回:北の大地をボルボで駆ける 2013.12.27 スタイル自慢の「ボルボV40」シリーズの中でも、とりわけ印象的な「V40クロスカントリー」。では、走りの質はどうなのか? 雪景色の北海道で試した。
-
第1回:私が「V40」を推す理由 2013.12.24 2013年2月の国内販売開始から、その好調が伝えられる、ボルボの新型「V40」。では、人気の秘密はどこにあるのだろうか? 評論の場において同車を高く評価する、モータージャーナリストの桂 伸一さんに話を聞いた。
-
NEW
その魅力はパリサロンを超えた? 大矢アキオの「レトロモビル2026」
2026.3.7画像・写真フランスで催されるヒストリックカーの祭典「レトロモビル」を大矢アキオが写真でリポート! 欧州の自動車史を飾る歴代の名車や、めったに見られない往年のコンセプトモデル、併催されたスーパーカーショーのきらびやかなラグジュアリーカーを一挙紹介する。 -
NEW
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】
2026.3.7試乗記ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。 -
実力検証! SUV向けプレミアムタイヤ「ブリヂストンALENZA LX200」を試す
2026.3.62026 Spring webCGタイヤセレクション<AD>目指したのは、人気車種となっているSUVとのベストマッチ。ブリヂストンが開発した新プレミアムタイヤ「ALENZA(アレンザ)LX200」は、どんな乗り味をもたらすのか? モータージャーナリスト石井昌道が試乗を通して確かめた。 -
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。